ヤクルトからポスティングシステムを利用してメジャー移籍を目指していた村上宗隆内野手(25)がホワイトソックスと合意したと22日、MLB公式サイトなどが伝えた。米スポーツ専門局「ESPN」のJ・パッサン記者によると、2年3400万ドル(約54億円)で「一塁でプレーすることになりそう」だという。

11月8日にポスティング申請を行い、交渉期限が米東部時間22日の午後5時(日本時間23日の午前7時)に迫る中での“電撃移籍”となった。

 九州学院高(熊本)から17年ドラフト1位でヤクルトに入団した村上は、1年目に高卒新人7人目となるプロ初打席アーチを放つと、19年には高卒2年目以内ではセ・リーグ初となる30本塁打を達成し、36本塁打で新人王に輝いた。22年には日本人選手としては史上最多の56本塁打を放ち、打率3割1分8厘、134打点と合わせて史上最年少の3冠王となった。

 同年オフには日本記者クラブで記者会見し、将来的なメジャー挑戦の意向を初めて明かした。その後行われた契約更改では3年総額18億円の大型契約を結ぶとともに、25年シーズン終了後のメジャー挑戦を容認された。「球団には感謝しかない。ヤクルトに恩返しができるように」と来たる時に備えて鍛錬を積んできた。

 23年WBCには侍ジャパンの主砲として日本の世界一奪還に貢献。米国で行われた準決勝のメキシコ戦では9回に逆転サヨナラ2点二塁打を放ち、全世界にその名を知らしめた。今季は上半身のコンディション不良で56試合の出場に終わったが、復帰した7月下旬以降だけで22本塁打と実力を見せつけた。NPB8年間で通算246発。本塁打王3回、MVP2回と日本では敵なしの状態で海を渡る。

 現地メディアから「日本のベーブ・ルース」「NPBの打者では松井秀喜以来の大物」などと紹介されてきた村上はMLB公式サイトなどで発表されてきた今オフのFAランキングで巨人・岡本と常に注目選手として位置付けられ、11月のGM会議では早くもマリナーズのホランダーGMが代理人に接触したことを認めるなど争奪戦となっていた。今月8日(同9日)から行われた球団幹部、代理人らが集結して移籍交渉などを行うウィンターミーティングでも、8月に来日した際に村上のサヨナラ本塁打を目撃したメッツ・スターンズ編成本部長が「素晴らしい選手。パワーも抜群で、メジャーでどんなキャリアを築くか楽しみ」とコメントするなど話題に挙がることが多かった。

 ホワイトソックスは21年に地区優勝を果たしたが、その後はチームの再建期に突入。昨季は借金80、今季も借金42で2年連続最下位に沈むなど直近3年間で借金162という“弱小球団”だ。当初、村上は25歳という若さもあって日本人野手の1年目としては最高額となる1億ドル(約157億円)規模の大型契約も見込まれていた。それでも、まずは2年間の契約の中で結果を残すことができれば、その後の大型契約を狙うことができるだろう。

 本職である三塁の守備力や三振率の高さを“弱点”として指摘されている村上だが、まだまだ成長の余地を残す。「これからいろんな困難が多分あると思いますけど、僕自身、その目の前の壁に全力でぶつかって、当たって砕けろの気持ちで頑張っていきたいと思います」と話していた村上。令和の3冠王の新たな挑戦が始まる。

 ◆村上 宗隆(むらかみ・むねたか)2000年2月2日、熊本県生まれ。25歳。

九州学院高(熊本)では1年夏に甲子園出場。17年ドラフト1位でヤクルト入団。通算892試合で打率2割7分、246本塁打、647打点。22年に史上最年少で3冠王に輝き、MVP2度、ベストナイン4度などタイトル多数。21年東京五輪、23年WBC日本代表。188センチ、97キロ。右投左打。今季年俸6億円(金額は推定)。

編集部おすすめ