スーパーマーケットのしょうゆコーナーには、たくさんの商品が並んでいます。「こいくち」「うすくち」「さいしこみ」「たまり」「しろ」「丸大豆」「減塩」「だし入り」「生しょうゆ」など……。

そこで今回は、日本にあるしょうゆメーカー1100以上のうち、国内シェア3割を誇る『キッコーマン』を訪ね、しょうゆの分類について詳しく話を聞くことにしました。教えてくださったのはキッコーマン食品(株)プロダクト・マネジャー室しょうゆ・みりんグループの伊藤夏大さん。それではさっそくいってみましょう!
しょうゆの基本! しょうゆには大きく分けて5つのカテゴリーがある

さっそくしょうゆのカテゴリーについて話を聞いてみました。
「市場での分類はまた違うのですが、JAS(日本農林規格)で定められた分類では、「こいくち」「うすくち」「さいしこみ」「たまり」「しろ」という分け方が一般的です。大まかにこの5分類の特徴は以下の通りになります。
・こいくち……日本のしょうゆ生産量の8割以上を占めるもっともスタンダードなしょうゆ。つけ・かけから調理まで万能に使うことができるオールマイティなしょうゆ。食塩分は約16%
・うすくち……素材の持ち味を生かすために、色や香りを抑えたしょうゆ。漢字では「淡口」と表記され、「色が淡い」という意味で、「食塩分が薄い」という意味ではない。食塩分は18~19%とこいくちしょうゆより約2%ほど高い
・さいしこみ……食塩水の代わりにしょうゆで仕込む製法で作られるもの。色が濃く、濃厚な味に仕上がる。高価格帯であることが多く、卓上調味料として刺身や寿司に用いられることが多い
・たまり……食塩分は「こいくち」と同程度である一方、「こいくち」や「うすくち」が大豆・小麦をほぼ等量ずつ用いるのに対し、ほとんど大豆だけで作られるもの。
・しろ……蒸した小麦を主原料にし、炒った大豆を少量用いて麹を作り、低温・短期間発酵させ、うすくち以上に発酵を抑えて作られるもの。江戸時代末期に開発され、比較的新しいしょうゆの一種
これら5つのカテゴリーから、弊社では様々なニーズに合わせたしょうゆを製造・販売しています」(伊藤さん)
日本人が愛する「こいくち」とは?
一口にしょうゆといっても多種多様な種類があることがわかりました。この中でも日本人が好んで使っているのが「こいくち」。キッッコーマン食品が販売している「こいくち」は「こいくちしょうゆ」「特選 丸大豆しょうゆ」「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」などがあります。
「こいくちは、江戸時代以来、関東を中心に発達し、香りと色、味のバランスに優れているのが特徴です。料理としては、つけかけから調理まで汎用性も高く、どのシーンにもマッチするのが人気の一つだと思います」(伊藤さん)
5カテゴリーの他、さらなる技術の進化で開発されたしょうゆも!

他方、市場では前述の5分類以外のしょうゆもよく目にします。「丸大豆」「減塩」「だし入り」「生しょうゆ」などですが、これらは上記5カテゴリーのどこに入るものなのでしょうか?
「『丸大豆』『減塩』『生しょうゆ』の多くがJAS上では『こいくち』に分類されます。また、『だし入り』はJASの基準にあてはまりません。
それぞれの特徴は下記になります。
・丸大豆……原料の大豆は丸のままの大豆を100%使用したもの。大豆の油脂分から得られるまろやかでやわらかな口当たりと深いコク、穏かな香り、深みのある色合いが特徴。原材料名欄には「大豆」と表示される
・減塩(こいくちに分類されるもの)……しょうゆのうまみ、香りはそのままに食塩分をカットしたもの。製造方法はいくつかあるが、キッコーマンの減塩しょうゆは、最初から食塩分を減らしてつくるのではなく、通常のこいくちしょうゆから食塩分を取り除いてつくられる。従って、減塩しょうゆの食塩濃度はこいくちしょうゆの約半分になるが、うまみ成分はほぼ同じ
・生しょうゆ……大豆と小麦に麹菌を混ぜ合わせてつくったしょうゆ麹に、食塩水を混ぜて発酵・熟成させたものをもろみという。
・だし入り……しょうゆをベースに、昆布や魚介のだしなどをしょうゆに合わせたもの。しょうゆがだしの香りやうまみを引き立てる

このうち弊社商品では特に伸長しているのが『だし入り』です。調理用としても使われますが、料理にかけたりつけたりして使われることが多いです。ちなみに回転寿司さんの卓上では、最近は『だし入り』が置かれていることもあります。
また、さらに別カテゴリーでお刺身用の『さしみしょうゆ』、大豆・小麦不使用の『えんどうまめしょうゆ』、フリーズドライでサクサクとした食感の『サクサクしょうゆ』、パウダー状の『パウダーしょうゆ』などもあります」(伊藤さん)
使いたい方法による「逆引き」でしょうゆを選ぶ!

ここまでカテゴリーについて伊藤さんの話をお聞きしましたが、少々頭が混乱しました。実際、キッコーマンのしょうゆは家庭用だけで30種類以上もあるため、自分に合うしょうゆがどれになのかがわかりません。
「同様のご意見を本当によくいただきます。弊社としても課題の一つです。それぞれの商品に対し、違いを出せている自信はあるのですが、情報自体を伝えきれていないことは反省点です」(伊藤さん)
仮に、調理・つけ・かけなどの用途目線での選び方はないものなのでしょうか?
「『さしみしょうゆ』は『お刺身に使うんだ』とわかりやすいですけど、確かに使い方によって適切なものを選ぶのに迷う方は多くいらっしゃるかもしれません。大まかに下記の使い分けで選んでいただければありがたいですね。
・万能的に使われる場合(つけ・かけ・調理など)……こいくちしょうゆがおすすめで、特に今は生しょうゆが多くの方に選ばれております。生しょうゆの特徴である、鮮やかな色・さらりとしたうまみ・おだやかな香り・加熱で際立つ香ばしさがどんな料理にも合います
・素材を活かした調理に特化させたい場合……素材や料理の色をいかしたい炊き込ごみごはんやうどんの場合は、うすくちしょうゆがおすすめです
・つけ・かけに特化させたい場合……お刺身などの場合、赤身は、しょうゆのうまみが豊かな丸大豆しょうゆ、白身にはさらりとした生しょうゆなどがおすすめです
・塩分を抑えたい場合……減塩しょうゆはもちろんですが、だししょうゆもおすすめです。だししょうゆもだしが入っているため、通常のこいくちしょうゆに比べ食塩分が低い商品もあります
もちろん、これはあくまでも参考で、『絶対にこれ以外には使ってはいけない』というものではありません。ただし、用途からのしょうゆ選びの目安として、ご参考いただければ嬉しいですね」(伊藤さん)
日本人にとって日常的に口にしているしょうゆですが、今回ご紹介の通り、あまりに奥が深く、また幅広い商品群があるものでもありました。しょうゆ選びに迷われている方、今回の記事をご参考に、是非あなたにピッタリのしょうゆを選んでみてください!
(撮影・文◎松田義人)
●DATA
「キッコーマン」
https://www.kikkoman.co.jp/