チョコレートといえば食べるものですが、「目で見て楽しむチョコレート」があるのをご存知ですか? ベルコラーデ所属のショコラティエ、ステファン・ルルー氏が手掛ける「ブルーショコラ」は、チョコレートを使って作られたアート作品で、9月10日に日本でエキシビションが開催されました。
素晴らしいアート作品としてのチョコレートですが、実は「カカオ・トレース」認証マークが付いたチョコレートで作られています。
食品における「禁断の色」で自然を表現
今回のエキシビションでは、ステファン・ルルー氏が日本に到着して6日間で作り上げた作品11点と過去に作られた作品10点の写真が展示されました。ルルー氏はフランスのダンケルク在住で、海や自然に溢れた地域に暮らしているそう。そんな暮らしのなかからインスピレーションを受け、空気、水、風、海などの自然をチョコレートを使ったアート作品で表現しています。

最初に見て驚いたのがこの鮮やかな花。これは「SUCCULENTE(多肉植物)」という作品で、実際の植物と見紛うほどの生命力が感じられます。

海の中で優雅に泳ぐエイの群れを表す「RAIE(エイ)」も、もちろんチョコレートでできています。海沿いの町に暮らすルルー氏らしい作品ともいえますね。

形のない波を本物のように表現した「HOKUSAI(ホクサイ)」は、葛飾北斎の浮世絵にインスピレーションを受けたそう。

ほかにも、しずくを表現した「GOUTTES(しずく)」や10数時間かけて完成した「TOURBILLON(渦)」など、彫刻のような作品が会場内には多数展示されていました。


チョコレートの未来を守る認証マーク
今回のブルーショコラは、すべてチョコレートでできているのは最初にもお伝えしたとおりです。チョコレートの原料であるカカオは、アフリカやアジア、中南米の一部の国でしか栽培できません。その多くが家族経営の小規模農園で個々に栽培されており、生産者の生活は貧しく、最低限の生活を余儀なくされているのだそう。

そんな現実を変えるために「カカオ・トレース」というサステナブル・プログラムが誕生しました。このプログラムはカカオ生産者を支援し、農園経営の長期安定に貢献するという取り組みです。現在、コートジボワールに約2000人、ベトナムに約3000人、フィリピンに約2300人、パプア・ニューギニアに約1600人のカカオ・トレース生産者がいるそうです。

具体的には3つの支援をしています。まずはおいしいカカオにするため、発酵マスターによるカカオ豆の発酵および乾燥工程の一元管理です。これまでは発酵状態の良くないカカオ豆を出荷することで安く買い叩かれていたという現実があり、ピュラトス社のポストハーベストセンターで一元管理することで、カカオ豆の品質を高めています。
続いては、栽培技術支援です。栽培手法をトレーニングし、生産性を向上、つまり収穫量を増加させることで、生産者の収入増加を目指しています。
3つ目の支援は、「カカオ・トレース」認証製品を1kg購入すると、10セントドルがカカオ生産者やそのコミュニティに還元される仕組みです。このボーナスを教育への投資やインフラ整備に充てることで、カカオ生産者の収入増加や生活水準の向上につながっています。

このままではカカオの生産者が減り、チョコレートの需要に見合う良質なカカオ豆の供給が難しくなると言われています。これから先もおいしいチョコレートを食べるために、カカオ・トレースの存在を頭の片隅に置いておくといいかもしれませんね。
(取材・文◎今西絢美)
●DATA
カカオ・トレース
http://cacaotrace.com/ja