日本初となる「ロボット審判」実用化へ向けた実証実験が14日にGOSANDO南港で行われた。ロボット審判プロジェクト代表の吉田孝氏(57)が製作したロボット審判「ロボアンプくん」の1号機と2号機が、夜間の試合で正確にボールとストライクを判定できるかを評価。

実現へ向けて、今後の開発の参考にした。

 前人未到の挑戦は、まだ道半ばだ。「ロボット審判」実用化へ向けた実証実験は期待に反した結果で終わった。球審のマスク型の1号機が白球を検知したのは全体の2割程度、そのうち球審との判定の一致率は約6割。人型の2号機にいたっては、1球も検知しなかった。吉田氏は「検知されないところが目立った。まだまだ課題が山積みです」と受け止めた。

 検知率が低かった大きな原因は、夜間照明や人間の影に反応してしまうことと、捕手の体に隠れて感知されないことの2点が挙げられた。昼間に行った投球練習では6割は検知されていたことから、ナイターならではの難しい環境が大きく影響した。「今後はカラー画像と生成AIをうまく活用していきたい」と1年後をめどに新たなモデル製作を行う予定だ。課題も多かったが、高校野球で32年審判を務め、この日球審を行った上脇公徳氏(73)は「意外と自分の判定と合っていたのでいいかなと思いましたね」と評価した。

 社会人で入団した草野球チームが人手不足で、未経験ながら審判を任されたという吉田氏の経験から今回のプロジェクトは始まった。

「素人にはストライク、ボールの判定が難しかったので審判にいくのが嫌で…。幼い頃からプログラミングはやっていたので何か役に立てるモノが作れないかなと」。現在はIT企業に勤めながら、“おこづかい”の範囲内で「ロボット審判」づくりに熱中している。「将来的にさらに小型化して、アマ野球界で使ってもらえれば」と目標は高い。一人のエンジニアの発明が、球界の審判不足を救う日が来るかもしれない。(藤田 芽生)

 ◆ロボット審判の海外での活用例 MLBでは数年間マイナーリーグで運用し、今季はオープン戦、オールスターゲームでテストを行った上で、2026年シーズンからメジャーでも球場内に複数のカメラを設置して判定を行う、ABS(ハイテク機器でのストライク・ボール判定=ロボット審判)でのチャレンジ制度の導入が決定している。韓国プロ野球KBOでは昨季からロボット審判を導入しており、ストライク、ボールの判定をロボット審判が行い、球審がイヤホンで結果を聞いてからコールするという仕組みになっている。

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