日本のロシア料理は本場とどれぐらい違うのか!? をロシア人にぶっちゃけてもらおうという本企画。前回の食事編では、白いビーフストロガノフや多彩なピロシキなど、あまり日本では知られていなかったロシアの食文化をお伝えしました。
ロシア人はほとんどが酒豪で、ウオッカを水のように飲むんじゃないか? また、ウオッカ以外は飲まないのか? など、次々と素朴な疑問が湧いてきます。そんな疑問を今回も率直に伺ってみました!

前回に引き続き、東京・錦糸町にあるロシア料理店『スカズカ』からお届けします。そして、ロシアのお酒事情について語ってくれたのは、ニゴラさん(日本在住15年)と、ロシア人の母を持ち、幼少期は日本とウラジオストクを行き来していたインナさんです。
お酒はウォッカだけなの? ロシアで愛されるお酒とは?

編集部:ロシアのお酒事情について聞いていこうと思うのですが、ロシアといえばウォッカを飲むイメージですが、実際はどうなのでしょうか?
ニゴラさん:ロシアは寒い国だから昔は冬、男性はウオッカを飲まなければなりませんでした。ですが今では、若者はビールですね。ウオッカは年配の人が食事が終わったあと少し飲んで寝るという感じです。
編集部:え!? ロシアでは、ウォッカをあまり飲まないんですか。
インナさん:そうです。今では年配の人と、すぐに酔えるのであまりお金のない学生がよく飲むお酒というイメージです。

ニゴラさん:ウオッカは安いのもあるし、透明で不純物が少ないから、ロシアのお酒の中でいちばん胃に良いと言われています。飲み過ぎはダメだけど健康の為、少し飲むのがいい。
インナさん:ロシアは、乾杯はシャンパンからが多いです。
ニゴラさん:女性はシャンパンが好きでしょ。だからシャンパンで始まって、最後にシメでウオッカを飲むという感じです。逆はないです。悪酔いしちゃいます。これは気をつけたほうがいい。
編集部:確かに(笑)。気をつけます!
日本ビールも大人気! 実は隠れたビール大国ロシア

編集部:続いて、若者が好きだというビールについて教えてください。聞くところによると、ビールの消費量も世界第6位(※当社調べ)なんですよね?
インナさん:はい、「バルチカ」というビールが大人気です。たくさん種類がありますが、番号が振られていて、味とアルコール度数がわかるようになっています。
ニゴラさん:3番は3%、安全に楽しめます。9番は9%と高アルコールなので、飲み過ぎると危険(笑)。種類も多いです。ビールは大きなスーパーだと100種類くらい売っています。
編集部:100種類もあるんですか!? 全部ロシア産ですか?
インナさん:ロシア産でそれくらいありますよ。あと実は日本のビールも人気があります。アサヒとキリンがよく飲まれています。高級なイメージで、大きなスーパーでも販売していたり、高めのレストランにあります。
日本でも有名なあの曲がモデルのワインも!

編集部:それ以外のお酒はどうですか? ワインとかは?
ニゴラさん:ワインも人気ですね。ロシアの文化にはあまりワインはないのですが、グルジアではワインを作っています。今はジョージアと言いますね、旧ソ連の共和国でした。フルーティーな味わいです。
インナさん:ジョージア(グルジア)産のワインは超最高です。食前酒やお肉に合わせたワインを飲みます。特にコーカサス地方のワインって美味しいんですよね。
ニゴラさん:ボトルがとっても可愛くて、飲んだ後にインテリアとしても使えます。真ん中の茶色のワイン(※写真左から3本目)には秘話があります。「100万本の薔薇」って歌、日本人知っているでしょ? あのモデルがこのワインのボトルの絵です。これは物語じゃなくて、実話なんです。この画家の絵をボトルにしたワインなんですよ。このワイン“ピロスマニ”は、自然な赤のやや辛口ワインの珍しい例です。
(※)「100万本の薔薇」…貧乏な画家(ニコ・ピロスマニ)が恋をして、家財道具を全部売って彼女に100万本の薔薇をプレゼントしたというジョージア(グルジア)の実話。
編集部:実話だったんですね。加藤登紀子さんの歌ですよね。ロマンチックですねー。あと、赤と白、どちらが飲まれるとかありますか?
インナさん:それはどちらも。食事に合わせて飲むという感じ。
ニゴラさん:だからお肉には赤、魚には白、といった感じです。
編集部:それは日本と同じなんですね。
ロシアのドリンク事情を深掘り! 夏にぴったりのオススメドリンク

編集部:アルコール以外の飲み物がどうでしょう?
インナさん:夏に飲まれているドリンクといえば、「クワス」と「モルス」ですね。
ニゴラさん:「クワス」はパンの飲み物と言われています。黒パン(ライ麦のパン)と砂糖、酵母を熱湯に入れて1週間発酵させたもので、夏にぴったりな飲み物です。アルコール成分はほぼないけど、ちょっと酔っぱらうような感じがある。
編集部:おお、本当にビールっぽい。でもパンと言われるとパンの香りも。後ろのほうにパンがいる感じですね。
インナさん:ガスが出ているから、ちょっとソーダ感もあります。
ニゴラさん:パープルの飲み物が「モルス」。これはたくさんのベリーで作った飲み物です。数種類のベリーと砂糖を入れて煮ます。これを冷やして飲みます。
インナさん:好きなベリーを入れて調理すればいいので、自分好みのドリンクができるんです。
編集部:香りはワインみたいですね。爽やかでカシスみたいな感じもします。
ニゴラさん:これは子供も大好きなドリンクです。「モルス」は家庭でよく作られる、夏の定番の飲み物です。

編集部:あと紅茶はどうですか? 紅茶の輸入量も世界第1位ですよね。ロシアといえばロシアンティー。ジャムを入れた紅茶が有名ですね。
二人:いやいやいや。中にはジャムを入れる人たちもいますけど、普通はジャムは入れないです。
編集部:え、ジャム入れないんですか!?
インナさん:入れないです。昔はジャムを別皿にのせて、ジャムを食べながら紅茶を飲むという伝統的な習慣はあったようですが、今はそれもないです。もしかしたら、忙しい時にジャムを入れて飲んでるのを見て、間違って伝わったのかも。
編集部:なるほど。ちなみに紅茶はどういう時に飲みますか?
ニゴラさん:家族団欒の時ですね。大切な話をする時、悲しい時、嬉しい時、いつもです。紅茶に牛乳やはちみつを入れることもあります。あと一番ポピュラーな飲み方は、牛乳と紅茶を別カップに入れて交互に飲んだりします。
インナさん:そうそう、カフェオレみたいに混ぜないんです。紅茶は紅茶で、メインみたいな感じです。
ニゴラさん:だから日本に来てびっくりしたのは、ペットボトルの紅茶に全部砂糖が入っていること。紅茶はロシアではそのまま飲んでいたので、ストレートティーというのを買ったら甘かったのには驚きました(笑)

インナさん:あとは最近、ハーブティーとかフルーツティーが流行ってします。
ニゴラさん:可愛くて女性にとっても人気なんですよ。

これまでのお話で、筆者が勝手に思っていた、”ウオッカを水のように飲んでいる”が違うことがわかりました。しかもロシア人の認識ではウオッカは一番胃に良いとされているとは驚きです。そして紅茶の飲み方も面白い! 混ぜて飲むことはありません。ジャムを別皿で食べながら飲んでいたのも、その昔お菓子が貴重だった頃の話。今ではたくさんのお菓子やケーキなどのスイーツがあるので、そういった飲み方はしないそうです。まだまだ知らないことが多い魅惑の国ロシア。知らないから面白い、もっとこの国が知りたくなりました。気軽に旅行できるようになったらぜひ本場で試してみたいです。
ロシア人も認めたお店はここ!

今回協力してもらったお店は、『スカズカ』。オープンは2008年、本格的なロシア料理が食べられると人気の店。ウラジオストク出身のシェフが作る料理はロシアの家庭料理が中心でメニューも多く、ロシアのビールやウオッカなどお酒も豊富。本場さながらの味が楽しめます。店内のマトリョーシカやロシアの民族衣装の装飾と、スタッフの衣装もかわいくて、女子ウケすること間違いなし!
●SHOP INFO
店名:スカズカ(SKAZKA)
住:東京都墨田区江東橋 4-19-12 近代ビル2F
TEL:03-3632-5772
営:18:00~24:00
休:日曜
●著者プロフィール
矢巻美穂(やまき・みほ)
国内外の旅行雑誌を中心に活動するカメラマンで、撮影から執筆・編集作業まで行う。単著としてネパール、台湾、ウズベキスタン、韓国などのフォトガイドブックを執筆。近著の、東京と東京近郊で見つける「台湾」を取材した『東京で台湾さんぽ』(イカロス出版)が大好評。また、YouTubeで「旅ちゃんねる MinMin Tour」をオープン。これまで取材に行って、本当に美味しかった店や行ってよかった人気スポットを紹介。