植物油で最も物量の多いバルク物流は、専用ローリー車での配送が中心だ。ただ、ローリー車の物流に対応できる運送会社は国内に20社程度しかなく、大半が中小の地場企業となる。
加えて、危険を伴う高所での納品作業など、作業負荷は一般のトラック運転手以上に高く、ローリー車の運転手を確保するのが難しい状況となっている。ドライバー不足が深刻な課題で、食品製造に欠かせない植物油の安定供給体制の確保が困難になることが懸念されている。

日本植物油協会(日油協)は12月23日、中央区の油脂工業会館で18日の理事会員集会の報告会を行った。その中で、「持続可能なバルクローリー物流のために」と題した資料を作成し、植物油業界の物流課題であるバルク物流の現状と課題について説明を行った。流通委員会から会長・副会長会社3社の担当者も出席した。

会長会社のJ-オイルミルズ・畑谷一美執行役員SCM統括部長は、「危機感を感じている。バルク物流は植物油の物量で最も多い。パッケージ品の場合はトラックが足りなければ、自動車など異なる製品を運んでいるトラックで代替可能だが、バルクローリーは代替できない。2年前から農水省にも報告し、FSPPP(フードサプライチェーン官民連携プラットフォーム)制作委員会で植物油の買い手側にも課題を伝えた。メーカーとしても社内で理解を進め、納品先にも理解してもらい、一緒に改善を進めていきたい」と述べた。

事務局の報告によると、資料は物流業者からの要望や意見を集め、物流委員会で取りまとめた。安全確保にフォーカスを当てており、「資料は発荷主の視点ではあるが、スタンスとしては行政や着荷主と一体となって取り組みを進めていきたい」(日油協・立見健一事務局長)。


植物油は、揚げ用、練り込み用、仕上げ用など、さまざまな調理工程で用いられ、多くの食品メーカーが利用している食品製造に欠かせない原材料だ。使用量の多いメーカーへの配送は、大型ローリー車(10t)で納品されている。しかし、対応可能な運送会社は国内で20社程度、全国対応する大手は1社のみで「ほぼ地場企業に支えられている」(同)。一般のトラックの運転手以上に作業負荷が高いことなどの理由で、ローリー車の運転手の確保は難しく、「負荷が重いままだと安定供給ができなくなる」(同)。

バルク物流領域は2024年7月のFSPPP制作委員会の第1回会合で、「特殊車両による物流について」という内容で情報共有を行った。各業界団体の出席者から多くの意見を集め、その後も複数の団体と意見交換している。今後は農水省の支援も受け、食品メーカーや外食、中食などの着荷主のほか、小売や卸も含めて問題意識を共有し、共通理解を深めていく考えだ。

〈納品作業負荷が高く熟練ドライバーに依存、目線が約5mにもなる高所作業が必要〉


植物油のバルク配送の特徴は、出発拠点が工場などのため長距離配送となり、異物混入対策や油漏洩などが起きないよう、高度な品質管理や衛生管理も求められ、納品作業負荷が高い。

物流会社の傾向だが、輸配送を担う会社が少ないことに加え、ローリー車は特別装備が必要で高額のため、増車投資にも慎重だという。高齢の熟練ドライバーに依存しており、若年層の定着に課題がある。さらに兼業の場合は、パレット配送などで負荷が減っている一般のトラック配送にシフトしている傾向もみられるという。

納品の課題では、高所作業になることをはじめ、納品日間際でのオーダーの納期変更やキャンセルの割合が比較的高い一方、原料がないとユーザーは製造できないので納期厳守が求められる。
タンクレベル計が故障したままなど、着荷主の納品管理で改善が必要なケースもある。

高所作業については、ドライバーは納品時にサンプル採取やハッチ開封などでタンク上部の乗降が必要になる。その場合の目線は約5mにもなり、屋外の場合は雨水混入に注意を払い、傘を差しながら不安定な体制で作業を行うことになる。納品作業時の労働災害発生時には安全配慮義務違反として着荷主側が責任を問われる可能性もある。そのため、墜落制止器具を取り付けられる親綱などの設置も要請している。

〈大豆油糧日報2025年12月25日付〉
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