今日は、私たちの暮らしに欠かせないトイレの話です。最近、アメリカで日本の温水洗浄便座「ウォシュレット」がかなり売れているそうです。

トイレの便座に取り付けて、温水で洗浄できる、日本ではすっかりおなじみの設備です。

なぜ、今アメリカで?

実は30年以上前からアメリカでも販売していましたが、長い間、なかなか広がりませんでした。それが今、アメリカで注目され始めています。なぜ今になって選ばれるようになったのか。TOTO株式会社 広報部 橋谷 知恵さんにお話を聞きました。

TOTO 株式会社 広報部 橋谷 知恵さん

2010年代半ば頃から訪日外国人が増え始めました。日本でウォシュレットを体験していく機会が増えて、ウォシュレットという存在を知って、使って、自分も欲しいと購入する方が増えたと思います。伸びたのはコロナ禍で、サプライヤーとかが行き届いてなかったのかな。そこでトイレットペーパーの代わりになるとお客様の口コミがあり、一気に注目を浴びました。そこで前年から2倍とコロナ禍は伸びました。やはり拭くよりも、洗った方が綺麗に汚れが落ちるところがあります。当時はトイレットペーパー不足だったので、ウォシュレットがその代わりになってくれたんじゃないかなというふうには思います。

訪日外国人の増加で、日本でウォシュレットを体験する人が増えたことに加え、コロナ禍でトイレットペーパーが不足したことも、注目が集まるきっかけになりました。

さらに、SNSで著名人が使い心地を発信したことや、アメリカでは実用的なものを家族や身近な人に贈る文化があること、外出を控える中で、ネットを通じて生活用品を購入する動きが強まったことも、広がりを後押ししたといいます。

さらにアメリカの家はベッドルームの数だけトイレがあることも多く、一度気に入ると、一気に設置台数が増えやすいという住宅構造も追い風になりました。しかも、購入して自分で取り付けるDIY文化が根付いているため、家庭に入りやすかった面もあります。

立ちはだかっていた「住まいの壁」

ただ、ウォシュレットは30年以上前から売られていたのに、なぜ今まで普及しなかったのか。再びTOTO株式会社 橋谷さんの話です。

TOTO 株式会社 広報部 橋谷 知恵さん

いろいろ要因はあると思いますが、一つ物理的な要因でいうと、電源コードがバスルーム内に設置できないことがあり、シャワー、トイレ、洗面台と水を扱う一つの空間になっているので、そこに電源があると危ないとうことで電源コードがない。ウォシュレットは電気を使う商品なので、電源コードは必ず必要になってきます。なので電源コードがないことが一つ問題としてありました。あと、ウォシュレットを知らない、使ったことがない人が多いっていうところがやはり一番大きいかなというふうに思っています。

アメリカでは、トイレとシャワー、洗面台が同じ空間にあるのが一般的。水を使う場所に電源を置くこと自体が危険とされ、長い間、バスルーム内に電源を置くことができない規制があり、電気を使うウォシュレットにとっては大きな壁でした。家庭に入りにくかったからこそ、そもそも存在を知らない、使ったことがない人が多かったことも、普及が進まなかった理由の一つです。ただ、状況は少しずつ変わってきています。

安全性についての理解が進み、バスルーム内に電源を設けられるケースが少しずつ広がってきたといいます。こうした規制の変化も、設置が進む背景の一つになっています。

また、地域によっては、もう一つ別のハードルも。それが水質です。日本は軟水が中心ですが、ヨーロッパなどには硬水の地域が多く、水垢がたまりやすいという課題があります。アメリカでは大きな壁ではないものの、一部に硬水地域はあるそうです。こうした地域差を踏まえ、水垢を定期的に除去できる機能を備えた製品も開発されるなど、地域に合わせた工夫も進んでいます。

世界から見た 日本のトイレ

ただ、トイレの使い方や考え方は国や地域によって様々です。日本のトイレ文化は海外からどう見えるのか、トイレ研究家の白倉 正子さんに聞きました。

日本の当たり前が、世界で広がり始めた理由の画像はこちら >>

トイレ研究家 白倉 正子さん

全体的には丁寧な国、綺麗な国、トイレが豊かな国、ハイテクな国っていうイメージを抱かれるのはよく聞きます。やっぱり一番体感をして感動するのは温水洗浄便座の存在だと思います。珍しいというか、ほぼない。

なぜかというとお金がかかること、壊されたり盗まれちゃうからなんです。いわゆる一般の公共トイレに広がるっていうのは、日本の安全性とか丁寧に使おうととする民度の表れっていう感じですかね。実際中国で爆発的な人気になっていますし、韓国では私が見た範囲では、首都圏の方では電気屋さんに当然のように売っていましたし、空港にもありましたし、台湾も日本製のものがだいぶ入っていますし、徐々に広がりは感じます。

日本のトイレは、清潔で無料、そしてハイテク。温水洗浄便座が当たり前に使われている環境そのものが、海外から見ると特別な体験だそう。また、実は世界にはもともとトイレの後「水で洗う」習慣が根付いている地域が多くあるそうです。暑い国や、紙が高価な国では、桶やスプレー型の洗浄具を使う国も多く、「洗うこと」自体は珍しくないそう。そのため、便座から水が出る仕組みは受け入れられる土台はある一方で、どこまで広がるかは、気候や生活習慣など、その国ごとの文化に左右されるといいます。アメリカでも注目は集まっていますが、普及率で見るとまだ数%ほど。日本のように当たり前になるには、文化や気候に合わせて、少しずつ広がっていく必要がありそうです。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

編集部おすすめ