〈「市場や未来を読む力」が問われる世界、問題解決能力を持つ人材の育成が重要〉バブル崩壊後に新卒で証券会社に入り、新規獲得の営業に飛び回ったという。ただ、バブル崩壊後で消費者は損失を抱えており、厳しい環境のため、2年で区切りを付け、後に合併する三幸商事に転職する。九州支店で27年間、大豆と飼料を取り扱い、5年前に執行役員として本社に移り、2年後に取締役となる。6月10日付で代表取締役社長に就任した。大豆の商社として業界をけん引している同社だが、卵、野菜、小豆、砂糖、でんぷんなど幅広い食品を取り扱っている。野菜やアイスクリームの自社工場も持ち、大手スーパーPBのアイスクリームも製造している。二子玉川ではジェラート店舗も運営している。九州では長年、大豆の調達を手掛けていたが、前職と共通点はあるという。「大豆も株と同じで日々売買され上下している。為替もリアルタイムで変動し、われわれの仕入れが決まる。両方ギャンブル的な要素がある」と説明する。「大豆は穀物相場や為替の変動に左右されるため、タイミング次第で損益に影響が出る、まさに『市場や未来を読む力』が問われる世界だ」と語る。大豆は農作物なので規格品ではなく、すべて形が違う。内容成分もぶれる。転がして選別するため、茎やサヤ、コーンなどが異物として入ることもゼロではなく、そのためクレームは比較的多く発生するという。「問題は起きるものとして捉え、問題解決能力を持つ人材の育成が重要になる。経験を積むことでしか身につかない力がある。お客様から厳しい言葉をいただくこともあり、若手社員が落ち込む場面もある。ただ、そうした経験を乗り越えることで成長できる。問題解決力を身につけた社員は、どの業界でも通用する人材になる」と強調する。〈生成AIで質上げながら時間短縮、2年後に可能と見通すオール自動化へ準備進める〉新社長として注力するのが、生成AIを使った効率化の取り組みだ。7月から社員のパソコンに生成AIの機能を搭載したシステムを導入した。「生成AIを使って質を上げながら時間を短縮し、お客様により良いサービスを提供できる時間を創出する。より良いパートナーとして事業に取り組んでいくための質と時間を作り出す」と力を込める。受発注などで現在使っている社内システムのECサイト導入も検討しているという。「短期的にはまずAIに慣れてもらう。営業資料の作成など、従来時間がかかっていた業務をAIがサポート。社員はより本来の営業活動に集中できるようにする。この超優秀な秘書をうまく使いこなすことにより、質を上げて時短ができる。その時間を営業活動に費やすと、現在の1.2倍から1.5倍のお客様に対応できるようになる」と構想を語る。オール自動化はまだできないというが、「2年後には低コストで可能になっている」と見通しており、業界でいち早く準備を進めている。【プロフィール】1969年の10月生まれ、55歳。証券会社を経て、93年に三幸商事に入社、九州支店で主に大豆の調達を担う。2005年に三幸食品と合併。20年に執行役員穀物事業部長兼大豆グループ長、22年に取締役穀物事業部長兼九州支店長から現職。趣味はゴルフ。「感謝と謙虚さを忘れないようにしている。一人で仕事をしている訳ではないので社員、事務員、お客様、仕入れ先に常に感謝し、傲慢にならず謙虚に徹する」。〈大豆油糧日報2025年9月24日付〉