今日は、「外出や旅行のバリアフリー」について取り上げます。障害者や高齢者が、移動への不安から、外出や旅行を諦めるケースは少なくありません。

こうした中、“誰もが安心して旅行できる環境作り”の取り組みを多数紹介する「アクセシブル・ツーリズム推進シンポジウム」が先月26日、東京商工会議所で行われました。アクセシブルは「利用しやすい」といった意味です。

足元から不安を減らす

まず注目したのは、点字ブロックの代わりとなる、ユニークな製品です。錦城護謨株式会社 横内 由美子さんのお話です。

錦城護謨株式会社 横内 由美子さん

錦城護謨では視覚障害者の歩行をサポートする製品を3種類取り扱っております。いずれも屋内専用のもので、点字ブロックのつきにくい場所の道しるべになるようなもの。メインで出展しているのは「歩導くんガイドウェイ」で製品の外周部分がスロープになっているゴム製のマットでございます。例えば点字ブロックが足りないところを増やしていったり、何もないところに誘導の動線としてつけていただくことができるような製品になってます。一番の特徴は表面がでこぼこしていないので、車いすや、ベビーカー、荷物運ぶ台車等も通りやすくなっております。

およそ30センチ四方のゴム製のマットで、ジグソーパズルのような形になっていて、任意の長さにつなげることができます。点字ブロックを設置する場合、床を削る大がかりな工事が必要ですが、 「歩導くんガイドウェイ」は、美術館や博物館、イベント会場など、 日によって人の流れが変わる場所でも、貼るだけで使えるのが特徴です。

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また従来の点字ブロックと違って、表面のでこぼこがなく、車椅子やベビーカーなども通りやくなっています。視覚障害のある方は、でこぼこがなくても、足裏の感触や白杖の音の違い、また弱視の場合は、床の色とマットの色の違いで、進む方向が分かるとのこと。

ちなみにマットの色は黄色、茶色など6種類から選べます。既にシリーズ累計で、日本国内1200ヶ所以上に導入されたそうです。

移動の不安を減らす あたらしい観光のかたち

体に寄り添うロボット

お次は、医療やリハビリの現場で使われる「歩行支援ロボット」を旅行にも活用しようという取り組みです。東京科学大学 三宅 美博教授に聞きました。

東京科学大学 三宅 美博教授

ご高齢の方々や足腰が弱い方々が、実は我々が作っているような歩行支援ロボットを使うと、無理なく外に外出できるようになるわけです。そうすれば、街歩きとか、ハイキングとかいろいろ楽しむことができます。体に、外骨格に、モーターをつけまして、力を出してサポートしてくれるタイプのロボットです。力は当然出るんですがそれに加えてリズムをアシストするロボットです。人間が歩くときには一種のリズムになってますので、うまく人の歩行のリズムと間を合わせて歩くことでロボットが力を出してくれて、歩行をスムーズにサポートできる、そういうものになっています。 

こちらは「WALK-MATE(ウォークメイト)」という名前で、重さや見た目に配慮され、街歩きでも使いやすい設計になっています。まだ実証段階ですが、これまでに和歌山県・高野山の参道を歩いたほか、今後は、東京・神楽坂の街歩きや、高尾山でのハイキングを予定。将来的には駅や空港、商業施設など、移動の負担が大きい場所での広がりも期待されています。

移動の不安を減らす あたらしい観光のかたち

このほか、シンポジウムには、障害に応じた旅行プランや相談窓口がある旅行会社、車いすでも移動しやすい広さを設けたバリアフリーのホテルなどさまざまな企業・団体が出展していました。

観光を支える、次のマーケット

このシンポジウムを主催した、東京都・産業労働局はアクセシブル・ツーリズムのさらなる広がりに期待を寄せています。観光部の西島 裕樹さんのお話です。

東京都・産業労働局 観光部 西島 裕樹さん

実は観光庁の調査で、国内の潜在的市場の規模、外出に何らかのこの不自由のある高齢者の方も含めますと、実は年間で約4200万人という数が出てます。また潜在的な国内旅行消費額は年間で約3兆円と推計されてます。こうした対応を進めることが、今までは、コストとかコンプライアンスっていうふうに思ってる事業者さんもいたと思うんですけども、コストとかコンプライアンスじゃなくて、むしろ新しいマーケットなんだということで、こうした対応を進めることが新たな顧客層の獲得ですとか、リピーターも来ていただけるでしょうし、さらには潜在的な市場開拓、東京の経済成長、こういったところにも繋がっていくというふうに考えてます。

移動の不安を減らす あたらしい観光のかたち

外出や旅行のバリアフリー対応を進めることが、新たなビジネスチャンスにもなり得る。東京都としても、例えば宿泊施設のバリアフリー化に向けた補助金やバスやタクシーの乗降リフト装置の助成金といった形でサポートしています。今後旅行のバリアフリーがさらに全国的に広がることを期待します。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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