納豆は、健康寿命の延伸効果が期待できる可能性を秘めているという。納豆、豆腐、こんにゃくなどを製造・販売するマルキン食品(熊本市中央区)は、納豆の健康効果の可能性を探っている。


このほど、熊本県が立ち上げた「UXプロジェクト」のうち、同社では「Happiness in Choice」というプロジェクトに取り組んだ。

同プロジェクト名は、日本語で「選択できる幸せ」を意味する。健康寿命の延伸がテーマだ。納豆は、健康寿命の重要な指標と言われる慢性炎症レベルを抑制する効果があると言われるポリアミンを含有する。

そこで検証では、モニター15人に納豆2パックを45日間食べてもらい、生物学的年齢を測定した。測定するためのキットは気鋭ベンチャーのekei labsが提供した。

検証結果は、数名は炎症が減り、生物学的年齢も若くなったが、反対に老けた人もいたという。吉良社長は、「深入りすれば面白そうな感触は持っている」と手応えを感じている。

同プロジェクトの目的について、「日本のライフスタイルと最先端の研究を繋げて見える化することが目的だ。具体的には、日々の選択肢の中にある食事や運動、睡眠、ストレスマネジメントなどが健康にどう影響するかを可視化し、健康寿命を自ら選択できる社会を作りたい」と述べる。

その選択肢の1つとして同社でも、グループ会社のB-Genkiを2020年に立ち上げた。「おいしく食べて元気に」をコンセプトに開発し、フリーズドライ納豆入りのチョコレート「Natto Chocolate」や、こんにゃくジャーキーの「KONJAC JUNKIE」などをそろえている。

◆「Xプライズ ヘルススパン」のオートファジーの研究チームに納豆を提供


最近の取り組みでは、米国のXプライズ財団が主催する「Xプライズ ヘルススパン」で、オートファジーの研究チームが準決勝に選ばれた際に、大豆チームとして共に参画する予定だ。同社の他に兼松ソイテック、アサヒコ、岩田醸造、みすずコーポレーションなどが現時点で参加している。

「Xプライズ ヘルススパン」は、老化に伴う衰えを科学的に検証し、最低10年の回復を達成することを目的とした国際コンペティションだ。7年かけて競い合い、賞金は総額1億100万ドルとなっている。

大豆チームは、実証実験の際に商品提供をするなどして協力する。

直近の動きとして、同社では、熊本大学医学部と協働で、新たなプロジェクトの始動に向けて動き出しているところだ。「世界の学会に発表できるような何かを見つけたい」と掲げる。

「納豆が最もオートファジーを活性化させる食品だとオーストリアの学会で発表されたそうだ。この事実が世界中に広まれば、納豆はもっと食べてもらえる予感がある」と笑顔を見せる。

「元気に長生きすることに貢献できるものを当社は持っている。異業種とコラボしながら、世の中がより良くなるように動いていけたら」と意気込む。

【プロフィール】(きら・ふさこ)大学卒業後、米国で23年間にわたり現地で生活。
米国大手通信会社AT&Tに勤務し、2012年に帰国後、家業のマルキン食品に入社。2016年、代表取締役社長に就任。創業100年以上の歴史を持つ同社の伝統を大切にしつつ、健康志向やグローバル市場を見据えた商品開発と海外展開にも取り組む。「健康はすべての基盤」との信念のもと、食品・運動・ライフスタイルの三方向から、人々のよりよい暮らしに貢献することを目指している。

〈大豆油糧日報 6月20日付〉
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