ロッテから戦力外通告を受けた旭川市出身の田中楓基投手(22)が、北海道内の社会人野球チームで現役を続行することを決めた。21年育成ドラフト1位でロッテに入団。

今では世界最高峰の舞台で戦う先輩らとともに歩んだ4年間のプロ経験を糧に、再びマウンドに上がる。

 地元北海道で再起を図る。戦力外通告後、軟式を含めた複数の社会人チームからオファーを受けた田中。NPB他球団でのプレーを模索する選択肢もあったが、「親が北海道にいるので、野球をやっている姿を近くで見せたい。周りに友達、知人がいる環境に身を置きたかった」。生まれ育った北海道で、硬式球を握ることを決めた。

 旭川実高時代に最速150キロを計測。支配下契約を目指してロッテのユニホームに袖を通した。柳沼強スカウトがともに担当だった縁で、2年目のオフには、現在ドジャースでワールドシリーズを戦っている佐々木朗希投手(23)と自主トレをする機会にも恵まれた。キャッチボール相手にもなり、「言葉では表現できない。ブワーっとくる感じ。すごいなと感じた」と、レベルの差を痛感。

同じ「柳沼会」に“所属”し、グラウンド外でも親交のある先輩から球質を評価してもらうこともあったが、3ケタの背番号から抜け出すことはできなかった。

 24年に最初の戦力外通告を受けたが、育成で再契約。今年10月に2度目の戦力外通告を受けた。最速は152キロまで伸びるも、7月末の登録期限を過ぎると、クビを覚悟。引退の2文字も脳裏をよぎった。それでも、社会人経験者のチームメートから助言を受け、「会社を代表してやるとか一発勝負でやるところはプロとまた違う。楽しいぞという話をしてもらって、やってみたいと思った」と現役続行を決断した。

 大学4年生世代の22歳。同世代が今年のドラフト会議で指名を受ける中、悔しい気持ちを押し殺し、母校などで自主トレを継続している。「プロに行ったことは後悔していない。色々なことを教えてもらったので、全部大事にしたい。社会人では自分の結果以上にチームが勝てるように頑張る」。

プロ野球選手として歩んだ4年間。アマチュア、プロを経て始まる“第3”の野球人生でその経験を生かしていく。(島山 知房)

 ◆田中 楓基(たなか・ふうき)2003年8月23日、旭川市生まれ。22歳。旭川新富小1年時に旭川新富野球少年団で野球を始める。旭川明星中では軟式野球部でプレーした。旭川実では1年春からベンチ入りし、2年秋には全道大会で準優勝。21年ドラフト会議でロッテから育成1位で指名された。180センチ、84キロ。右投右打。家族は両親と兄、弟。

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