最近、モバイルバッテリーが原因とみられる火災について耳にする機会が増えています。9月には東京都内のマンションで火災が発生し、火元の住民は「モバイルバッテリーから火が出た」などと話しています。
身近な火災の原因
東京消防庁の管轄内で火災が発生する原因は次の4つが多いそうです。
「コンロ」…調理中に目を離した際に火が燃え広がるケースが多いです。また調理中に着ている衣類に火が燃え移り全身に広がる「着衣着火」にも注意が必要です。
「たばこ」…寝タバコや吸い殻の不始末が火災につながりやすく、死者発生原因の第1位となっています。喫煙者は特に注意しましょう。
「ストーブ」…火災の約7割が電気ストーブによるものです。火が見えなくても安心せず、洗濯物の落下や布団との接触で簡単に火災が発生します。周囲に燃えやすいものがないか常に確認しましょう。
「電気コード」…製品の劣化や家具による踏みつけなどで発火します。古くなった家電製品は火災リスクが高くなるため定期的に点検しましょう。
モバイルバッテリーの場合、使われている「リチウムイオン電池」が強い衝撃を受けたり、正規品以外で充電したり、熱のこもりやすい場所で使用することで中の部品が壊れてショートを起こし、発火に繋がることがあるということです。
実際に火災が発生した場合の対処
火災の際に有効な消火器ですが、実際に持っていない方も多いかと思います。その場合はどう対応してたらよいのか、ケースごとに伺いました。
「コンロ」…コンロが原因で発生する火災では周囲に物が置いてあって、コンロの火が燃え移ったり、天ぷらなど揚げ物を揚げている際に、他の部屋に行って調理していること自体を忘れてしまったりした際に発生するケースが多くあります。初期消火に関しては、火災が発生した場合は大量の水をかけていただくということが大切です。ただ天ぷら油の場合は、逆に水をかけてしまうと炎が一気に拡大してしまう場合がありますので、水は絶対にかけないでください。水以外ですとやはり消火器が有効的です。状況によりけりですが、水でも消えない、消化器もないという場合は、炎が拡大している可能性がありますので、すぐに避難を優先して119番通報をしていただければと思います。
「たばこ」…消火器がない場合は水をかけていただければと思います。よくある危険な行動としては「寝たばこ」です。たばこの火種が布団に落っこちて、手で払って消したと思っていても、小さな火種が時間が経過するにつれて拡大して、大きな火災に繋がる可能性がありますので、前提としては「寝たばこ」は絶対にしない。
そして座布団やソファー、寝具類などに煙草の火種が起こってしまった場合は手で払って安心しているだけではなく、必ず水をかけて完全に消化したのを確認していただければと思います。
※東京消防庁が発表している「令和6年版 火災の実態」によると、「紙巻たばこ」の火種の温度は「500℃」を超えているそうです。この火種が繊維や落葉などの可燃物に接触すると、見た目では炎が出ていない「無炎燃焼」の形態で継続され、条件によっては数時間後に出火する こともあるそうです。
「電気ストーブと電気コード」…こちらも消火器がない場合は大量の水で消してください。ただ通電している場合は、水をかけることで感電する恐れもあるので、離れたところからかけるなど、十分に気を付けてください。
「モバイルバッテリー」…一般的に皆さんが使用しているモバイルバッテリーの容量でしたら、火炎が激しく噴出した後に内部の化学反応が収まって火は落ち着きます。炎が噴出している間は炎に触れない位置まで下がっていただいて、その間に水を準備したり、消火器がないか探しに行って、初期消火行動をとっていただければと思います。車の中で発火してしまったケースも同様に、まずは火が落ち着くまで離れて、その間に水などを探してください。
※電車の中であれば消火器が設置してありますので、ほかの人に協力してもらいましょう。
初期消火を諦めるタイミングと避難方法
初期消火は避難経路などご自身の安全を確保した上で実施してください。また初期消火を止める一つの指針としては火が天井に燃え移るまでとなります。そういう状況になった場合は初期消火を諦め、姿勢を低く保ち、煙を吸わないように避難してください。また安全な場所に移動してから119番通報をしていただければと思います。近隣の方には大きな声で「火事だ!」と叫んでいただければと思います。
消防庁から「マイ消火器」のすすめ

東京消防庁として皆さんにぜひお願いしたいのが、ご自身の家専用の「マイ消火器」を備えることなんです。消化器は水よりも消化能力が高く、電気や油の火災にも対応しており、取り扱い方法もとても簡単です。また業務用の消火器よりも軽くてコンパクトで、しかもデザインもインテリアに馴染む住宅用消火器というのもあります。台所やリビング、避難経路となる玄関に1本置いていただくだけで、万が一火災が発生したときの安心感が違います。
実際、初期の小さな火災であれば消火器があればすぐに消せることが多いんです。秋から冬にかけて空気が乾燥して火災が多くなる季節となります。備えがまだという方は、どうか今日から「マイ消火器」を置いてみていただければと思います。
これから火災の発生しやすい季節です。万全の準備で迎えましょう!
(TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』より抜粋)