SSAP(アメリカ大豆サステナビリティ認証プロトコル)認証のマークを付与した商品は、世界 20カ国、126企業の 1,125製品に使われており、特に南米の飼料や東南アジアの豆乳などで拡大している。日本でもマークを付与した商品が増えているが、アメリカ大豆輸出協会(USSEC)ではさらなる普及を目指し、大豆のサプライチェーン全体に働きかけるマーケティング施策を夏から秋にかけて行う予定だ。
米農務省の RAPP(農業地域活性プログラム)を利用した活動では、輸出促進と広報という2つのプロジェクトに予算が付いており、日本の大豆食品にとって中長期的に最適な市場を分析した上で、それらの国への輸出拡大を支援していく。24年からは「to future(とうふューチャー)」というキャンペーンをスタートしており、今年は米国大豆がサステナブルであることをサプライチェーン全体で理解してもらえることを目指し、9月にはリアルイベントも実施する。立石雅子日本副代表に直近の取り組みと今年の施策を聞いた。

――食品用大豆の 25年の生産見通しは

米国大豆の 25年の生産見通しによれば、アメリカ大豆における Non-GMO の比率は、前年と同じく4%が見込まれている。これは、米国大豆の供給量から計算すると日本が必要とする年間の輸入量の5年分に相当する。現在のように大豆の価格が落ち着いている時には、生産者はプレミアム作物を作りたいと考える傾向があり、こうした側面からも今後数年間の作付けには問題がないと予想されている。また、米国でオーガニック市場が拡大し続けていることも、この状況を支える要因となっている。

USSECの年次国際会議「ソイコネクスト」では、米国の生産者と日本のユーザーリーダーとの対話の場を設けており、その前座として毎年NonGMO セミナーを開催している。ここ数年、NonGMO の市場は乱高下が激しく、供給のひっ迫や在庫過多を繰り返している。人気品種の期限切れや企業の倒産によって品種の取り扱いが不透明になるといったケースも見られるため、USSECは定期的な情報交換の機会を設けている。

生産者が Non-GMO を作付する際、高単収のGMOも競合となる。GMOは大企業が開発しており、単収は年々向上している。
さらに、農薬と品種とセットで開発されるため当然投資額も大きくなる。一方で Non-GMO は投資額が少なく、単収はGMOよりも低いため、プレミアム確保が引き続き必要になっていく。

〈日本のメーカーや関係者とプロモ活動や受賞制度、ソイオイルマイスター検定 10月開催〉


――サステナビリティに関する最新の取り組みは

米国大豆業界は 2030年までに土地利用を10%、土壌侵食を 25%、エネルギー使用を 10%、温室効果ガスを5%それぞれ削減する目標を掲げて取り組んでいる。

SSAP 認証は南米や東アジア中心に引き続き増えている。南米では飼料が多く、東南アジアでは SSAP 認証の豆乳が大手航空会社に採用される動きもある。持続可能な農業の実践状況を評価する国際的なシステム「FSA(ファーム・サステナビリティ・アセスメント)」からはゴールドレベルの評価を得ている。

直近では、本部のサステナビリティ担当者と大豆生産者が、アムステルダムで開催された消費財企業 400社からなる世界的な組織「コンシューマーグッドフォーラム」に参加し、SSAP の意義をプレゼンするなど、世界各国でサステナビリティのイベントで SSAP を認知してもらう活動を行っている。

米国から輸出する大豆の7割が SSAP 認証のものだ。

日本の施策としては、日本のメーカーや関係者と共同のプロモーション活動や受賞制度、豆腐、納豆メーカーを対象に、米国大使館、農務省と連携して設立した「アメリカ大豆サステナビリティアンバサダーアワード」を継続する。SSAP 認証された米国大豆を使用して各業界団体主催の鑑評会で選ばれた製品を表彰しており、24年度は全国納豆鑑評会でカジノヤ(神奈川県)の「かじのや納豆」を、全国豆腐品評会で結城食品(高知県)の「きぬこし(絹筒豆腐)」に授与した。

また、「アメリカ大豆サステナビリティ特別感謝賞」は、SSAP 認証マークを使用している企業の中で、特に顕著な訴求活動や功績、企業姿勢が認められた企業として、兼松のグループの米国法人KAPI(KG Agri Products, Inc.)と太子食品工業(青森県)に授与する予定だ。

ほかにも試食会を伴うイベントやフーデックスへの出展を行っており、全国に教室を持つABCクッキングとの取り組みも来年1月に計画中だ。企業との米国農場ツアーを定期的に開催し、改めてアメリカ大豆の安定性と信頼性を理解してもらうイベントを開催していく。


ソイオイルマイスター検定についても今年は10月3日から19日にかけて開催が決まっている。

――SSAP 認証マークをさらに広げるための取り組み

SSAP認証マークはさらに増やしていきたい。そのために、改めて何が課題であるかを整理している。マークを付ける意味や、国産大豆もある中で米国大豆を選択する意味、そもそもサステナビリティの意味が分からないという人もいる。大豆のサプライチェーン全体に働きかけるマーケティング施策を、この夏から秋にかけて行う予定だ。

24年からは「to future(とうふューチャー)」というキャンペーンをスタートした。多くの人がサステナビリティを頭では理解していても、自分の食べているものがどこから来て、何がサステナビリティに関わっているのかまでは深く考えないのが現状だ。そこで、日々の食事からサステナビリティについて考えてもらうことが重要だと考えた。具体的には、「デリッシュキッチン」で「豆腐のアメリカンピザ」を提案し、売り場のモニターでレシピ動画を配信したりした。また、料理を楽しみながら自分自身で作った料理の写真を投稿し、共有するプラットフォーム「スナップディッシュ」ともコラボしている。昨年は豆腐にフューチャーしたが、今年はこの取り組みを大豆全体に焦点を当て、サプライチェーンでの理解を促進するイベントを実施予定だ。9月にはリアルイベントを開催し、参加者と一緒にサステナビリティについて考える機会を提供する。


大豆アニメ「ソイストーリー」はエピソード8まで公開しているが、異なる要素を加え、秋から冬にかけて公開する予定だ。また、ソイアニメを活用した交通広告なども企画中だ。
【USSEC日本副代表インタビュー】SSAP 認証のマーク更なる普及目指す、「とうふューチャー」リアルイベント実施
大豆アニメ「SOYSTORY(ソイストーリー)」
大豆アニメ「SOYSTORY(ソイストーリー)」

〈日本の大豆食品、中長期的に最適な市場はインドネシア・タイ・EU全般・中東〉


――米農務省の RAPP 利用した活動について

24年秋から、日本においては輸出促進とSSAPの認知という2つのプロジェクトに予算が付いている。輸出は当然増えているが、日本の大豆食品にとって中長期的に最適な市場は、インドネシア、タイ、EU全般、中東であると分析結果が出た。例えば、東南アジアは日本の食文化のファンも多く、大豆が生活の中に溶け込んでいる。日本の小売店も進出している。これらの国に輸出を拡大するための課題についてレポートをまとめているところだ。

来年もフーデックスに出展し、SSAP 製品を中心に、訴求につながる活動をしたい。今春、初出店となったが、日本人の来場者にとっては、地方の多様な納豆が一堂に集まっていることにインパクトがあったようだ。外国人の来場者からは納豆の試食が好評だった。豆腐バーを輸入したいというアジアの外国人が目立った。より輸出を促進できるような見せ方をしていきたい。


SSAP マークを使用いただいている新商品の開発にも働きかけていく。冬にかけて、テレビやSNS、雑誌でプロモーションを展開する。 8月にはワシントンD.C.で「ソイコネクスト」が開催される。日本からは、日米パートナーシップ、食品・飼料メーカー、商社、現地の日系メディアなど全サプライチェーンから 28人が参加する。この企業間協力イベントを通じて、サプライチェーンの連携強化を図ることを期待する。来年で 30周年をむかえる日米パートナーシップラウンドテーブルミーティングの業界代表者にも「ソイコネクスト」に参加していただく。

最終日の日米トップ会合では、世界の穀物需給、8月後半の生育状況の把握、日米のサステナビリティの状況など、さまざまな課題の共有を通じて、情報収集と連携強化を行っていく。この機会を最大限に活用し、大豆を通じた日米の信頼関係の構築とサステナブルな未来への成長を目指す。

――Xプライズ財団の健康寿命を 10年若返らせるアプローチを競う1億100万ドルの賞金コンテストで、納豆に注目した研究が準決勝に入賞した

オートファジーの研究を行う大阪大学発のベンチャー企業オートファジーゴーが、世界 58カ国 600以上のチーム中、準決勝のトップ 40に入賞した。26年7月には決勝に残るトップ10のチームが選ばれることになる。大豆及び納豆やみその大豆加工製品には、細胞の機能であるオートファジーを活性する作用があるということで注目されている。USSECが4月に開催したサステナビリティシンポジウムでは、このオートファジーゴーのファウンダーであり、大阪大学の名誉教授でもある吉森保先生に講演いただき、多くの反響を呼んだ。


米国は日本の大豆の7割を供給し、納豆の6割には米国大豆が使われていることから、USSECはこの世界規模の健康寿命延伸プロジェクトへの連携を模索している。

〈大豆油糧日報2025年9月3日付、9月4日付〉
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