◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 こんなに悔しい思いをしたのは久しぶりだ。10月5日にフランスのパリロンシャン競馬場で行われた凱旋門賞

現地取材のため初めての海外出張へ。それまで延べ35頭の日本馬が勝てていない欧州最高峰のレースだ。今年は日本ダービー馬のクロワデュノールを筆頭に、アロヒアリイ、ビザンチンドリームが挑んだ。

 今までテレビでしか見ていなかった凱旋門賞。海外遠征のリスクや渡航、滞在費用などを考えると、国内の大レースに出たほうが効率はいい。「そこまでこだわるレースなのだろうか?」と正直、思っていたことも事実だ。

 しかし、現地で懸命に調教に励む馬や厩舎関係者を見ていると、自然と日本馬頑張れ、という心境になった。レース3日前に芝コースを歩かせてもらったが、思っていたよりも硬くて日本馬向きの馬場。これなら、いい勝負になる。そう思っていたが、レース前日に、まとまった量の雨が降った。水はけが悪く、日本馬が経験したことがない、悪い馬場となったのが大きく影響してしまった。

 レース後、日本馬の関係者は一様に暗い表情だった。

アロヒアリイの鈴木剛史オーナーは後日、「凱旋門賞の日の夜は、一睡もできませんでした」と悔しさをにじませた。そんな姿に、どちらかと言えば冷めている性格と思っていた自分の中でこみ上げてくるものがあったことに驚いた。この気持ちを忘れずに、いつの日か分からないが、日本馬が勝つ場面を見に、またパリを訪れたい。(大阪中央競馬担当・山下 優)

 ◆山下 優(やました・ゆう)2023年入社。大阪本社の中央競馬本紙予想担当。冬でも一日1個のアイスは欠かさない。

編集部おすすめ