給食業界で、受発注や献立作成などの業務を効率化するデジタルサービスが相次いで登場している。給食現場では、施設ごとに異なる発注方法や栄養管理、原価管理などへの対応が求められ、外食向けサービスをそのまま転用することは難しい。
近年は、給食業界特有の業務に対応したシステムの開発が進み、人手不足が深刻化する現場の負担軽減につなげようとする動きが広がっている。

飲食店と卸売業者をつなぐ受発注プラットフォーム「クロスオーダー」を展開するクロスマートは、2025年5月、給食事業者向けの受発注システム「クロスオーダー給食」を開始した。

同社によると、開始から1年で、給食を提供する約2200施設に導入され、毎月約250施設のペースで利用施設が増えているという。利用継続率は95%としている。

クロスマートが給食分野への参入を検討したきっかけは、取引先の卸売業者から、給食業界の受発注業務にも大きな課題があると聞いたことだった。

同社の寺田佳史社長は、外食向けのシステムをそのまま転用することも検討したが、「品目数の多さや発注方法が外食とは異なり、流用では不十分だと分かった」と説明する。

病院や高齢者施設では、毎日3食を提供するため、取り扱う食材の品目数が多い。発注も、食材を使用する日ごとに数量を決めるため、飲食店とは業務の流れが異なる。

そこで「クロスオーダー給食」では、使用日を基準に食材を注文する週間発注に対応し、最大90日先まで発注できるようにした。検収表の自動作成や、部門ごとに発注できる機能も搭載している。

開発には、栃木県を本社とし、関東、東北、甲信越、静岡で16拠点を展開する業務用食品卸のニッカネが協力した。

ニッカネの金田陽介社長によると、従来は施設ごとに異なる形式や表現で届く発注内容を、事務担当者が確認しながら社内システムに入力していた。


金田氏は「各社で発注方法が異なり、曖昧な書き方で届くこともある。事務スタッフが職人技のように内容を読み取って入力していた」と語る。

同社ではシステム導入後、受注入力の負担が軽減した事務スタッフが、営業担当者の支援に回る体制を整えているという。

クロスマートは、ニッカネを含む複数の卸売業者から意見を聞き、約1年かけてシステムを開発した。今後は、AIを活用して商品検索をしやすくするほか、欠品時に代替商品を提案する機能も開発し、年内の搭載を予定している。

寺田氏は「飲食店も給食施設も、日本にとって重要なインフラである。人手不足によって給食を提供できなくなる事態を防ぎたい」と話す。同社は3年以内に2万施設への導入を目標としている。
給食業界でDX進む 受発注や献立作成を効率化、人手不足に対応
「Meally」の開発を担当した近藤氏
「Meally」の開発を担当した近藤氏
給食業界では、受発注だけでなく、献立作成を支援するシステムの開発も進んでいる。

新潟県を中心に、医療・福祉施設や保育園など約100施設で給食サービスを提供する日本フードリンクは5月18日、献立作成支援サービス「Meally(ミーリー)」を開始した。

同社は、現場の栄養士の声を基にシステムを自社開発した。使用食材や栄養価、過去の献立データを取り込み、条件を入力すると、1カ月分の献立案を約10分で自動作成する。


既存の栄養管理システムを入れ替える必要がなく、条件を満たさなかった献立や、その理由を一覧で示す機能も設けた。生成AIを使い、自然な文章で献立の修正を指示できるほか、アレルギー対応、治療食、禁食などの個別献立を作る有料機能も用意している。

同社によると、実証実験では、高齢者施設で約10時間かかっていた献立作成が2~3時間に短縮した例や、保育園で作成した約50の献立のうち、修正が平均5献立程度で済んだ例があったという。

一方、献立はシステムが完成形を自動的に確定するものではない。設定条件を満たしていない部分を表示し、最終的には栄養士が確認、調整することを前提としている。

開発を担当した日本フードリンクDX推進部の近藤勇希部長は、「献立作りに費やしていた時間を減らし、利用者の要望を聞くなど、現場との連携に時間を使えるようにしたい」と話す。
給食業界でDX進む 受発注や献立作成を効率化、人手不足に対応
味の素と協働開発した献立自動生成サービス「AI献立プランナー」
味の素と協働開発した献立自動生成サービス「AI献立プランナー」
カイテクノロジーも5月11日、栄養・給食管理ソフト「Mr.献ダテマンWeb」に、味の素と共同開発した「AI献立プランナー」を追加した。

給食の献立作成では、栄養基準、食品構成、原価、品数、食材の重複、味の組み合わせ、季節感など、複数の条件を同時に考える必要がある。

「AI献立プランナー」は、こうした条件を踏まえ、最大で数カ月分の献立案を自動生成する。料理を1品差し替える場合には、前後の日の食材との重複を考慮しながら、栄養価や原価が近い料理を候補として示す。

味の素が保有するアルゴリズムや操作画面の技術を採用し、施設ごとの条件に合わせて内容を調整できるようにした。味の素は、将来的な海外展開も視野に、一部の海外法人と活用の検証を進めるとしている。


給食業界ではこれまで、施設ごとに異なる運用や、栄養・安全管理上の条件の多さが、デジタル化を難しくしてきた。今回の3事例はいずれも、既存の業務を一律に置き換えるのではなく、現場の作業方法や専門職の判断を残しながら、入力や献立案作成などの定型業務を減らそうとするものだ。

給食現場の人手不足が続く中、デジタル化で生み出した時間を、安全管理や利用者への対応にどこまで振り向けられるかが、導入効果を測るポイントになりそうだ。
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