2026年4月30日、大阪市のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」が、公式サイトに異例の注意喚起を掲載した。
SNSなどで、パーク内を案内するツアーと称した偽プライベート・ツアーが確認されている」

 つまり、USJ内で無許可で有料ツアーガイドを催行する業者の存在を認めた格好だ。


 だがUSJだけではなく東京ディズニーランド(TDL)でも、同様の闇ツアーがすでに動いている。そしてTDLを運営するオリエンタルランドは小誌の取材時点まで、その実態を「把握していなかった」という。

公式の半額で横行する「ディズニー闇VIPツアー」。中国SNS...の画像はこちら >>

一見すると正規のツアーに見えるが

 中国版インスタグラム「RED(小紅書)」を開くと、USJとTDLに関連するツアー広告が大量に並んでいる。TDLは公式サービスとして、専属ガイドによる「プライベートVIPツアー」(44万円~66万円)や宿泊付きの「バケーションパッケージ」を提供しているが、それに酷似した名称の非公式ツアーが、中国人旅行者向けに堂々と販売されているのだ。

 投稿を眺めると、『东京迪士尼VIP8小时平替(東京ディズニーVIP8時間ツアー)』『Vacation PACKAGES 东京迪士尼(バケーションパッケージ東京ディズニー)』のほか、公式にすら存在しない『东京迪士尼全家桶套餐(東京ディズニーファミリーパッケージ)』なる商品まである。コメント欄には「大人2名子供1名でいくらですか」「夫婦2名で予約したいです」という書き込みが絶えない。

 さらに投稿にはディズニーキャラクターや園内写真、公式ロゴまで無断使用されており、一見すると正規のツアーに見える。しかし実態は、TDLとは無関係の中国系業者が運営するものだ。無論、ディズニー側は公式サイトで、園内での営利活動・商業目的の撮影・サービス提供を明確に禁じている。

 利用者側も、TDL側の公認ツアーであると勘違いして申し込んでいる可能性もあるように思える。

公式ツアーの約半額で中国人観光客のニーズに完全に応えるパッケージを提供

公式の半額で横行する「ディズニー闇VIPツアー」。中国SNSで堂々販売も、オリエンタルランドは“意外な回答”
画像は当然無断使用。超特大の著作権リスクも何のその
 業者のSNSプロフィールを確認すると、いずれも中国国内に拠点を置く旅行会社だった。記者が実際に接触した。

 内モンゴル自治区の業者Aは「東京ディズニーVIP8時間」プランを販売していた。「大人2名・子供1名で合計12,388人民元(約30万円)。
ホテル送迎、パークチケット、ベテラン専属ガイド、アトラクション優先入場、パレード鑑賞、食事付きショーレストランS席込みの完全フルパッケージです。公式ツアーより大幅にお安くなっています」。公式に存在しないホテル送迎まで組み込み、さらに価格まで下回るという内容だ。業者はその後、詳細をウィーチャット(中国版LINE)へと誘導してきた。

 深圳市の業者BはVIPツアーに加え、「VP(バケーションパッケージ)」も扱っていた。「1泊2日で公式ホテルに宿泊しながら、1日はランド、もう1日はシーを楽しめます。大人2人子供1人で16,500元~29,000元(約38万~67万円)。追加オプションとして1日1,900元(約4万4,000円)の通訳ガイドも付けられます」。記念撮影や子守りにも対応可能だという。TDL公式が44万円からのVIPツアーで提供しているサービスを、ほぼ半額以下のコストで代替するのである。

 まさに家族連れが抱えるあらゆる不安を、ひとつひとつ潰すように設計されていた。

 こうした闇ツアーが需要を掴んでいる背景には、中国政府による日本への団体旅行自粛要請がある。
団体ツアーが組めないため、家族連れの個人旅行が増加した結果、言語の壁やパーク内の複雑な導線に不安を感じる旅行者が、中国語対応のガイドサービスへ流れるのはある意味で自然の帰結とも言える。皮肉なことに、政府の規制が闇ビジネスを育てている構図になってしまっている。

 ある業者の宣伝文句は、このように書かれている。

「ピーク時の混雑を避け、1日に10以上のアトラクションを体験可能。あてもなく歩き回るより5時間以上長く楽しめます。子守りや緊急対応も、中国語で迅速に対処します」

 特に子守りサービスへの反響は大きいようで、親が休んでいる間に子供とアトラクションに並ぶ、ベビーカーを押して食事をさせるといった対応が重宝されているという。公式ツアーには存在しない「痒いところ」を、ピンポイントで突いている形だ。

 そして、皮肉なことにその痒いところを生み出しているのも、外国語対応が追いついていないテーマパーク運営の現実といえる。

公式の半額で横行する「ディズニー闇VIPツアー」。中国SNSで堂々販売も、オリエンタルランドは“意外な回答”
園内で子守りをする様子をアップしてアピールする業者も


TDL側は「見つけ次第対処」

公式の半額で横行する「ディズニー闇VIPツアー」。中国SNSで堂々販売も、オリエンタルランドは“意外な回答”
記者が客を装って問い合わせると、「今日はもうパークから出ちゃいました」と返信
 実際に稼働中の個人業者も確認できた。パーク内での有料撮影を請け負うという業者に依頼を装いウィーチャットで連絡を入れると、「今日はTDL内でガイド中なので明日以降の対応になります。有料での写真撮影くらいでしたら対応できるかもしれません」と返信があった。

 別の業者は「自分はガイド中で手が離せないが、近くに仲間がいるので連絡してみる」と言い、その後「忙しいようで連絡がつかない」と送ってきた。
今回コンタクトした7業者のうち少なくとも3業者が、取材当日にTDLまたはディズニーシーで稼働中だったとみられる。しかも、同業者同士で連携している様子すら窺えたのであった。

 こうした闇ツアーは、道路運送法・旅行業法・商標法など複数の法律に抵触する可能性があるが、摘発は容易ではない。ガイドは中国語で会話しているため、傍目には家族や友人グループとの区別がつかない。

 SNS上のツアー動画を確認しても、ガイドが随行する家族グループと普通の家族旅行を外部から区別することはほぼ不可能だ。万が一、注意をしても「家族です」「友達です」と言い逃れもできてしまいそうだ。

 さらに、いずれの業者からも、ガイドツアーを希望する場合は前日までにウィーチャットで予約・決済を完結させるよう指示があった。業者にとっては、海の向こうで商売をしているようなものであり、取り引きが中国のプラットフォーム上でクローズドに完結する以上、日本側が実態を把握するのは容易ではないだろう。

 一連の状況について編集部がオリエンタルランド広報に問い合わせると、「実情については把握していなかった。外部業者による園内での営利活動は一切禁止しており、発見次第キャストが注意喚起をしていく」と回答した。
 
 今後、TDLもUSJと同様の対応を迫られるのは時間の問題とみられるが、はたしてどのような策を講じるのか注目される。

<取材・文/SPA! ディズニーランド闇ツアー取材班>
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