●その家庭だけに伝わる秘伝の味、懐かしい味。『食楽web』のグルメライターのおばあちゃんが作る「ちらし寿司」は、酢が苦手な人でもおいしく味わえる一風変わった“醤油ご飯”のレシピです。
3月3日は桃の節句、ひなまつりですね。旧暦では桃の花が咲く頃、娘の厄払いとして、健やかな成長と幸せな人生が送れるようと願ったお祝いの行事です。
我が家のひなまつりのごちそうと言えば、ちらし寿司とヨーグルトムースでした。大人になった今、なぜか誕生日よりも、このごちそうが印象に残っているのです。
今年は我が子にも同じものを作りたい! と意気込むものの、我が子は偏食気味。魚や野菜が苦手で、味付けも基本、塩以外は苦手。酸っぱいものは受け付けず、肉も調理の仕方によって食べられないことがあります。
ちらし寿司に入っているものを考えると、卵以外は食べられなさそう……。母に知恵を求めると、「ばあちゃんが作ってくれたちらし寿司は醤油ご飯だったのよ」という衝撃の事実が判明。ということで、今年はおばあちゃん流の「ちらし寿司」を用意してみました。
酢が苦手な人も、偏食気味の子供も喜ぶ「醤油ごはんのちらし寿司」の作り方

なぜ醤油ご飯だったのか理由を聞くと、「酸っぱいものが苦手だった」からだそう。作り方もいたってシンプルで、お米を炊く時に醤油を入れるだけです。
◎材料(4人分)
・米……2合
・昆布醤油……大さじ2
・水……お使いの炊飯器に合わせて
祖母の家で使っていた醤油は、「昆布醤油」が基本。もしなければ、昆布を1枚浮かべてご飯を炊いてみてください。

炊きあがりは、底に香ばしいおこげができて見るからにおいしそう! 醤油の香りがふわっと香り、食欲をそそります。

ご飯が炊けたら、上にのせるトッピングを用意します。今回はおばあちゃんの味にならって、魚肉ソーセージ、錦糸卵、キュウリ、紅ショウガ。紅ショウガに合わせて、それぞれ千切りにしました。
甘く煮たシイタケや干瓢は母たち兄妹も苦手だったようで、このラインナップだったそう。「家庭料理なんだから、こうじゃなきゃいけないってことないのよ」と母に言われ、肩の力が抜けた気持ちでした。

盛り付けの準備をしていたところに、興味を持った子どもがやってきました。「これは、港のおばあちゃん(海の近くに住んでいるひいおばあちゃんの意)のレシピだよ」と言うと、快く手伝ってくれました。醤油ご飯でも彩りが良くなるよう、食材で元気な色を出すよう、工夫していたようですね。

醤油ご飯にトッピングを散らしたら、完成! 醤油ご飯は香ばしく、適度に味がついているので、卵や魚肉ソーセージなど他の食材とも合っています。あと、紅ショウガが意外なアクセントで良い! 母も紅ショウガが嫌いだったけど、チラシ寿司に入っているのは好きだったとのこと。
「このちらし寿司、もっと早く知りたかったなぁ」。確かに茶色いご飯なので、食材の彩りでカバーする必要がありますが、味が絶妙! 海苔巻きや手巻き寿司にも応用できそうです。
ひな祭りのデザートは簡単&美しい「菱餅ヨーグルトムース」

デザートは菱餅をイメージした「ヨーグルトムース」。今回は動物性の生クリームを使いましたが、当時の味を再現するなら生クリームは植物性または、牛乳と半々にするとさっぱりとした味になります。
◎材料
・ヨーグルト……400g
・生クリーム……200ml
・砂糖……100g
・ゼラチン……10g

色付けは母たちのレシピ通り、食用色素を使いましたが、いちごジャムや抹茶などで代用しても良さそう。その場合は、砂糖の量を調整してみてください。グラスに一段ずつ冷やし固めたら完成です(冷凍庫を使うと早くできます)。

ワイングラスで作るのも当時のまま。当時は大人になったような気分でワクワクしたものです。子どもにも響いたようで、ときおりグラスを眺めてはスプーンですくって食べていました。
「ちらし寿司、成功しました」と母に写真付きで報告すると、「よかったね、大きくなったら何でも食べるようになるから心配ない」とニコニコマークのスタンプが返ってきました。
(撮影・文◎亀井亜衣子)