6月3日に肺炎のため89歳で死去した長嶋茂雄さんの「お別れの会」が21日、東京ドームで開催された。関係者の部、一般の部を合わせて約3万2400人が来場し、別れを惜しんだ。

 力強く背中を押してくれたエールは忘れることはない。巨人OBの高橋由伸氏(50)=スポーツ報知評論家=は、監督就任時の“秘話”を明かした。15年限りで現役引退すると、翌16年に監督に就任。長嶋さんも現役引退の翌年から巨人を指揮という共通点もあった。就任前に電話で報告すると、勇気づけられる言葉が返ってきた。

 「『僕自身もどうしていいか分からないですし、まだまだ若いので』と話したら『おまえは何歳だ?』と。『来年41歳になります』と言ったら『俺はもう1歳若くしてやっているから大丈夫だ』と」

 激励を受けて監督業に就いた由伸氏。選手としても入団から4年間、長嶋さんの下でプレーしたが、監督時の方が会話が増えたという。「監督がドームに来て話すのもいい思い出です。選手の時はあまり怒られたことがなかったですが、(監督時は)負けているという現実によく怒られた思い出がありますね」と柔和な表情で述懐した。

 長嶋さんが亡くなってから約半年。「やっぱり心の中にはいる感じもしています」と語る。

「どう見られている、どう見せる。勝ち負けを超えたところにもプロ野球選手としての使命があると学ばせてもらいました」と教え子として学んだことは多かった。

 「監督の思いを受け継いで野球界に、スポーツ界に貢献していきたいです」と誓う由伸氏にとって長嶋さんとは―。「どんな場でも明るくなる。長嶋さんが現れてもそうですし、いなくて長嶋さんの話になってもみんなが明るい雰囲気になる」。燦々(さんさん)と照らしてくれた存在へ感謝の思いを胸に、献花台に花を手向けた。(田中 哲)

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