経済産業省は、8月29日に「令和8年度税制改正要望」を公表し、食事補助制度における非課税限度額の引き上げを正式に明記した。年末までに省庁間の折衝と並行して与党の「税制調査会」が審議を行い、民間企業の声なども踏まえて議論される。
食事補助制度とは、企業が従業員に食事代を補助する際、一定の条件を満たせばその金額は非課税とするもの。現行制度では、月額3500円までの食事補助であれば非課税扱いとされており、これを「食事補助の非課税上限」と呼んでいる。

経済産業省「令和8年度税制改正要望」資料抜粋
この非課税の適用を受けるには、「企業からの補助額が月額3500円以下であること」「従業員が食事代の半額以上を自己負担していること」の2点が条件となるが、この3500円という金額は1984年当時の従業員の月額食事代6,800円を根拠としており、実態と乖離している。40年以上が経過する中、食料の消費者物価指数は1984年平均に対し2025年1~7月平均で64.6ポイント上昇しており、要望では、「足元の物価上昇の状況等を踏まえ、本制度の非課税限度額の引き上げを行う」ことを求めている。
社員食堂等を受託運営する給食事業者や外食企業など1140者・社で構成される「食事補助上限枠緩和を促進する会」が実施した調査によると、企業の半数超が4,000円以上の食事補助支給を行っており、食事補助を支給している企業の8割超が「非課税限度額が引き上げられれば、従業員への食事補助を増額したい」と考えていることがわかった。
また、従業員600名に一カ月あたりの昼食予算を尋ねたところ、約6割が1万円未満と回答。平均予算は平均11,358円である一方、2020年頃の物価高の前と同等の昼食をとるためには、月額15,493円を必要としていることも明らかになった。

普段のランチ予算と理想のランチ予算「食事補助上限枠緩和を促進する会(エデンレッドジャパン)」調査より
そのため、同会は、企業で働く従業員の節約の実態と今後のさらなる物価上昇も考慮に入れた十分な限度額として、昼食予算の半額を超える8,000円への引き上げが適切であると考え、9月18日に政府に要望書を提出し具体的な引き上げ額を提示した。
「食事補助の非課税上限」拡大のメリットとしては、〈1〉従業員の実質的な手取り賃金の増加による物価高への対応、〈2〉ランチの欠食の解消、より健康的な食事の選択、共食の促進など、大人の食育の推進、〈3〉中小企業の人材課題解消、労働生産性改善、非正規雇用労働者の待遇改善、〈4〉平均ランチ代が引き上がることによる、飲食産業に対する消費拡大――の4点をあげている。
編集部おすすめ