大手製パンメーカーの敷島製パンの冷凍事業は、全国各地のベーカリーや外食産業などへ広く冷凍パン生地や焼成後冷凍パンを供給している。また気軽に購入してもらえるよう、家庭用では、焼成後冷凍パンブランド「L’Oven(ル・オーブン)」の通販サイトを通じた販売を進めているほか、業務用では、インストアベーカリーやホテル、外食を中心に焼成後冷凍パンや冷凍パン生地を販売している。


焼成後冷凍パンの市場動向について、以前はスーパーの冷凍食品コーナーでパンの売り場が展開されるなど盛り上がりがあったが、現在は縮小傾向も見られる。フレーバー付きのフランスパンやピザ・ハンバーガーなどの一品完結商品は一定の支持があり、少量ながらスーパーにも展開されているという。

業務用のうちインストアベーカリーでは、業務の多忙さから従業員が定着しづらいことを背景に、店舗運営や店頭での品ぞろえ、サービスの低下などが課題となっており、徐々に焼成後冷凍パンの引き合いが高まってきている。

ホテルや外食では、焼成後冷凍パンを中心に、解凍して温めるだけの簡便性や、他食材と組み合わせたメニュー提案のしやすさが評価されている。

そのような状況下、同社の焼成後冷凍パンブランド「L’Oven」の売上高は、月によって変動が見られるが概ね前年並みに推移した。「シンプルパンセット」「プチパンセット」といった少量かつアソートタイプの商品が安定して人気を博している。現在、期間限定で展開している「十勝ラクレットチーズとル・オーブンのパンセット」も好評だという。

同社の業務用冷凍パンの売上高は、前年比で焼成後冷凍パンが約10%増、冷凍パン生地が約5%増といずれも前年を上回って推移した。

好調要因について、製品戦略グループの川口亮氏は「利用するにあたって在庫や発注管理、店頭の品揃えがコントロールしやすいことや、人材や設備が整っていない厨房でも、惣菜を挟んだり、解凍して焼くだけで商品を提供できる簡便さが評価されている」と話す。

〈人気商品1位は「パノラマ食パン6枚」〉


同社の焼成後冷凍パンの人気商品は、1位が「パノラマ食パン6枚」、2位が「国産小麦の紅茶シフォンケーキ」、3位が「ルヴァンバゲット スライス」の順となっている。

「パノラマ食パン6枚」は、角型の食パンで、具材と組み合わせやすいシンプルな仕様が評価されている。川口氏は「食パンは焼成時間がかかり、菓子パンや惣菜パンの焼成時間に影響を及ぼすため、すぐに店頭に並べられるアイテムとしてニーズが高まっているのでは」と推測する。


「国産小麦の紅茶シフォンケーキ」は、国産小麦の小麦粉を使用したミルクホイップクリーム入りのシフォンケーキ。現在は紅茶とショコラの2つのフレーバーをラインアップする。手探りで新たに市場に導入した商品だが、価格や見栄え、アレンジのしやすい仕様が評価されているという。バラエティの拡充は今後も継続していく予定だ。

冷凍スイーツとしてはタルトケーキなどの小物も展開しており、大量陳列されるスーパーのイベントなどで引き合いがあるという。

「ルヴァンバゲット スライス」は、食パン同様具材を組み合わせやすい仕様が評価され、ホテルやレストランで好調に推移した。

同社では、業務用冷凍パンのサービスサイト「パンたす」を2020年8月から展開しており、パンビジネスをサポートするさまざまな情報を掲載している。

また、業務用冷凍パンの通販サイトも展開しており、これまで直接取引できなかったような小口ユーザーへの販売を進めている。

通販サイトでの販売動向は、先述したような小口ユーザーへの流通が確立し、好調に推移している。個人のベーカリーやカフェに加え、ホテルやレストラン、当初想定してなかったキッチンカーでの活用もあり、用途や販売のチャネルの幅が広がってきているようだ。

〈冷食日報 2025年12月18日付〉
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