「住みたい街ランキング2025」広島県版が発表された。前回2023年の調査以降、2024年3月には新サッカースタジアム「エディオンピースウイング広島」、2025年3月には広島駅の新駅ビル「minamoa(ミナモア)」が開業を迎え、顔つきを変えながら賑わいを増す広島。
広島駅が不動の第1位! 新駅ビルが開業し、エキキタには新病院の計画も

「住みたい街(駅)ランキング」で、毎回1位を獲得しているのが広島駅だ。
2025年3月に開業した新駅ビル「minamoa」には、ホテルやシネコンのほか、飲食、ファッションなど200を超える店舗が入り、中四国や広島初上陸の店も多い。各種のイベントにも利用できる9階屋上の「ソラモア広場」や街を見下ろす7階から9階の大階段、ビル内の各所に設けられたシーティングスペースなど、アフター5や休日だけでなく、普段の移動の待ち時間にも、さまざまなスタイルで滞在を楽しめる施設になっている。
また、駅ビル2階には路面電車のホームが設けられ、同じく2階にメイン改札口があるJRとの乗り換えはかなりスムーズになる予定だ。車両は駅前大通に新たにつくられる「駅前大橋ルート」を通り、高架の形で駅ビル2階に乗り入れる。ダイナミックな吹き抜けのホームフロアは、広島の水面を表現したという反射光が印象的なアトリウム空間に仕上がっている。現在は工事中で、ホームの供用開始は2025年8月3日の予定だ。

路面電車が駅ビル2階に乗り入れるイメージ(画像提供/TOUCH MATCH HIROSHIMA 実行委員会)

建設中の路面電車ホームに試運転車両が入る様子(2025年6月撮影/西村祥子)
一方、広島駅新幹線口側のエキキタエリアには、県立広島病院・県立二葉の里病院(旧JR広島病院)・中電病院・広島がん高精度放射線治療センター(HIPRAC)の4つの医療機関を統合した新たな病院が計画されている。病床数は約1000床、診療科数が41科にも及び、ER(救急外来)併設の小児救命救急センターも開設されるという。

広島駅北口高度医療・人材育成拠点 完成イメージ(2030年度開院予定)
マンションやホテル、温浴施設などを備えた30階超えの複合施設の建設も進んでいるほか、駅前広場に面したJR西日本広島支社ビルの跡地には、広島のプロバスケットボールチーム・ドラゴンフライズの新アリーナを検討する動きもあり、広島駅周辺は今後もさらに盛り上がりを見せそうだ。
住みたい自治体では、中心部での再開発が続く「広島市中区」が1位に
住みたい自治体を聞いたランキングでは、広島市中区がこちらもダントツの1位。2位には広島駅を擁する広島市南区。

1位の広島市中区では、市内最中心部からほど近いエリアでの再開発が大きく進んでいる。
2023年に旧広島市民球場跡地が「ひろしまゲートパーク」として生まれ変わったのを皮切りに、2024年には新サッカースタジアム「エディオンピースウイング広島」と、広い芝生広場や飲食店などの商業施設を含む「ひろしまスタジアムパーク」が開業。2025年春にも、広島県庁前の旧駐車場スペースや広島城三の丸エリアに新たな商業施設が開業した。
2025年秋には「新生『パセーラ』」がオープン予定。新たにシェア型フードホールや都市型水族館が誕生する予定となっており、街なかのグルメや遊びの選択肢がどんどん増えていく。さらに、広島駅前への移転が決まっている広島市中央図書館や、2026年に閉園予定のファミリープールの跡地など、活用を検討している施設もあり、今後さらなる開発が続くとみられる。

ひろしまゲートパークでは週末を中心に各種イベントが行われるほか、飲食店やジム、アウトドアショップなどが入る商業施設もそろう(写真撮影/古石真由弥)

広島のプロサッカーチーム、サンフレッチェ広島の新たな本拠地となった「エディオンピースウイング広島」(写真撮影/古石真由弥)
ちなみに、住みたい街(駅)ランキング3位の横川や、5位の新白島(しんはくしま)は「ひろしまスタジアムパーク」に向かう人が利用する駅でもある。スタジアムパークまで徒歩圏内で、気軽に街なかに出かけられるエリアだ。
広島市中区にある新白島駅は、アストラムラインとJRの乗り換えができる駅として、2015年に開業。駅のある白島は広島城の北に位置し、かつて武家屋敷も多かったエリアで、現在でも城北通りにはマンションが立ち並び、大通りを避ければ静かな住宅地が広がる。また川沿いの桜が見事なほか、遊歩道も整備されていて、散歩やジョギングを楽しむ人も多い。

マンションが立ち並ぶ城北通り(写真撮影/古石真由弥)

緑豊かな旧太田川沿いの遊歩道(写真撮影/古石真由弥)
大学とも提携しながら未来を見据える街。駅6位「西条」~東広島市
駅ランキングでは、広島駅以下、多くの駅が昨年と同様にランクインした形となっているが、その中でわずかながら順位を上げたのが6位の西条駅と8位の海田市(かいたいち)駅。それぞれワンランクアップとなっている。
西条駅は酒づくりの街・西条の玄関口だ。西条駅から広島駅まではJRで約40分。2023年に東広島安芸バイパスが開通したことで、広島市内への道路アクセスも向上しており、電車でも車でも十分通勤圏内といえる。
西条駅から広島大学方面に整備された「ブールバール」沿いや、山陽自動車道 西条ICから延びる国道375号線沿いには商業施設も多く、買い物に便利な一方で、中心部を離れれば自然も豊かに残る。そんな暮らしやすさもあって、東広島市は県内でも数少ない人口増加傾向の街となっている。
また、市内には広島大学をはじめ4つの大学があり、産官学連携など先進的な取り組みも多い。東広島市では「次世代大学園都市構想」を策定し、広島大学・民間企業とタッグを組んで街づくりを進めている。

広島大学方面からブールバール(中央)を望む(撮影/朝比奈千明)

大型バスと連節バスを隊列走行させる、公道での自動運転実験の様子(画像提供/東広島市)
生活・交通利便性が高い一方で、豊かな自然を感じる風景も。駅8位「海田市」~海田町
8位にランクインした海田市駅は、JRの山陽本線と呉線の2路線利用ができ、広島駅からは3駅、約10分と近い。街を横断する国道31号線沿いを中心に、スーパーや飲食店、ホームセンターなどが並び、暮らしに便利な街といえるだろう。一方で、町内を流れる瀬野川沿いを中心に、四季を感じる自然も多く残り、川沿いでは七夕祭りなど、地元の祭りでも盛り上がる。暮らすのにちょうどいい規模感の街だ。
海田町の町役場は2023年に場所を移して建て替えられ、万が一の水害に備え役場の主要な機能を2階以上に集約。町の防災拠点としての機能を強化した。町内には、健康増進のための設備や講座がそろう福祉センターもあり、高齢者福祉への評価も高いという。
さらに、JRの踏切が市街地を分断している現状を緩和し、周辺交通の円滑化を図るために、JR路線を高架化する計画も進行中。時期は未定だが、完成すれば今後さらに暮らしやすくなりそうだ。

2023年に完成した海田町役場(撮影/古石真由弥)

JR路線高架化の事業イメージ(画像提供/広島市)※事業のイメージ図であり、実際とは異なります。
穴場の街!? 商業施設が充実した大町・緑井・下祗園~広島市安佐南区
ランキングを20位まで広げて見てみると、TOP10同様に前回に近い顔ぶれの中に、ランクアップを果たしている駅がいくつかある。中でも大きくランクアップしているのが広島市安佐南区にある大町駅で、周辺の緑井駅や下祗園駅もランクアップを果たしている。
下祗園駅はいまや巨大なショッピングモール「イオンモール広島祇園」のある街として定着しているが、古い街で道路幅は狭く、以前は学生の街という雰囲気もあった駅だ。
緑井駅にはイオンモールができる以前からフジグランなどの商業施設があり、周辺の幹線道路沿いにも広い駐車場を備えた商業施設が充実しているほか、山陽自動車道の広島ICも近い。
そして、大町駅は前述の新白島駅同様、アストラムラインとJRの2線利用ができる駅で、周辺の山手に広がる住宅団地などへ向かうバス路線のターミナルにもなっている。イオンモールの利用圏であり、かつ、平坦地が広がり、道路幅が比較的広いことも人気の理由だろう。加えて、武田山や太田川水系の豊かな自然が身近にあることも、ほかの注目エリアと同様だ。
大規模な再開発案件が次々と形になり、新しい風景が生まれている広島。中心部での過ごし方が変化していく中で、広島で「住みたい」と感じる街には、交通利便性や買い物環境の充実、適度な自然環境も欠かせない条件の一つのようだ。街に出かける楽しさや、家の周りでのんびり過ごす休日など、暮らしを豊かにしてくれる街選びのヒントが、このランキングの中にあれば幸いだ。
そして、まだまだ続く広島の再開発の行方には、期待を持って今後も注目していきたい。
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