◆テニス ▽全米オープン予選第2日(25日、米国・ニューヨーク)

 【ニューヨーク(米国)25日=吉松忠弘】今季限りでの引退を発表し、全米が現役最後の4大大会となる元世界ランキング4位の錦織圭(36)=ユニクロ=が、予選1回戦を突破した。予選と本戦を合わせ50回目の4大大会出場で、世界125位、第16シードのゼバスティアン・オフナー(30)=オーストリア=に6―1、2―6、6―2で勝ち、最後の4大大会を勝利でスタートだ。

26日(日本時間27日)の次戦では今年の全仏オープンジュニア準優勝で16歳のマイケル・アントニウス(米国)と対戦する。

 打つ度に、錦織の口から「ふん!」という息づかいが漏れた。心身を込めた打球は「ニ・シ・コ・リ!」という観客の合唱の後押しを受け、何度も相手のミスを誘った。3度目のマッチポイント。フォアのボレーが、誰もいない相手コートに落ちた。

 誰もが平均的に力を発揮できるハードコートで行われる全米は、最もタフな4大大会と言われる。予選とはいえ、引退を決めたとはいえ、そこで勝てる底力は勝負師の魂だ。「何と言っても、やっぱり試合に勝つのが1番、楽しい」。その思いが錦織を突き動かした。

 スタートから「気持ちよくプレーしていた」と一気に5ゲームを連取。第1セットを圧勝で奪った。しかし、「まだ自信がなくて、おじけづいたり」したことで第2セットを落とす。

ただ、「悪い時間が1試合ずつ少なくなっている」と最終セットは力を取り戻した。

 引退発表後、4大会目の出場となる。練習をし、実戦を重ねれば「戻せる自信はある」。その半面、連戦で「体は満足ではない」。左股関節の痛みが増したという。そのため「ぱっと(すぐにいい感覚に)戻れない自信もある」というのだ。

 今回の米国遠征で、指導を頼んだ綿貫敬介コーチと、たわいもない話をしていた。「1年間、けがをしない保証を神様と契約できるなら、たぶん(現役を)やると思う」。その夢のような契約を期待するところに、錦織の無念さがちらついた。

 今大会の目標は「1勝」だった。しかし、コーチ陣からは「10勝と言われている」という。予選3試合、本戦7試合全勝は、すなわち優勝で、2014年の準優勝超えだ。

「まだいろんな意味で戦っている。この戦っているのが自分の財産になる」。引退まで、全米とジャパン・オープン(9月28日~10月6日、東京・有明)の2大会だけとなった。錦織を見られる残された時間は少ない。

 ◆錦織に聞く。

 ―最後の4大大会です。

 「あまり気にしていないかも。引退を決めてから4つ試合を出ていますが、どれも特別な試合だった。ただ、USオープンという場所で、あの観客の中でやるのは、(他とは)違う気持ちもする」

 ―まだ勝ちたい気持ちが強いか。

 「試合前にすごい緊張をする。いろんな気持ちも、試合中に動いていたりする。それは、もちろん勝ちたい気持ちが強いから。

勝ちたいというのが、引退を決めてもあるのはいいこと」

 ―惜しまれることは。

 「緊張しながら勝負するという、自分が人生を懸けてやってきたことがなくなる怖さもある。その勝負事がなくなるのは、人間として、どうなっていくのかという心配はある」

 ―以前、ワシントンで優勝したら引退撤回も考えると言っていた。今回は。

 「優勝です(笑)」

編集部おすすめ