◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 クライマックスシリーズ(CS)の舞台で悔し涙を流せることも、巨人・田中瑛斗投手(26)の野球人生が変わった証しのように思えた。現役ドラフト3期生として、移籍1年目に中継ぎでブレイク。

150キロ超のシュートは代名詞となったが、飛躍の一年は悪夢で幕を閉じた。DeNAとのCS第1ステージ第2戦。延長11回、回またぎで続投した右腕は勝利まであと1死から逆転サヨナラを許した。チームも終戦。移籍後最多の39球目で力尽きた。

 日本ハム時代は右肘手術、育成契約などを味わい、1軍では実働4年で10登板。プロは結果の世界。その壁に直面してきた。「移籍が転機になった。1軍で投げられるのなら先発、中継ぎどこでもいい」。チームの戦力になりたい一心で自己最多62登板と殻を破った。

 10月下旬。

激動のプロ8年目を「去年までと180度違うシーズンの終わり方」と表現したのが印象的だった。1年前は、来年の契約があるかないかにビクビクしながら野球をする日々だったという。「この時期はまず、クビにならないかが第一関門で。3年目ぐらいからずーっとそれに追われながら過ごしてきて。自分のやりたい練習がこんなにできるオフは初めてです」。それを明るく話す姿にもまた、生きざまがにじんだ。

 涙で終わった25年シーズン。「『ただ悔しい』で終わるには本当もったいないぐらい、CSでは良い経験をさせてもらいました。来季終わる時、あの経験が生きたよなって言えるシーズンにします」。750万円だった年俸は1年で4650万円となり、結婚も公表。“現ドラドリーム”をつかんだ男がどこまで行くのか、見てみたい。(巨人担当・堀内 啓太)

 ◆堀内 啓太(ほりうち・けいた) 21年入社。

24年まで日本ハムを担当。

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