●コンビニでよく見かける外国人スタッフ。たまに見かけるものすごく仕事がデキる外国人スタッフは、一体どうやって仕事を覚えているのか?

 都心部を中心に、コンビニ各社では多くの外国人スタッフが働いています。

こういった外国人店員さんたちの一部には、ただただ「すごい」としか言いようがないほどあらゆる業務をテキパキこなす“スーパー店員”が存在します。その様子は、衝撃を受けます。

 母国とは文化も言語も異なる日本で、外国人スタッフたちはどのようにコンビニの複雑な業務を覚えているのか? また、彼らの中で、日本のコンビニ食はどんなものが人気なのか……? このあたりの疑問について、主にローソンのスタッフ派遣を行う会社『ローソンスタッフ』の藤井勝さんに話を聞いてきました!

日本語検定一定レベル以上の外国人に絞って採用

仕事がデキすぎるコンビニ外国人スタッフはいかにして生まれるのか? その謎を中の人に聞いてみた
ローソンスタッフの藤井勝さん

 冒頭で触れた『ローソンスタッフ』は、ローソンとは別経営の事業体です。ローソンスタッフの母体となる会社が、ローソンのフランチャイズ店を全国で約40店運営していることもあり、オペレーション面でのノウハウを確立。後に、ローソンと協業し派遣会社となりました。そこで、外国籍の方も含めてスタッフをローソンに派遣しているのだそうです。

「ローソンスタッフの関連会社がベトナムにあることから、まずベトナム人留学生の雇用が多く、そして最近だと中国人留学生の雇用も多くなりました。

年齢層は20~30代、男女比では女性60%、男性40%くらいの割合ですね。

 こういった外国人の方が日本に来る目標の多くは『日本のサービスを学んで自国で飲食店を開きたい』『ホテルでお仕事をしたい』といったものが多く、その目標の手前の段階でコンビニスタッフを経験することが多いように感じています」(藤井さん)

 ただし、今のコンビニは商品やサービス点数が実に多彩で、結果的に業務は多岐にわたります。通常のレジ打ち、陳列だけでなく調理、掃除など。それをテキパキこなす外国人スタッフ。その採用の基準はどうなっているのでしょうか?

「まず日本語検定の一定レベル以上の外国人の方に限って応募いただいています。そして実際の面接では、『どれほど日本語が喋れるか』『日本語でのコミュニケーションがどれほどできるか』などを確認させていただき、条件をクリアした方を採用しています。

 コンビニという業態は、お客さまからさまざまな問い合わせや希望を受ける場所。特にローソンはサービス面でのレベルが高いチェーンです。仮に日本語が堪能だったとしても、日本人特有のコミュニケーションの取り方もわかっていただける方でないと採用に至らないこともあります。お客さまから見て『乱暴な対応だ』と思われてしまうことがあっては絶対にいけませんので」(藤井さん)

18時間~最大5日間の研修を経て店頭へ

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30年前のローソンとはレジの仕組みも商品点数もサービスもまるで変わっていることを実感

 私ごとですが、30年以上昔の学生時代にローソンでアルバイトをしていた経験がある筆者。ここで実際に藤井さんから、日頃、外国人スタッフにトレーニングしているという「レジ打ちの研修」を受けましたが、レジが当時のものと変わっていて、慣れるのにけっこう時間がかかりました。

「面接などをクリアした外国人スタッフ希望者の方の研修は、だいたい6つのステップに分けて実施しており、平均18時間ほどの研修を経て、実際に店頭に立つ方が多いです。一方、なかなか覚えられない外国人の方でも最大5日間くらい研修を受ければ、そのまま店頭に立てるようになります」(藤井さん)

「雨が降っているから今日は行きません」

 研修を一定時間のトレーニングでマスターし、店頭に立てるようになる外国人スタッフ。その一方、雇用後に日本人の想像を超えたところで、ギャップや問題が生じることもあるそうです。

「働く文化の違いですね。この点も研修でしっかり覚えていただくようにしていますが、たまにあるのが『雨が降っているから今日は行きません』というもの。ベトナム人の方に多いのですが、ベトナムでは雨が降るとお店を閉めるケースが多いようで、日本に来ても『雨ならお休みだろう』と思う方が多いようです。

 また、ボールペンの色も諸外国で微妙に異なり、アジア圏の多くの国では“青色のボールペン”を使うことが多いようです。でも、日本ではボールペンと言えば“黒”ですよね。つまり青色のボールペンでお客さまに何かを書いてお渡しした場合、『なんか変だぞ。

なぜ青色なんだ』と思われてしまいます。こういった働く文化・慣習の違いも、研修ではしっかり覚えていただいています」(藤井さん)

 確かに日本で普通に生まれ育った筆者としても、ボールペンは青字がデフォルトといった細かい外国の慣習は想像しにくいものがあります。こういった点も、ローソンスタッフは最大の配慮と注意をもって研修しているそうです。

外国人スタッフに人気の「コンビニ食」は?

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外国人スタッフに人気の「コンビニ食」とは!?

 さて、ここでもう一つ気になるのが外国人スタッフにとっての「コンビニ食」です。彼らにとっては、日本のコンビニには食べ慣れない食べ物も多そうですが、特に人気の商品は何でしょうか?

「外国人店員さんの間で一番人気は『サラダチキン』です。さまざまな味付けのものがあり、母国の料理の味に近いものもあるのか、多くの方が好んで食べられています。また、ローソンでは、店内調理のお弁当やおにぎり、サンドウィッチなどを提供する専用キッチンを設けた『まちかど厨房』がある店舗があります。

この『まちかど厨房』の弁当類も彼らに人気で、こちらでは日本的な弁当類などが好まれているようです」(藤井さん)

仕事がデキすぎるコンビニ外国人スタッフはいかにして生まれるのか? その謎を中の人に聞いてみた
(左)「国産サラダチキンプレーン」。(右)「炭火焼サラダチキン旨辛」

 外国人スタッフに人気だという「サラダチキン」のうち、「国産サラダチキンプレーン」「炭火焼サラダチキン旨辛」を筆者も食べてみました。「プレーン」は、チキンの旨みを優しく引き出した一品どんな調味料・ドレッシングにも合いそうです。

 また、「炭火焼サラダチキン旨辛」は、旨みと辛味の双方をややスパイシーに「サラダチキン」に反映した一品どことなくアジアの食堂を感じさせる味わいで、外国人スタッフにウケそうに思いました。

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「まちかど厨房」の「海鮮かき揚げ丼」[食楽web]

 さらにローソンの「まちかど厨房」の「海鮮かき揚げ丼」も食べてみましたが、店内で炊いたご飯と、えび・いかが入った海鮮かき揚げとすっきりとした味わいの醤油たれがマッチし実に美味。「日本ならではの味であり、しかもご飯が美味しい」といった点が、多くの外国人スタッフの支持を集めているようにも感じました。

研修と合わせて「働きやすい環境づくり」も積極的に行う

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ローソンスタッフ公式サイトの「外国人スタッフの紹介コーナー」より。「継続して働いていただくためにも『働きやすい環境作り』も行なっていきたい」と藤井さん

 藤井さんによれば、「今後のコンビニは、外国人スタッフの力を借りることがより増えていくだろう」と言います。最後に今後にかける思いも伺いました。

「お客さまのニーズにできる限りお応えするのがコンビニです。今後は、外国人の方のお力を借りる機会がより増えていくと思っています。だからこそ研修と合わせて、外国人の方にとって『働きやすい環境づくり』を積極的に行い、できるだけ長く継続して働き続けていただけると良いなと思っています」(藤井さん)

まとめ

 外国人スタッフの確保や研修においては、最大な配慮を行い接し、それらが結果的にローソンを利用する顧客の満足度につながるのだろうと思いました。今後、ローソンをはじめコンビニを利用する場合は、外国人スタッフの努力や思い、そしてここに至るまでの研修スタッフの思いを想像してみると、そのコンビニと外国人スタッフをさらに身近に感じられるかもしれません。

(取材・文◎松田義人(deco))

●DATA
ローソンスタッフ
https://lawsonstaff.co.jp/