巨人のファームの今を伝える「From G」。今回は特別編として巨人女子チームの宮本和知監督(61)=スポーツ報知評論家=と、女子プロサッカーWEリーグ・日テレ東京Vの元なでしこジャパンDF岩清水梓(39)とスペシャル対談をお届けします。

将来的なプロ化を目指すチームを指揮する宮本監督が、11年ドイツW杯優勝メンバーで、21年9月に発足した女子プロリーグでプレーしている岩清水と、プロの意義や互いの競技について語り尽くした。(取材・構成=後藤 亮太)

 宮本(以下、宮)「今はシーズン中ですか?」

 岩清水(以下、岩)「前半戦を終えて中断期間中です。2月から後半戦です」

 宮「女子野球は2月から全体で練習して、3月の終わりに公式戦が開幕。女子サッカーはWEリーグが始まってどうなの?」

 岩「今までは仕事をして夜に練習だったんですけど、プロになったので午前中に練習です。練習後に大学に通っている子もいます」

 宮「女子野球は、24人中、8人がジャイアンツアカデミーのコーチ。その子たちは午前中に練習して、大学生は午後6時から9時までジャイアンツ球場の室内で練習。プロ化を目指していることを声を大にしてやっていこうとしている」

夢のステージ作る 岩「そこはやっぱりジャイアンツが一番になってやるべきことなんですか?」

 宮「やりたいです。女子プロ野球は21年まであったけど、消滅してしまった【注1】。プロがあった時代にそこを目指していた子どもたちが『どうするの?』となった。だからジャイアンツという歴史のある球団が作るべきだと思ったし、夢のステージを作ってあげたい。女子野球選手って、サッカーも同じかもしれないけど大体お兄ちゃんの影響で始めているんですよ」

 岩「9割方です(笑)」

 宮「お兄ちゃんたちがきっかけを作ったのに妹たちはどこを目指せばいいの?と。夢のステージを作ってあげたい」

 岩「目標のステージが出来たのはすごく大きなこと。

11年にW杯で優勝して、すぐにできるといううわさもあったけど、なかなか難しくて…世界と肩を並べられたし、目標にできる職業になったのは大きなこと」

 宮「目指せWEリーグだな。目指せベレーザ! 女子野球はW杯7連覇中なんですよ。すごいこと。広めていって、プロ化に向けてやっていかないと。女子サッカーの魅力は?」

 岩「つなぐとか、技術の高さ、細かいプレーは女子サッカーの醍醐(だいご)味です。ただ、それと同時に関節も柔らかく、しなやかであるが故に前十字じん帯などのけがも多い」

 宮「僕ね、少し困っていることがあって…選手がけがしていても言わない」

 岩「女性ならではですけど、痛みに強い。言わないというか、多分やれますの範囲が広いんですよ」

 宮「痛みの範囲が広いね…勉強になった。1年目に4人の女子選手を宮崎キャンプに連れていって、空いている場所で練習させてもらったんだけど、室内でマシンを打っている時に一人の選手の手袋から血が垂れていて。本人は『大丈夫です、マメがつぶれただけですから』と。その時、『女子、すげえ』って思った」

 岩「与えられた時間、場所、環境が貴重だ、という思いだったんでしょうね」

 宮「情熱が女子は強いと思う。1年目も午後9時に撤収しないといけないのに、時間を過ぎてもずっとやっていた。今は午後8時50分には『蛍の光』を流すようになった(笑)」

 岩「女子サッカーと似ています。

環境を良くしたい、プロになっていきたいと。それぞれ、Jリーグ、プロ野球と比較対象が隣すぎて、もっと頑張らないと、という向上心が、情熱につながってくるんですね。今年の目標は何ですか?」

 宮「ヴィーナスリーグ、クラブ選手権、全日本選手権大会、全て優勝したいね【注2】」

 岩「WEリーグでは連覇を諦めずに戦いたい。カップ戦も取って、アジア王者になるチャンスもあるので狙っていきたい【注3】。歴史あるチームとして、先陣を切っていきたいです」

 【注1】女子プロ野球は、2010年から始まり、一時は4チーム計70人前後が所属していたが、18年頃から退団選手が相次ぎ、21年7月には所属0人となり事実上消滅した。

 【注2】関東地区12チームが参加する世界最大規模のアマチュア女子硬式野球リーグ戦「ヴィーナスリーグ」、全日本女子硬式クラブ野球選手権大会、全日本女子硬式野球選手権大会が主な大会となっている。

 【注3】SOMPO・WEリーグは現在、首位・INAC神戸と勝ち点6差の3位。今月14日のホーム・マイナビ仙台戦から後半戦再開。昨季リーグ王者として参加しているアジア女子チャンピオンズリーグ(AWCL)では8強に進出している。

 【取材後記】 競技の垣根を越えた初対談は、1時間を超える大きな盛り上がりを見せた。対談の終盤、互いの練習場が車で10分程度の距離に位置していることもあり、次はグラウンド上での“交換練習”というプランが持ち上がった。岩清水が「小さい時に野球をやっていて、落下地点を読めるようになって、ヘディングで競れるようになった」という“逸話”を披露し「後輩にもやってもらいたい。

私もノックとか受けてみたい」と持ちかけると、宮本監督も「それやろうよ! いろいろなことをするのはプラスですよ。コラボは絶対に楽しいと思う。お互いにとってもプラス。俺もPKやりたい」と大歓迎。どんな化学反応が起こるのか。第2弾にも期待したい。

 ◆宮本 和知(みやもと・かずとも)1964年2月13日、山口県生まれ。61歳。下関工から川鉄水島に進み、84年ロサンゼルス五輪で金メダル。同年ドラフト3位で巨人入団。通算66勝62敗4セーブ、防御率3.60。97年引退。

2019年から21年まで巨人投手チーフコーチなど。23年から巨人女子チーム初代監督。左投左打。

 ◆岩清水 梓(いわしみず・あずさ)1986年10月14日、岩手・滝沢市生まれ。39歳。相模原市で育ち、下部組織のメニーナから2003年に16歳でトップチームのベレーザに昇格。日本代表には06年にデビューし、11年ドイツW杯優勝、12年ロンドン五輪銀メダル、15年カナダW杯準優勝に貢献。代表通算122試合11得点。19年10月に一般男性との結婚を発表し、20年3月に第1子(男児)を出産。WEリーグ通算26試合出場。163センチ、57キロ。右利き。

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