突然ですが、みなさんは「ボルガライス」という料理をご存知ですか? 筆者はつい最近、たまたま東京・新高円寺の『花の木』という定食屋さんの前を通りかかったとき、店頭の「ボルガライスと定食」というコピーを見てその存在を知りました。
「ボルガライス」という不思議な名前が気になって調べてみると、どうやら福井県越前市武生(たけふ)地区で愛されているソウルフードだと判明。
名前の由来は諸説あるようですが、料理自体は1980年より以前から福井・武生地区周辺の洋食店などで出されていたそう。ちなみにこれが全国に広まったのは、2010年に「ボルガライス」を愛する人たちが集結して「日本ボルガラー協会」なる団体が結成されてから。それ以来、ボルガライスを出すお店がどんどん増えたそう。
オムライスにトンカツをのっけた洋食、というのはいかにも美味しそうですよね。ただその一方で、わざわざ福井に行かなくても家で作れそうだし、洋食屋さんでオムライスととんかつをオーダーして自分で勝手に合体しても「ボルガライス」になりそうだなぁ、などと考えてしまったのも事実。
しかし実際に食べてみなければその実態はわかりません。とりあえず実食を…というわけで、その新高円寺の『花の木』に入店することにしました。
「ボルガライス」は感激必至のウマさだった!
丸の内線・新高円寺駅を上がってすぐのところに『花の木』はあります。店先の立て看板には、写真付きで「ボルガライス」(797円)が紹介されており、ちゃんと越前武生名物グルメと書かれています。
というか、とんかつ×オムライスで797円ってかなり安くないですか? 単品でも1000円以上するお店はたくさんありますよね。
ともあれ、入店してお目当ての「ボルガライス」を注文しました。待つこと5分ほど。登場したのがこちらです。
オムライスにトンカツ、そして上にかかっているソース。イメージ通りのビジュアルですが、いざ食べてみると、ソースの美味しさに驚かされました。「ウマっ」と思わず声が漏れるほど。かかっていたのはトンカツソースでもウスターソースでもなく、丁寧に作られたことがわかるデミグラスソース。これがめちゃくちゃ美味しいんです。どろりと超濃厚で、甘味・酸味・旨味がギュッと詰まっている。
そしてトンカツは揚げたてのロースカツで、サクサク&アッツアツ。
そのオムライスは、キラキラ輝くうす焼き卵に、チキンライスがくるりと包まれた美しい楕円形。中のケチャップライスはしっとりしていて、お米一粒ひと粒にしっかりと旨みが染みた逸品。さらに絶妙な薄味加減で、濃いめの味わいのとんかつ&デミグラスソースにピタリと合うのです。
サクサクのとんかつ、デミグラの極上の旨み、そして美しいふわふわ卵に包まれたケチャップライスの控えめな味加減。この味や食感の全てが一体となって、得も言われぬ美味しさなのです。これは、とても家では作れないし、まして洋食店で勝手に自分で積み重ねたとて、こんな味になろうはずがありません。侮ってスイマセンでした!
というわけで、初めて「ボルガライス」を食べてみてわかったのは、オムライスの上にトンカツをのせただけの単純な料理では全然ないということ。あくまでボルガライスとして、細部まで考え抜いて作られている、というのがよくよくわかりました。少なくとも『花の木』のボルガライスは絶品でした。
ちなみに、福井の武生地区の「ボルガライス」も、お店ごとにソースやオムライスの中のライスなどにさまざまな個性があるようです。いつか絶対にご当地で食べよう! と決意したのでした。
(撮影・文◎土原亜子)
●SHOP INFO
店名:花の木
住:東京都杉並区梅里1-6-9
TEL:03-3314-9191
営:火11:30~14:00、17:00~翌1:00 水木金17:00~翌1:00
土日11:00~翌1:00
休:無休