昭和産業が出資する東北大学発スタートアップのファイトケミカルプロダクツ(仙台市)はこのほど、同大学青葉山キャンパス内で、未利用油をアップサイクルする実証設備落成お披露目会を開催した。同設備は、同大学が開発した独自技術「イオン交換樹脂法」によって、油脂製造副産物から高付加価値機能性素材とバイオ燃料を同時に製造できる国内初の実証設備だ。
使用できる樹脂量は従来の70kgから1tにスケールアップした。ファイトケミカルプロダクツの加藤牧子社長は、「今回の設備は研究段階から産業応用に進めるための重要なステップとなる」と位置付ける。その上で、「1~2年以内に10tの稼働を目指し、その2年後には100t、2030年には500tレベルまで持って行きたい」と今後の展望を述べた。

加藤社長はあいさつの中で、「未利用の油資源を活用する技術の社会実装に取り組んできた。食用油の製造工程では、副産物としてさまざまな油が生じる。十分に活用されてないものも含まれ、新たな価値創出の可能性を秘めている。イオン交換樹脂法は、油から高付加価値の機能性素材を回収し、残りの成分をバイオ燃料へと変換する技術だ。資源を余すことなく活用することで、資源循環と脱炭素社会の実現に貢献することを目指している」と述べた。
未利用油をアップサイクルする実証設備、研究段階から産業応用に【ファイトケミカルP】
加藤社長
加藤社長
この取り組みを東北で進めることにも大きな意味があるとした。「東北は大学や研究機関を中心とした優れた技術を有する地域だ。この地から新しい資源循環型産業を生み出し、世界へと展開していくことが使命だ」と力を込めた。

来ひんあいさつで昭和産業の大野正史取締役常務執行役員は、「24年10月にファイトケミカルプロダクツと資本業務提携を締結し、まもなく1年半を迎える。
当社は今年90周年を迎えるにあたり、グループ経営理念を刷新した。ライフソリューションの追求も進めていく中で、われわれが重視するオレオケミカル、バイオケミカル事業の展開に向けて、イオン交換樹脂法の技術は重要になる。本日落成する実証設備は社会実装に向けた重要なプロセスと考えている」と期待を寄せた。

〈植物由来の機能性素材の製造・販売とライセンス・エンジニアリング事業を展開〉


加藤社長は事業内容や実証設備の説明を行った。ファイトケミカルプロダクツは2018年に創業した。未利用の油資源を高付加価値素材に変換する技術を用い、植物由来の機能性素材の製造・販売と、技術を活用した装置の提供とライセンス・エンジニアリング事業を行っている。今回の完成した実証設備では、米糠由来の機能性原料とバイオ燃料の製造をしながら、樹脂塔のスケールアップと自動運転技術の開発に取り組んでいるという。
未利用油をアップサイクルする実証設備、研究段階から産業応用に【ファイトケミカルP】
今回完成した実証設備
今回完成した実証設備
こめ油は米糠から作られるが、製造工程の副産物として未利用油が発生する。その中には油成分以外に、ビタミンEなどさまざまな機能性成分が含まれる。通常これらの成分は、異なる原料やプロセスで製造される。「これらの成分を1つの未利用油から同時に取り出すことができれば大きな価値を生み出せると考えた」と振り返る。

その未利用油の付加価値を高める技術がイオン交換樹脂法になる。
元々は水処理で使われてきたが、油の中でも高い反応・分離機能を持つことを発見した。この技術で油成分をバイオ燃料に変換し、同時に複数の機能性成分を分離することが可能になるという。「従来は反応と分離が別工程だったが、この技術では同時に行えるのが特徴で、特許取得している基盤技術だ」と述べた。

なお、同技術はこめ油だけでなく、世界中の植物油に応用できるため、食用油メーカーへの技術提供や設備導入支援を進めていく考えだ。すでにマレーシアやインドネシアのパーム油向けに技術紹介を行っているとしている。

〈大豆油糧日報2026年3月16日付〉
編集部おすすめ