◆第56回高松宮記念・G1(3月29日、中京競馬場・芝1200メートル)

 7歳牝馬のナムラクレアがラストランを迎える。同レースで3年連続2着などG1タイトルは悲願。

2歳夏から5歳夏まで主戦を務めた浜中俊騎手=栗東・フリー=とのコンビが7戦ぶりに復活。託された思いを背負って、「何とか勝たせたい」と有終Vへ力を込めた。

 誰よりもこの時を待っていた。浜中俊騎手が約1年7か月ぶりにナムラクレア(牝7歳、栗東・長谷川浩大厩舎、父ミッキーアイル)の馬上に戻ってくる。今回は約4年7か月にもわたる競走生活の最終章を託された。「率直にめちゃくちゃうれしかった。その思いに応えたいという気持ちが強いです」。口調には揺るぎない決意が宿っていた。

 絆は厚く、深い。騎乗予定だった和田竜(現調教師)の前日の負傷で、急きょ手綱を執った3戦目の小倉2歳Sを快勝。それから約3年、自らが主戦だったミッキーアイルの子供と苦楽をともにした。コンビで重賞4勝も、G1は7度の挑戦で2着3回、3着2回。

頂点は遠かった。そして、騎乗停止で乗れなかった24年スプリンターズSの後に乗り替わり。「今までも乗り替わりはありましたが、クレアの時は圧倒的にショックが大きかったです。もう乗れないかもなと思っていました」と振り返る。

 しかし、最後の最後に戻ってきた。これまでG1・9勝を含むJRA重賞60勝。数々の大舞台を経験してきたが、本来は「プレッシャーを感じるタイプじゃないんです」と冷静だ。しかし、今回は少し違う。「こういう形で騎乗依頼をもらって、責任はすごく感じています」。重責が大きいことを肌身で感じ、しっかり向き合っている。

 空白の1年半を埋めるように先週まで2週連続でコンタクト。先週は栗東・坂路で51秒7―11秒7と抜群の時計を出した。

「動きは常にいいですからね。良くなったというより、衰えていないという感じ。やっぱり、気持ちが強いんだと思います」。以前と変わらない背中の感触に自然と表情がほころぶ。

 ずっと追いかけ続けてきたG1タイトルへ挑むラストチャンス。決して一人で立ち向かうわけじゃない。「オーナーや長谷川さん(調教師)、スタッフからクレアにG1を取らせたいという思いがひしひしと伝わってくるんです。自分自身のことより、何とかクレアを勝たせたい。チーム一丸で向かっていきたいです」。様々な感謝の思いを手綱に乗せ、ただ勝利だけを追い求める。(山本 武志)

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