昨日、今日は暖かいですが、この冬は寒くて、しかも、燃料費の高騰が続いています。様々な資材の値上がりも同時に起きていますので、農家のみなさん、燃料費がかなり経費を圧迫していると聞きます。

そんな中、水を使って農家の燃料費を抑える技術があるというのでお話を聞きました。

二重構造のハウスに地下水の幕を作って保温!!

まずは、栃木県で広く使われている、ウォーターカーテン技術について、栃木県農政部、経営技術課技術指導班、中西達郎さんのお話です。

栃木県農政部経営技術課技術指導班 中西達郎さん

「ウォーターカーテンとは、冬場に農業用ハウスの内部を温める技術となります。

ハウスの構造なんですけど、二重構造をしておりまして、ハウスの内と外の間に散水パイプなどを通して地下水を散水して、内側のフィルムの上に水の幕を作って保温する方法となっております。

栃木県はミネラルたっぷりの地下水が豊富にあるという所に加えまして、地下水の温度は一年中安定しておりまして、例えば13℃の地下水を、10アールあたり毎分180リッターくらいで流すことが出来れば、外気と比べて、例えば外の温度がマイナス7℃の時に、ハウスの中が7℃から8℃っていう保温効果が認められてます。

この技術は1970年代に県内の生産者によって開発されたと聞いております。昔、オイルショックとか色々ありましたから、そんな中で非常に省エネな技術だな、ということで、一気に拡大したんだと思っております。」

外がマイナス7℃でも、ハウスは7℃で保てるんです!スゴイ保温効果ですよね。

栃木と言えばイチゴが有名ですが、イチゴ農家の7割が、このウォーターカーテンを採用しているそうです。(他にも、ニラやアスパラの農家さんも。)

イチゴのハウスは夜は8℃くらいが最適。それをキープするために暖房をたくと、10アールのハウスで、だいたい40万くらいかかる計算ですが、これが0に抑えられるんです。これは大きい!

もちろん、ハウスを二重構造にする、散水の資材を入れる、地下水を引くために井戸を掘るといった初期費用は必要ですが、10年、20年とイチゴ栽培をしていくなら非常に省エネとなりますよね。

50年以上前、オイルショックで燃料費が高騰した時代に、一人の農家さんが開発した技術が、今も栃木県の生産者を支えているんです。

畝に水を入れたペットボトルを並べるだけ!?

一方、現代に新しく生まれた、水を使った燃料費削減農法もありました。こちらは、小規模農家向けなのですが、その名も「ペットボトル農法」!生みの親の岐阜県本巣市のまごころ彩園、鷲見須身雄さんにお話を伺いました。

岐阜県本巣市『まごころ彩園』鷲見須身雄さん

「レタスが、一番冬の寒さに弱いんで、これを冬の間も育てれたらな、ということで、ビニールトンネルでペットボトルを敷いて、その間にレタスの苗を植えたら冬の間も育ったりするんじゃないかなって、一昨年ですねペットボトル並べてテストしましたら、あ、これ上手くいくんだっていうのが分かりました。

ここら辺の最低気温って氷点下7℃くらいなんですが、雪の日でも日照時間が2、3時間あれば、日中あっためられたペットボトルの水が、夜、湯たんぽみたいな感じですね、放熱してくれてトンネル内をあっためてくれてるんで、一番低い温度でもだいたい氷点下ギリギリまで温度が上げれて、これだとレタスが育つんで、上手くいったんですね。

温度の維持をボイラーとか灯油とかでやったら大変ですね。半端ないお金がかかりますね。でもウチはエネルギー代ゼロなんです。」

ビニールハウスで、畝にレタスの苗を一定間隔で植えますが、そのレタスの間に水を入れた2リットルのペットボトルを並べるんです。レタス、ペットボトル、レタス、ペットボトルという具合。

水を使って、冬場の農家の燃料費を抑える技術!の画像はこちら >>
<レタス、ペットボトル、レタス、ペットボトルと並んだ様子 写真提供:鷲見さん>

友人からもらったペットボトルに、水道水を入れて、畑に並べるだけ!これで、7~8℃温度を上げられて、冬にもレタスが出荷できるようになりました。

しかも、中に置くペットボトルの本数で、温度調整の力は変えることも可能だそうで、色んな地域の小規模農家さんに活用してもらいたい、と、鷲見さんはおっしゃいます。

改善、工夫、テスト。技術の改善も好きなんです!

でも、工夫とテストを重ねてせっかく開発したのにもったいなくないですか?と、聞いてみました。

岐阜県本巣市『まごころ彩園』鷲見須身雄さん

「これだけのことですんで、どういう風にやったら上手くいくよっていう程度で誰でもやれることなんで、どんどん情報は出します。

電話さえいただければ、こうやってやるんですよっていう説明はできますんで。

もう何件か来てまして、長野県の安曇野っていうところで新規農業を始めた人たちがずいぶん興味を持って、安曇野でも出来そうだなってことで訪ねて見えましたよ。もう真似してやってます。氷点下に下がってないです~!いう報告だけは受けてます。やりました~!

金属加工の工具関係の仕事をしてました。加工するための工具を管理してましたんで、普通じゃあ加工が難しいような、よその会社では引き受けないよ、というような特殊な金属の加工とかに使う工具、これ今まで無いんでどうするんだ、って。こういう風に研磨方法変えたらその工具が上手く加工できるんじゃないか?とか、そんなことばーっかりやってましたんで、15年間。改善とか工夫とかテストとか、そういう習慣がつきました。それが生きてるかな、と思います。」

どんどんみなさんに教えてます!鷲見さん、おおらかですね。そして、すでに広まりつつありました!

定年退職後に農業を始めた鷲見さん。元は金属加工をするための工具を扱っていました。実は、日本とアメリカの間の海底ケーブル、これを保護するためのパイプの加工をする工具なんかも、どうしたらいいか、工夫してテストして、やり直して、とやってきたそうで、今も、野菜を育てることそのものも楽しいけど、技術を改善して、さらに上手くいくように、ということが面白くて、と話していました。

50年前に鷲見さんみたいな人が開発した栃木県のウォーターカーテン技術は今やすっかり普及。もしかして、ペットボトル農法も50年経ったら当たり前の景色になる、かもしれませんよね!

それにしても、冷やすのではなく温めるのに水を使う、というのは不思議でしたが、両者ともしっかり温めることが出来ています。こうした工夫や技術に支えられているんですね!

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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