馬トク報知で過去の名勝負を当時の記事から振り返る【競走伝】。今回はテンジンショウグンが勝った1998年の日経賞を取り上げる。

単勝3万5770円の最低人気馬が突き抜けた超有名な大荒れレース。鞍上は穴男で有名な江田照男騎手だった。

 中山競馬場に春の嵐が吹き荒れた。真っ先にゴールに飛び込んだテンジンショウグンにスタンドは騒然。前走まで障害戦に出走していた8歳の高齢馬が何と春の天皇賞を目指すエリートたちをまとめてやっつけてしまった。

 2着も7番人気の伏兵シグナスヒーロー。「単勝3万5570円、馬連21万3370円」。単勝は史上最高額(当時、以下同)、史上4位の配当だった馬連は6633万4793票中、的中は2万2944票、66通り中61番人気だった。

 配当を伝える場内アナウンスに、スタンドは驚きとため息が交錯した。「夢かと思った。倒れてしまいそう」オーナーの清水道一さん(74)はキツネにつままれたよう。「社長、馬券は10万円?」連れの部下の冷やかしに「1000円だよ」と腹を抱えて高笑いだ。

 ローゼンカバリーを追うように後方2番手から徐々に進出。直線は力でねじ伏せた。矢野照調教師は口をあんぐりだ。「ジョッキー(江田照)がどう乗りますかと聞くから、後ろから行って(賞金が出る)8着以上を狙えと言ったんだ。まさか勝つなんて」。メジロマックイーンの降着で転がり込んだプレクラスニーの天皇賞(1991年秋)以来の重賞制覇になった。

 江田照は前週のスプリングSで11番人気のセイクビゼンを2着に導いた。馬連は5万円を超す波乱を呼んだばかり。「4コーナーを回っても手応えは抜群。ローゼンを交わしたときに、やったと思った」と振り返った。

 もともとはオープンで走っていたが、前年春に障害入り。今回、再び平地に挑戦したのにはわけがあった。

「中山のバンケットが下手。それならと思って」とトレーナーはしてやったりだ。障害か平地か。今後の進路に注目が集まったが、「よし、天皇賞だ。だって、天皇賞に向かう馬を負かしたのだからウチのが一番強い」と矢野照調教師。高らかと進軍ラッパを鳴らした。

 宣言通り、次走は98年天皇賞(春)に挑戦するも11着。その後も平地を走ったが、同年のアルゼンチン共和国杯(18着)を最後に現役を引退した。その後は警視庁騎馬隊馬として「新志」という名前で市民生活に貢献した。

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