巨人に立ちはだかった名選手の連続インタビュー「巨人が恐れた男たち」。第11回は元西武の石毛宏典さん(69)だ。

走攻守、さらに天性のリーダーシップを兼ね備えた名手は、1980~90年代に黄金期にあった西武をけん引。日本シリーズでも巨人と4度の激闘を繰り広げた。巨人に対し4連勝と圧倒して球界に衝撃を与えた90年のシリーズから、師匠と慕う広岡達朗元監督との出会いまで、「喜怒哀楽」の記憶をたどった。(取材・構成=太田 倫)

 【取材後記】

 集団の中で、本能的に「この人がボスだな」と周囲が認めざるを得ない人がいる。石毛さんは名人ぞろいの西武を、勝利という同じ方向に向かせる特別なプレーヤーだった。

 本文にもあるが、チームリーダーというポジションには、むしろ困惑していた。あるとき、恩師の一人である根本陸夫さんに相談した。「評価は人がするもの。評価には枠があって、窮屈なものだ。それが大人の世界なんだ」。その言葉は時間をかけて腑(ふ)に落ちていった。石毛さんという要を欠いては、西武に黄金期が来ることはなかったろう。

 「喜怒哀楽を感じている余裕もなかった」との言葉。常勝軍団の先導役という「枠」の中で必死に仕事を全うしたからこそ口にできる、本音と思われる。(野球デスク・太田 倫)

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