麻婆豆腐」といえば、中国料理の定番メニューですが、近年の激辛ブームや気鋭の四川レストランの興隆に牽引されて、本格派を求める人々が急増。ここ数年、一大ブームとなっています。

 今回は、東京都内でこれだけは食べておきたい、至極の名店の麻婆豆腐をご紹介します!

蜀郷香(シュウシャンシャン)|四谷三丁目

ブーム加速中! 東京でいま食べておきたい至極の「麻婆豆腐」4選

 本場さながらの味で麻婆ファンを痺れさせているのがここ『蜀郷香』。ご主人の菊島弘従シェフは、四川料理の巨匠・趙楊氏の下で10年間修業を積んだ実力の持ち主です。

ブーム加速中! 東京でいま食べておきたい至極の「麻婆豆腐」4選

「麻婆豆腐で大切なのは、豆腐に味と香りと熱を閉じ込めることです」とは、菊島シェフ。そのためには、単純なことだが、あらかじめ豆腐を塩湯で温めておくことが肝心と語る菊島さん。

 それにより豆腐の余分な水分が抜け、熱が自然に入っていくという寸法。また、水溶き片栗粉は、薄めのものを数回に分けて入れるのもポイントのひとつです。ゆっくりととろみをつけることで、豆腐にもじんわり味がなじみ、麻と辣のせめぎ合うような辛さの中、豆腐本来の旨みがジワリと舌に広がる一品が生み出されます。これこそが四川、否、『趙楊』直伝の麻婆豆腐です。

●SHOP INFO

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住:東京都新宿区舟町5-25 TSI FUNAMACHI 2F
TEL:03-3356-0818
営:18:00~22:00
休:不定休

MASA'S KITCHEN(マサズ キッチン)|恵比寿

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 麻婆豆腐って、どちらかといえば赤黒いイメージですが、「白っぽく作ってみたらどうなんだろう?」という、シェフの鯰江真仁さんの悪戯心(?)から生まれた傑作が、ご覧の「海鮮の白麻婆豆腐」。中華の基本は外すことなく、和や洋のエッセンスをさりげなく取り入れた新感覚の中国料理で評判の『マサズキッチン』らしいアイデアあふれるひと皿です。

ブーム加速中! 東京でいま食べておきたい至極の「麻婆豆腐」4選

 太白胡麻油で豚挽肉を炒めたら、スープ、豆腐、海鮮を次々に投入していくのみのシンプルな麻婆豆腐。本来、必須の豆板醤や豆鼓は不使用です。「味つけはナンプラー。これがポイント。

あくまで出来上がりを白くしたいからね」と語る鯰江さん。

 醤油では色が付くし、塩だけでは一味物足りない。そこで思いついたのが、魚の発酵調味料のナンプラーだったそう。魚の旨みが凝縮されているから、海鮮の料理にはぴったりだといいます。辛味は、仕上げに振る自家製辣油。辛さを調節できるので、辛味が苦手な人でも楽しめるユニークな一皿です。

●SHOP INFO

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住:東京都渋谷区恵比寿1-21-13 BPRレジデンス恵比寿 B1F
TEL:03-3473-0729
営:11:30~15:00(LO14:00)、18:00~23:00(LO21:30)
休:月
http://www.masas-kitchen.com/

麻布長江 香福筵(アザブチョウコウ コウフクエン)|西麻布

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 ランチ時には、日本風の甜面醤入り「麻婆豆腐」に四川スタイルの「川味豆腐」、そしてオリジナルの「牛スジ麻婆豆腐」と“麻婆三兄弟”が勢揃いする西麻布『麻布長江』。「最後の晩餐は麻婆豆腐」と熱い“麻婆豆腐愛”を語る店主・田村亮介シェフが作るのは、「ラムとクミンとトマトの麻婆豆腐」。シルクロードの拠点であり、四川料理と羊肉を良く食べるイスラム料理の影響を強く受ける西安の食文化にヒントを得て完成させた一品です。

ブーム加速中! 東京でいま食べておきたい至極の「麻婆豆腐」4選

「イメージはシルクロードの麻婆豆腐」だそうで、ラムとクミンという定番の組み合わせに、トマトや羊肉の一味違う食材を使用。それにより、フレッシュで、従来の麻婆豆腐に比べ後口が幾分軽やかな、どことなくエキゾチックな味わいに仕上がります。

 シェフ曰く「麻婆豆腐は焼く料理」だと語るように、スパイシーな風味を際立たせるために、最初にクミンを炒めることが肝心。絶妙な火加減で香りを油に移し完成する香り豊かな麻婆豆腐です。

●SHOP INFO

住:東京都港区西麻布1-13-14
TEL:03-3796-7835
営:火~金11:30~14:30LO、18:00~22:00LO、土・日・祝12:00~14:30LO、18:00~22:00LO
休:月(※祝日の場合翌休)
http://www.azabuchoko.jp/

赤坂 四川飯店(アカサカ シセンハンテン)|永田町

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 “中華の神様“と呼ばれた陳建民さんが創始者である赤坂の名店『四川飯店』。中国との国交もままならず、中華の調味料も思うように集まらなかった時代に、四川料理を日本に広めたお店。中でも現在、本店の裏メニューとして楽しめる、通称「陳建民麻婆豆腐」は名店の味にふさわしい伝説の逸品です。

ブーム加速中! 東京でいま食べておきたい至極の「麻婆豆腐」4選

「今、店で出しているものには、ピー県豆板醤(ピーシェントウバンジャン/ピーは卑におおざと偏)といって蚕豆(ソラマメ)を発酵、3年以上熟成させた四川の豆板醤を使いますが、陳建民麻婆豆腐に使うのは日本の赤い豆板醤。花椒も花椒油も入れません」と語るのは、鈴木広明料理長。

 麻辣の香りとコクがジワジワとこみ上げてくる「陳麻婆豆腐」に対し、「陳建民麻婆豆腐」は、辛味はあるもののマイルドで優しい味が特徴です。レトルト食品の大本ともなった“建民風日式中華”と言っても過言ではない、日本の麻婆豆腐の原点をぜひ味わってください。

●SHOP INFO

住:東京都千代田区平河町2-5-5 全国旅館会館ビル 5F・6F
TEL:03-3263-9371
営:11:30~15:00(14:00LO)、17:00~22:00(21:00LO)
休:なし
http://www.sisen.jp/

(取材・文◎森脇慶子 撮影◎加藤史人)


※当記事は『食楽』2018年春号の記事を再構成したものです

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