◆第70回有馬記念・G1(12月28日、中山競馬場・芝2500メートル)

 ダノンデサイルについて語る戸崎の言葉は、驚くほどの興奮と熱がこもっていた。「ドバイ(シーマクラシック)の手応えは、いまだに覚えています。

かなり能力を持っている馬です。(今までの騎乗馬で)一番かもしれない」。ドバイでは後にジャパンCを制したフランス調教馬のカランダガンの猛追を封じてV。常に冷静な名手が、馬上インタビューで答えた「ベリベリホース」がSNSなどで大きな話題になった。

 同時にもろさも併せ持っている。戸崎は「尾を振って走ったり、精神的な危うさもあります。そういうところが成長してくれれば」。前走のジャパンC(3着)では、ゴール後に放馬した馬を避けて他馬と接触し落馬。アクシデントはあったが、「安田先生とやりとりをして、本当に異常なしということで。順調に攻め馬も消化できているし安心しました。使ったことでガス抜きができて、精神的にいい方向にいっているみたいです」。力を発揮できる態勢は整っている。

 昨年はレガレイラで制した年末の大一番だが、今年は24年ダービー馬を選択した。「ドバイの走りが忘れられないので」と理由を説明するが、もちろん相当の苦悩はあった。「『レガレイラじゃないの?』という声はありました。朝起きたら体が2つになってないかなって。このレベルの馬がかぶることはないですから」と胸の内を明かした。

 戸崎は21日にJRA通算1700勝を達成し、グランプリへ向けて弾みをつけた。「国民的行事の有馬記念ですし、今年はドラマ(『ザ・ロイヤルファミリー』)もあって注目も大きいと思いますから。それに恥じないレースをしたいですね」と語る“ベリベリジョッキー”の瞳には、静かな闘志の炎が燃えさかっていた。(角田 晨)

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