◆第70回有馬記念・G1(12月28日、中山競馬場・芝2500メートル)

 今年の有馬記念の特集企画「有馬のザ・ロイヤルファミリー」第4回は、エルトンバローズを生産した北海道日高地方の浦河町にある桑田牧場代表の桑田美智代さん。今は亡き父が1962年に開場した牧場を継承。

暮れのグランプリに35年ぶりに生産馬を送り出す。

 人々の思いがつながり、夢の大舞台へ導かれた。エルトンバローズを生産した北海道浦河町の桑田牧場にとって、有馬記念は90年のカチウマホーク(11着)以来35年ぶり。今も語り継がれるオグリキャップの伝説のラストラン以来となる。代表の桑田美智代さんは「父(桑田忠さん)の時代から何十年もたちましたが、人気や力がないと出られませんので、すごいことだと思います。猪熊オーナーのお力を感じます」と、その重みをかみ締める。

 母ショウナンカラットを19年に繁殖馬セールに上場し、馬主の猪熊広次氏が落札したが、そのまま桑田牧場に預託される形となった。その時に宿していたディープブリランテの種が、エルトンバローズだった。「馬格のある馬が出てほしいと考えてつけたのですが、カラットの子はみんなおとなしくいい子ばかりで、この子もすごく素直でした」。3代母アンティックヴァリューは93年の牝馬2冠馬ベガの母にあたり、もともと母系への期待も大きかった。

 建設関係の仕事をしていた父が一念発起して、1頭の繁殖牝馬から始めて1962年に開場した。3姉妹の長女で外資系の企業に勤めていた美智代さんが、故郷の牧場へ戻ったのは今から36年前。

「小さい頃から馬を見て育ちましたし、それこそ“継承”じゃないですけど、やっぱり父の思いを継ぎたいと思って帰って来ました」と当時を思い起こす。

 01年に牧場の代表に就任した2年後、父は天国に旅立ったが、その遺志を受け継いできた。日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」を見て共感を覚えることもあり、「現実味があって、もしかしたらという思いを膨らませてくれるドラマでした。勝手にどこかで私の話を聞かれちゃったのかな? と思うようなシーンも多くて」と心に響いたそうだ。暮れの大一番は馬と人が紡ぐ物語の大切な一ページになる。

(坂本 達洋)

 ◆桑田牧場 1962年に北海道浦河町で開場。90年の鳴尾記念でカチウマホークが生産馬として重賞初制覇。23年のラジオNIKKEI賞、毎日王冠を制したエルトンバローズや、24、25年のJBCレディスクラシックを連覇したアンモシエラなどが活躍。現在は約30頭の繁殖牝馬をけい養しており、代表をはじめ13人のスタッフで運営している。

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