不二製油は9月12日まで、大阪・関西万博の外食パビリオン「宴~UTAGE~ラボ」に出展し、「オールパーパス・フォーラム」と題した体験型プログラムを実施している。不二製油の植物性だし「ミラコア」の共創パートナーが登壇し、試食を交えながら動物性制限のある食環境にも対応できるメニュー提案などを行うもの。
9月9日にはグローバルにラーメン店を展開する一風堂が、海外で提供するプラントベースラーメンを披露し、不二製油の大森達司社長と一風堂を運営する力の源カンパニーの山根智之社長の対談も行われた。

一風堂が海外で提供するプラントベースラーメン
19年から始まった両社の共同の取り組みを振り返るとともに、山根社長は25年にスペインとドイツへ初出店し、10月上旬にはハラール対応の新店舗をインドネシアにオープンすることを明かした。大森社長は「ミラコア」がグローバルに展開できる素材であることを強調し、ハラール認証を取得しているシンガポールの工場から、一風堂にハラール対応素材を供給することも計画していきたいと話した。
〈創業40周年を迎える一風堂、国内外310店舗展開の成長戦略と展望〉
対談では、「食の未来を共創する」をテーマに、両社の過去、現在、未来の取り組みについて話された。一風堂は1985年10月16日に創業し、来月40周年を迎える。博多・大名で10席の店舗でスタートし、95年には関東1号店を出店、08年には海外1号店をニューヨークに出店した。現在では14の国と地域に展開し、日本国内と合わせ310店舗を数える。
ここまで拡大できた要因として山根社長は、「創業者の河原成美会長の想いが強い。当時のラーメン店はおしゃれなものではなかった。河原会長は内装や雰囲気を変えると新しい市場が開けると考えた。また、豚骨ラーメンはにおいがつよく、油でギトギトするものだが、当時からまろやかな豚骨スープで提供した。東京で開業すると好評で、日本の食文化の誇れる一つとして、世界でも通用するという信念を持ったと聞いている」と語った。ニューヨーク店にも多くの人が来店し、出店当時は看板商品の白丸ベースが$13だったことから、「$13で行ける日本旅行」とニューヨークタイムズに見出しが載ったという。
そこから海外展開を進めていったと振り返った。

一風堂 白丸元味
出店計画については、「昨年スペインに法人を設立し、来週オープニングができる。ドイツにも子会社を設立済みで開業を準備している」と説明した。「米国は東と西海岸以外も視野に入れ、シンガポールや台湾、インドネア、豪州、日本でも着実に店舗を増やしていきたい」と構想を語った。
〈不二製油、植物性でありながら動物性のコクを出す「ミラダシ」の開発〉
不二製油の大森社長は、「1950年に大阪で創業し、今年75周年を迎える。植物油の製油業では最後発だったので、原料入手が困難だった。そこで他社が搾っていないパーム油やヤシ油を取り扱い、現在は業務用チョコレートや製菓製パン用のホイップクリーム、大豆たん白をグローバルに展開し、14カ国、39社のグループ会社で食品の中間素材を販売している。戦後の競争が激しい中スタートしているので、人マネをしている限り生き残れないというのがモットーだ」と自社を紹介した。
「ミラコア」の開発を振り返ると、両社の取り組みは19年に遡り、一風堂の創業者である河原会長にラーメンを試食提供したことから取り組みがスタートした。東京五輪での出展を目指し、21年には一風堂で「プラントベース赤丸」を販売開始した。

不二製油「ミラコア」
大森社長は、「日本人の舌は肥えている。まずはおいしいというのがあり、植物性という順番でなければ受け入れてもらえない。おいしさの研究を続けて、これならいけるというものを当時の河原社長に見てもらうと、『粗削りだけど面白いかもしれない』と言ってもらえた」と振り返る。
「東京五輪で植物性のラーメンを出そうという目標をいただき、数十回のやり取りの後に、植物性でありながら動物性のコクを出す『ミラダシ』が完成した」と説明した。その後、事業化に向けた全社的なプロジェクトがスタートした。
「プラントベース赤丸」の開発に当たり苦労した点について山根社長は、「プラントベースに関心を示したのは海外進出がきっかけだ。宗教や健康上の理由、気候変動など環境問題の意識からくる食の制限、食多様化が欧米や東南アジアで加速度的に進んでいることに気付いていた」と述べる。
一風堂の海外の店舗でも豚ではなく鶏を使ったラーメン、ヴィーガンやベジタリアン向けの商品を開発していたという。その延長線で19年に不二製油から提案されたラーメンには大きなポテンシャルがあると考え、東京五輪に向けて商品化していくことになったという。
「ラーメンのかえしは動物性のスープに合わせてきたので、ゼロから考え直し、1年強さまざまな開発をしてきた。植物性、プラントベース、ヴィーガンなどの形容詞が最初に来てしまうと、消費者は健康にはいいが、味わいには満足いかないのではというバイアスが入ることが否めない。食べてもらっておいしいと言ってもらえる商品開発に時間を費やした」と話した。
21年に全国47店舗で「プラントベース赤丸」を期間限定で販売開始し、23年のG7広島サミットでは共同でブースを出展して試食を行ったが、行列ができるなど好評だったという。

不二製油×一風堂「プラントベース赤丸」
〈グローバルに展開できる「ミラダシ」、インドネシアでハラール業態の挑戦〉
山根社長は新業態として、米国のニューヨーク・ブルックリンでヴィーガン専門店「ippudo V」を出店したことについて、「さまざまな課題があったが、オープンして今日ではさまざまな人が来店している。ハリウッドの店舗も『ippudo V』に業態変更して営業している。
企業のフィロソフィーとして新しい価値を常に創造したい。10月にはインドネシアでもハラール業態の挑戦も進めている。すでに会社の設立を進めて工事中だ」と説明した。
「ミラコア」の海外展開について大森社長は、「植物性食品は地球環境負荷が低く、欧州や米国では若い人のそういった問題意識も進んでおり、グローバルに展開できる素材だと思っている。ハラールの店舗ではハラール認証が必要になると思う。当社の植物性素材ではハラール認証を取得しているものがいくつかあり、『ミラダシ』に関しては、シンガポールの工場がハラール認証を受けているので対応が可能だ。一風堂の展開に合わせて供給することも計画していきたい」と語った。
なお、国内の一風堂のプラントベース商品の提供店は、銀座店、銀座東店、原宿竹下通り店、浅草雷門通り店、四条烏丸店、金沢香林坊店、minamoa 広島店、新宿ルミネエスト店となり、期間限定で梅田店と長堀店でも提供している。

一風堂 国内プラントベース商品「プラント赤丸」

一風堂 国内プラントベース商品「ミラとん」

一風堂 国内プラントベース商品「大地香る醤油ラーメン」
〈大豆油糧日報9月10日付〉
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