今年、皐月賞日本ダービーの2冠に輝いたロブチェンの杉山晴紀調教師(44)=栗東=が、スポーツ報知の単独インタビューに応じた。

―ロブチェンで2冠を制し、16年10月の開業から10年目でダービートレーナーになった。

 「皆さんの協力があって勝てたレースなので、この場を借りて感謝申し上げたいです。おめでとうという声をすごくかけていただいたので、特別なレースだなという実感はありますね」

 ―皐月賞のレコードVからの転戦だった。

 「結構激しい競馬をしたし、落鉄ということもあって、レース後は不安というか、同じぐらいの状態でダービーにいけたらいいなぐらいに思っていました。でも、馬がすごいんでしょうね。ダービーに向かっていく過程で、さらに良くなっていました。毎日、自分の目で見て、状態の良さを感じていると、プレッシャーよりも楽しみが大きかった。ロブチェン自身に心配するなと言われているわけではないけど、そんな感覚でした」

 ―レースは中団から。

 「皐月賞があれだけスピードのあるところを見せたので、出たなりでももうちょっとポジションを取れるのかなと思っていましたけど、枠が外すぎて、イメージよりはポジション取り切れなかったなという感じで見ていました。4角を回った時にいつも、結構割と早めに手が動くんですけど、前との距離もまあまああったので届かないのかな、とかいう感じはありました。(勝ったかは)分からなかったです」

 ―20年の牝馬3冠馬デアリングタクトと同じ松山騎手とのコンビだった。

 「(当時より)慌てなくなったというのはすごく感じます。秋華賞はスムーズな競馬ができましたけど、オークスは本人も『馬の力で勝たせてもらった』と振り返っていたほど色々ありましたから【注1】。

当時より馬のリズムを大事にして、周りを見られるんじゃないかな。だから、ダービーの向こう正面で川田騎手(バステール=3着)が動いた時にもあまり惑わされなかったですしね」

 ―勝っている時は逃げ、差し、逃げ、差し…。センスの高さを感じる。

 「ジョッキーが逃げたいと思えば逃げられるし、控えたいと思えば控えられる。特に皐月賞で逃げた時は、ずっと斜め後ろにリアライズシリウスが見える所にいて、大体あの形になると気にしてハミをかみ出すんですけど、走りに集中していた。そして、ジョッキーの合図に耳を傾ける。G1を勝つ馬ですから、能力の絶対値は当然高いですよね。それに加えて、能力を邪魔することのない性格の良さ。両方合わせ持っていると思います」

 ―当歳ミックスセールの出身。父は新種牡馬のワールドプレミアだった。

 「馬主さんが買われた中で、この馬を選ばせてもらいました。ミックスの下見の段階からいいなと記憶していた馬だったので、迷いはなかったです。

芝馬を連想させて、距離もこなせる。そういうスラッとしたイメージでした。変に窮屈なところもなく、バランスもすごく良かったんです」

 ―昨年11月にデビュー。

 「新馬前の(CWコースの)1週前追い切りで思った以上の時計出たので、オッと思いました。しまいも11秒台前半でスッときたので、結構速い脚もあるな、と。どちらかというとスタミナのある芝馬で、そんなにしまいが切れるイメージを持っていなかったんです」

 ―3冠を見据える秋。牝馬では経験がある。

 「難しいですよね。ロブチェンも北海道にいますけど、たまに北海道でも記録的な暑さもありますから。デアリングは直行でしたけど、ロブチェンは神戸新聞杯を一応頭に入れています。それを逆算して、暑い時期から秋を考えると、皐月賞からダービーより、ダービーから菊花賞の方がリスクは高いとは思っています」

 ―菊花賞は個人的な思い出が多い【注2】。

 「特別なレースですね。

自分の人生の中でちょこちょこ出てきます。最初はダンスインザダーク。あのレースがこの世界に来るきっかけ、動機になりました。助手時代には自分が調教していたスリーロールスが勝って、その成功体験もあり、調教師というもの(選択肢)が出てきた。スリーロールスもダンス産駒だったし、そういうのもつながっていますよね」

 ―その特別なレースで今度は偉業がかかる。

 「菊花賞馬の子供という血統背景はありますが、ロブチェンを新馬の時から見ていると、どんどん筋肉がついてきているので、3000メートルでどうなるのかという思いはあります。ただ、この3歳世代で能力値では上にいると思います。とにかく、いい状態でレースに出走させるために日々をどうしていくのか。ただ、それだけを考えてやっていきたいと思います」(取材構成・山本 武志)

 【注1】1、2角で内に閉じ込められ、12番手と想定より後ろの位置になると、外へ出そうとした直線でも進路なし。結果的に真ん中を突き、上がり33秒1の脚を繰り出しての2冠達成。半馬身という着差以上に強さが際立った。

 【注2】まだ中学生だった1996年の菊花賞で武豊騎手がダンスインザダークと突き抜ける姿を見て、騎手になりたいと思ったことが競馬界への入り口だった。

その13年後で武宏平厩舎(当時)の助手だった09年、調教を手がけたスリーロールスが同じく菊花賞を制した。

 ◆杉山 晴紀(すぎやま・はるき)1981年12月24日、神奈川県生まれ。44歳。04年に栗東トレセンに入り、武宏平厩舎、高橋康之厩舎の助手を経て、16年10月に厩舎を開業。20年にデアリングタクトを無敗の牝馬3冠に導く。23、25年と全国リーディングに輝く。5日の小倉8RでJRA現役最速となる通算400勝。JRA重賞はG1・9勝(Jpn1・1勝)を含む30勝。

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