2010年代の台湾ブーム以降、台湾料理の美味しさにハマる人が続出しました。そんな中、数多くある台湾料理の定番メニューの中でも、まだそう多くの日本人が知らない独特のメニューがあります。
短めに切られたお米由来のビーフンを太らせたような麺=米台目を、シンプルなスープと一緒にいただく一品ですが、お米由来なのに柔らかく、そしてもたれず、軽く食べられる麺料理です。米台目の口当たりの軽さから甘味に使われることもあり、台湾ではかき氷などに添えられることもあります。

この米台目、筆者は台湾に行くたびに1食は必ず口にするのですが、しかし、いわゆる魯肉飯のように、多くの食堂で扱っているメニューではありません。米台目を作るには、相応の手間暇がかかることから、一部の専門店でしか口にすることができないからです。
そこで今回は、手作りの米台目がいただける台北・萬華の老舗『伍條通手工米苔目』で、その味わいの深さをご紹介します。
台北屈指の下町にあるソウルフード・米台目専門店

『伍條通手工米苔目』がある萬華エリアは、台北屈指の下町です。エリア内には280年以上の歴史を持つ艋舺龍山寺があり、周辺には古き良き台北の風情が残る市場や商店街などがあります。
その一角で60年以上営業を続ける『伍條通手工米苔目』は、米台目を看板メニューに掲げながら、さまざまな庶民的な台湾料理を提供しており、地元ではよく知られたお店です。

店主の阿宏さん(日本的に言えば、『宏ちゃんさん』)は、この町に生まれた根っからの地元っ子。この阿宏さんが守り続ける“地元の味”・米台目は、まさに萬華のソウルフードと呼ぶにふさわしい一品です。
日本では口にできない米台目を前に「台湾にいる」ことを改めて実感

『伍條通手工米苔目』は、台湾の食堂に多い「厨房の脇を通って、奥の店内に進む」構造です。その厨房でチラッと覗く食材の数々に、テンションが上がる人は多いと思いますが、ここで看板メニューの米台目、そしてスープやトッピングの具材も目にし、さらにテンション爆上がりに。

さっそく「手工米台目」(35元)オーダーをすると、ほんの1分ほどで着丼しました。

さっそくいただいてみると、優しくコク深いスープの味わいに、米台目の弾力弱めのフニャッとした麺が実によく合い、これがクセになります。
またトッピングのもやし、ニラのシャキシャキした食感と旨みもアクセントとなり、見た目以上にサッパリ、ペロッと美味しくいただけます。「そうそう、これこれ!」。
日本ではほぼお目にかかることができず、台湾でも魯肉飯ほどどこでもいただけるメニューではない特別なメニュー・米台目との再会に「台湾に来ている」ことを改めて実感する筆者でした。
米台目以外も絶品揃いの「伍條通手工米苔」

前述の通り、「伍條通手工米苔」は看板メニューの米台目の他に、さまざまな台湾料理のメニューが充実しています。筆者はサブメニューとして「蒜泥白肉」(ニンニクダレの豚バラ肉・70元)、「肝連」(豚レバー・70元)などもオーダー。
前者はニンニクたっぷりのタレと千切りの生姜やネギと一緒にいただく料理。そして「肝連」はしっかりと茹た豚レバーを分厚くカットし、特製ダレでいただく一品で、程よいクセがヤミツキになる一品。これらもまた、噛み締めるたびに「日本にはない台湾の味わい」を実感でき、大満足の品々でした。
地元民向け飲食店で味わう台湾ソウルフードは唯一無二の旨さ

冒頭でも触れた通り、米台目をはじめとする庶民的な台湾料理は、魯肉飯ほど「どの食堂でも出されている」わけではありませんが、地元民向けの飲食店では、目にする機会は多いものです。こういった地元客向けのソウルフードにこそ、台湾の食の醍醐味はあると思います。
また、『伍條通手工米苔目』のように、古くから続く下町で、地元の人々に愛され続ける店であれば、なおのこと「本物の味」に出会える機会が増えるはず。
(取材・文◎松田義人(deco))
●SHOP INFO

伍條通手工米苔
住:台湾・台北市萬華区貴陽街二段142號1楼
営:7:30~19:30
休:日