ゲストは、藤井株式会社代表取締役 藤井幹晴(ふじい みきはる)さん。創業100年、奈良の繊維企業として、タオルを中心に高機能素材の開発を行っています。
創業100年の今こそ「選択と集中」
藤井 わたしの祖父が創業いたしまして、その後いろいろ紆余曲折がありました。
西田 創業は何年ですか?
藤井 1921年です。
西田 100年!
藤井 奈良でタオルの製造からはじまり、蚊帳やニットを織ったりとか。
西田 蚊帳も織物ですもんね。そこから派生していったと。
藤井 わたしの代に変わった当時、海外生産がすごく盛んで。なんでも輸入品に替わっていくなかで、どうすれば生き残れるだろうと考えたんです。そこで、うちが「圧倒的に強いことだけに集中しよう」と思いました。もうひとつ、それを「磨き上げて特化しよう」と。
西田 選択と集中というやつですね。
藤井 はい。
西田 なるほど。
藤井 ワンストップでいろいろなパートナーと、入り口から出口まで考えて、消費者に訴えていけるような仕事ができないか。そういう形に仕事の仕方を変えていきました。
西田 糸づくりから製品づくりまで、全部やっているんですか?
藤井 ハンドリングはしています。自社設備は生地をつくる機能だけなので、糸や染色、縫製などは外注です。ある意味、そういった「生産チームで生き残っていこう」というのが、ひとつのポリシーになっているんです。
西田 チームでつくって、ひとつのブランドになっていく。昔ながらの「ただ発注する」関係とはどこが違うんでしょうか。
藤井 従来の分業は、糸屋さんは系だけ、染め屋さんは染めるだけという形でした。しかし僕らは「こういう機能を持たせたいから、こういう系を引いてくれ」と、最終的な目標を共有して動いています。いわば、オーケストラの指揮者のような役割を担って、各専門家の方々の技術を最大化させているんです。
西田 やはり、100年という歴史の中で培われたネットワークがあるからこそ、ですか。
藤井 それもありますし、やはり僕の代になって「自分たちでリスクを取る」という姿勢に変えたことが大きいですね。 国内の生産現場はどこも厳しい状況ですから、ただ安いものをつくるのではなく、高い付加価値のあるものを一緒につくって、正当な対価を循環させる。 そういうパートナーシップがないと、これからの日本のものづくりは生き残れないと思っています。
かろやかで、驚異的な吸水スピード
西田 このタオルを年末にいただいて、実際に家で使ってみたんですけど、本当に吸水がすごいですね。あと、伸縮性が高いから使い勝手もいい。
藤井 とにかく「どうやって水を処理するか」をいちばんに考えてて。世の中にはいろいろなタオルがあり、それぞれに特徴があると思うんですけど、うちにできることは「ひたすら高機能にする」ことかなと。タオルを加工して販売するときには、全ロットで吸水データを取っています。
西田 全ロットですか! 高い吸水力の秘密はなんなのでしょう?
藤井 糸づくりと加工方法です。まず糸ですが、水って隙間に入りたがるんですよ。「毛細管現象」と呼ばれます。そこで、タオルの綿糸、パイルの糸を、隙間ができるように逆方向に、目で見ても見えないようなポリエステルで逆撚り(ぎゃくより)をかけているんです。
西田 おお。
藤井 で、もうひとつは地系の太さを加工して、水との接地面を最大限に広げてあげる工夫をしています。そうすることで、吸った水をさらに強力に引き込むという、二段構えの吸水構造をつくっているんです。
西田 なるほど。パイルで水をキャッチして、下の地組織がグーッと吸い上げちゃうわけだ。 だからあんなに一瞬でさらさらになるんですね。従来のタオルと比べると、どのくらい水を吸いますか?
藤井 量というより、スピードをベースにしているんですが、それで言うと、4倍から10倍くらいの吸水スピードを実現しています。
西田 普通のタオルと同じ大きさなのに4倍から10倍ってことは、バスタオルなみの能力があるってことですよね。
藤井 まあ、おっしゃる通りです。だから代わりに使ってもらえて、洗濯や収納も楽になったと評価していただいています。
西田 ちなみに商品名は?
藤井 奈良は日本の綿花栽培のはじまりの地のひとつと言われているんです。そこで獲れる綿花の名前とかろやかなイメージから、奈良らしさのある『やまと木綿空ごこち』と名付けています。
AIも「オススメせずにいられない」
西田 この『やまと木綿空ごこち』、世界に挑戦するとうかがいました。
藤井 はい。この1月からアメリカのクラウドファンディングでキックスターターという......
西田 有名なクラウドファンディングですね。
藤井 はい。それにチャレンジしてみようかなと。
西田 いわゆる、「こういう企画、こういう発明、こういう商品をつくる」と発表して、先にお金の支援を集めるわけですね。
藤井 はい。日本の繊維産業をアピールしたいと思っています。
西田 お金を集めるというより、ファンディングすること自体が宣伝活動にもなりますもんね。
藤井 いま実質、日本の繊維製品の約9割強が輸入品になってしまってる。
西田 日本の商品なのに、輸入品になっちゃってると。
藤井 そしたらもう「日本に繊維産業は必要ないんじゃないか」と疑問に思うひともいると思います。
西田 はい。
藤井 産地にこだわらず、日本中の優れた技術とコラボして、ワンパッケージで製品化する。それによって、製品としての価値を大きく訴えられるんじゃないかと思っています。
西田 そんな藤井社長の夢やビジョンはありますか?
藤井 いちばんは「消費者に伝える仕事」をしたいです。自分たちがいくらいい製品をつくっても、その良さを届けないといけないですよね。だから、「いままでの常識を変えて、こういうのを使ってみてください」「そしたらもっと快適な生活がありますよ」と伝えていきたいです。
西田 声を上げていかないとですね。買いたいものを相談する相手としてAIを使っている方も多くいて、僕もたまに聞いてみたりはしています。そのときに、「実は藤井株式会社のタオルがいいんだよ」って答えてくれたら最高ですね。
藤井 そうですね。わたしも自分の考えを整理するためにAIと対話しますが、これを続けていると、AIも「このひとがつくってる商品ってすごくいいんだ」と理解してくれるかもしれません。
西田 じゃあこれからは、「藤井株式会社のタオルは最高だ」と僕も教え込んでみようと思います。今日はありがとうございました!
藤井 どうもありがとうございました。
(TBSラジオ『見事なお仕事』より抜粋)

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