脱サラ後に牧場で競馬に携わる仕事を始めてから15年以上。出産、種付け、育成、調教を経験し、それなりの知識はあると思っていたが、いまだに新たな発見に出くわすことがある。

 競走馬は茨城・美浦か滋賀・栗東のトレーニング施設で調整され、全国10か所の競馬場に馬運車で輸送して出走する。競馬をする方であれば「輸送で絞れる」というコメントを目にするだろう。私のイメージは輸送中や到着後にカイバを食べないことで体重が落ちると思っていたが「一番は水分」とある調教師から意外な答えが返ってきた。

 トレセンで過ごす馬が1日に飲む水の量は大体20~30リットルで、夏場になると50リットルほどに増えることもある。競走馬に騎乗していた私の記憶でも夏の運動後は10リットルのバケツを一気に飲み干す馬も珍しくなかった。

 普段は大量の水を摂取するが、輸送中は1リットル以下となめる程度にしか水を口にしない馬もいるという。さらに換気のために涼しく保つ馬運車内の環境で排尿が多くなることも、初めて知った。

 美浦から千葉・中山競馬場東京競馬場に向けて早朝に出発する当日輸送であっても、15時前後から始まる後半10~12Rの出走馬は、緊張などで水を飲まず10キロ以上落ちることがあるという。また、太いと思った時には暑い時期を除いて意図的に水の量を少なくする調整法があり、「簡単に効果が出る」と証言する関係者もいた。その姿はさながら計量前に水抜きをするボクサーのよう。今回、水というファクターが予想に生かせるのではと感じたように、日々の会話の中にもヒントが隠れている。(中央競馬担当・浅子祐貴)

 ◆浅子 祐貴(あさこ・ゆうき) 北海道で競走馬育成に携わり、南関東競馬担当を経て2024年入社。

編集部おすすめ