「旅先で旨いものが食べたければ、タクシードライバーに聞くのが一番」と言います。そこでB級グルメに精通する現役運転手・荒川治さんにイチオシのお店へ案内してもらいます。
今回ご紹介するのは東京・銀座の外れ、東銀座にある『銀座たんめん』というお店です。銀座で深夜、乗車されるお客さんは、高速を利用して帰宅されることも多く、その際、首都高「銀座入り口」を利用するのですが、この店は、まさにその近くにあります。

小さくて目立たないお店ですが「たんめん専科」という言葉が珍しく、「銀座たんめん」という直球な店名も気になります。そこである日、食べてみたら、めちゃくちゃ美味しかったんです。
「たんめん」はパクチーと一緒に味わうのが吉

細長い店内はカウンター10席。内装も昭和のガランとした食堂みたいで、なおかつ、メニューは「たんめん」(800円)と「たんめん・大盛り」(900円)のみ。トッピングもパクチーやバターくらいしかありません。
しかし、ここの「たんめん」は、面白い味変が楽しめるんです。私が券売機で必ず押すのが「たんめん・大盛り」と「パクチー」(200円)。別皿で運ばれてくるパクチーは、木の器にわさ~っとたくさん載っていて、新鮮そのもの。爽やかな香りが漂います。

続いて、白い湯気を上げて「たんめん」が登場。

熱々のスープの中からストレートの細麺を引っ張り上げてすすると、さっぱりとした鶏ガラスープの軽い味わいと細麺の相性が抜群で、しかも私が大好きなタイプの塩味です。
想像通り、白菜の芯の部分はとろけるように甘い。ちょっぴり豚肉が入っていますが、おそらくこれは、スープに豚の甘みを少々加えている程度の存在で、とにかく白菜の美味しさに顔が緩んでしまう「たんめん」なのです。

途中まで食べたら、パクチーを投入します。一気に味が変わり、パクチーの苦味と香りが鶏ガラスープと相まって、さっきまでの「たんめん」とは違うものを食べているように感じます。例えると、ベトナムのフォーのようなイメージでしょうか。

さらに食べ進んだところで、今度は卓上にある「自家製ラー油」を入れます。私は辛いのが好きなのでたっぷりと。

このラー油で「辛いたんめん」を味わった後、さらに卓上の酢もたら~り。

何度か通ううちに店長さんとお話するようになりました。なんでも、子供のころに食べていた昔ながらの「たんめん」を作りたくて、ずっと研究を続けていたんだそうです。それがまさに白菜の甘みが溶け込んだシンプルで奥深い味わいだったそう。
そして昨年1月に『銀座たんめん』をオープンしてからも、最初は具にもやしも入れたりしていたそうですが、白菜メインにすべく省いたそうです。そして白菜も芯の部分や葉の部分によって食感と味わいが違うので、一杯にバランスよく入れるように気をつけているんだそう。
料理は引き算が大事とよく言いますが、まさに『銀座たんめん』は、シンプルにこだわり抜いた中に美味しさが際立ちます。ぜひ味変も含めて楽しんでみてください。
(撮影・文◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:銀座たんめん
住:東京都中央区銀座4-14-3 銀座斉藤ビル1F
TEL:非掲載
営:月~金11:30~15:00 月~木17:00~20:00
休:土日祝
●プロフィール
荒川治
東京都内在住のタクシー運転手。B級グルメ好きが高じて、現職に就き、お客さんを乗車させつつ、美味い店探しで車を回している。中年になってメタボ率300%だが、「死神に肩をたたかれても、美味いものを喰らって笑顔で死んでやる」が信条。