〈青木会長「当社の商品がスタンダードとなり世界に羽ばたいていくこと確信」〉


マルコメのグループ会社かねさ(青森市)は9月18日、「かねさ顆粒みそ工場」の竣工式・開業式を行った。みその生産ラインを備えた梵珠(ぼんじゅ)工場、顆粒みそ(パラミソ)を製造するパラミソ工場に次ぐ、第3の工場となる。これにより顆粒みその年間生産量は約800tとなり、現在の2倍相当の1億食まで増産する予定だ。
新工場は、顆粒みその独自生産ラインがガラス越しに一般見学が可能で、同社のみそづくりの歴史や青森の食文化なども体験できるシアターやカフェを併設した工場と体験館の一体型施設となる。青木時男会長(マルコメ社長)は「顆粒はみその進化の集大成で、当社の商品がスタンダードとなり、世界に羽ばたいていくことを確信している」と力を込める。
「かねさ顆粒みそ工場」竣工、一般見学できる工場と体験館の一体型施設
青木会長
青木会長
竣工式・開業式には、宮下宗一郎青森県知事や西秀記青森市長、施工を手掛けた千代田エクスワンエンジニアリングの伊藤卓社長らが来ひんとして出席した。開業式のあいさつで青木会長は、「本工場で製造を開始するフリーズトライみそ汁は、当社が自信を持って届けるみその新時代を切り開く革新的な製品だ。次世代の即席味みそ市場をけん引する大型商材として、大きな可能性を秘めている」と強調した。

みその形状について触れ、「みそは長年、従来の粘性のある形状から液体タイプ、ブロックタイプへと進化してきた。今回のフリーズトライみそ汁はその進化の一つの集大成であると確信している。かねさのフリーズトライみそ汁は、みそ本来の風味を損なうことなく、独自の製法により特許を取得し、おいしさにおいて高く評価されてきた」と説明した。また、「使用の簡便さに加え、賦形剤などの添加物を一切使用せず、廃棄物も少なく、賞味期限が非常に長いことから海外市場においても、高い競争力があると自負している。今後は、国内市場はもとより、世界の即席みそ汁市場において、当社の製品がスタンダードとなる未来を見据え、取り組んでいきたい。この新工場からかねさのフリーズドライみそ汁が世界に羽ばたいていくことを確信している」と力を込めた。

顆粒みその体験館も併設したことも紹介した。
「シアタールームでは、青森県の四季折々の魅力を紹介し、津軽の食文化や郷土料理、発酵をテーマとしたメニューを提供するカフェも併設している。観光で訪れる人はもとより、地元の皆さんにもコミュニティスペースとして気軽に利用してもらいたい。全ての人々が健康で豊かに長生きできる青森県、そして、みんなで未来を育てる町に、青森市の一員として今後もより一層精進していく」と語った。

その後、併設カフェのメニュー監修を行っており、食の魅力から通い続ける青森が第二の故郷だという料理家の栗原心平氏によるトークセッションが行われた。顆粒みその魅力について栗原氏は、「吸湿性が高いので、素材の水分を持って行ってくれるため、さまざまな調理に活用できる。べちゃッとならず、みそ漬けの肉や魚、野菜にも使える」と評価した。

〈見学ゾーンは全工程の設備公開、津軽の一大観光拠点に、パラミソ工場から効率化〉


見学ゾーンでは、前処理から予備乾燥、押出造粒、仕上乾燥、包装工程の全ての設備をガラス越しに公開している。壁面イラストでも分かりやすく工程ごとに説明しており、押出造粒や仕上乾燥で真空乾燥させる工程を体験できるゲームも設置している。

かねさの秋田谷宣之社長は新工場について、「青森と弘前の中間の場所となり、津軽の一大観光拠点にしたい」と力を込める。近くには年間約200万人が訪れる「道の駅なみおか アップルヒル」もあることから、「相乗効果で観光客が立ち寄る場所になれば」と期待する。
「かねさ顆粒みそ工場」竣工、一般見学できる工場と体験館の一体型施設
かねさの秋田谷社長
かねさの秋田谷社長
ブロックや粉末など他のタイプのフリーズドライに対する優位性については、「ブロックタイプはみそ汁しかできないが、顆粒は、みそ汁はもちろん、みそ料理にも使える。粉末タイプも料理に使えるが、混ざりやすさの点で顆粒の方が使いやすい」と説明した。

「かねさ顆粒みそ工場」竣工、一般見学できる工場と体験館の一体型施設
前処理
前処理
「かねさ顆粒みそ工場」竣工、一般見学できる工場と体験館の一体型施設
予備乾燥
予備乾燥
「かねさ顆粒みそ工場」竣工、一般見学できる工場と体験館の一体型施設
押出造粒
押出造粒
従来のパラミソ工場からのブラッシュアップ点について、「基本的な工程は同じだが、要所要所で前の設備を改良し、効率化を図った。いろいろなタイプのみそに対応できる汎用性も取り入れている」と説明した。例えば仕上乾燥では、従来設備はどちらか一方しか作業ができなかった押出と仕上の工程を分けることで、同時に作業できるようにしたという。トレーも漉した後のみそがはがれやすいものに変更し、より効率化している。

輸出については、マルコメのルートで、航空会社の機内食などで販売しているという。北米では、例えばカナダの食品卸でプライべートブランドとして、顆粒みそを小袋で販売している。パラミソ工場の一部ラインでハラール認証を取得しており、「イスラム圏ではハラール対応のみそ汁をすでに販売しており、今後も広がる可能性がある」と期待した。新工場でもハラール認証を取得することを検討している。
「かねさ顆粒みそ工場」竣工、一般見学できる工場と体験館の一体型施設
仕上乾燥
仕上乾燥
「かねさ顆粒みそ工場」竣工、一般見学できる工場と体験館の一体型施設
包装工程
包装工程
〈大豆油糧日報2025年9月22日付〉
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