少子化で、学校の統廃合が全国で進んでいます。文部科学省によると、2023年度までの20年間で、全国の小・中・高校合わせて8850校が廃校になりました。
学舎から複合拠点へ
いま各地で、廃校になった校舎をどう活かすか模索が続いていますが、東京・世田谷区でも、元中学校を使った新たな取り組みが始まりました。どんな場所なのか、まずは、施設を運営する方方株式会社取締役 内沼晋太郎さんにお話を聞きました。
方方株式会社取締役内沼晋太郎さん
元々世田谷区の池尻中学校だったところをリノベーションして作った複合施設です。1階にお店がいくつか入っていて、飲食店、物販店ですね。2階にコワーキングが入っていって、3階がオフィス区画になっているので、ただの商業施設というよりは、ここで働いている人たちもいるみたいなそういう施設になっています。元々飲食店に一番向かないような場所に作るのが学校だと思うのでそういう意味では本当に苦労する訳ですけど、逆に言うと、元学校だっていう面白さがあるわけじゃないですか。ただ商業にするでも、学びの場にするでも、オフィスにするでもなく、それらを掛け合わせることによって、いろんな機能を詰め込むことによってこそ、新しいものが生まれるんじゃないかみたいなことがあったんだと思いますね。
ここは2004年に廃校になった池尻中学校を改装し、去年の7月に、「HOME/WORK VILLAGE」という複合施設として再スタートしました。
実際に現地に行きましたが、外観は、学校の面影がそのまま残っていました。当時の黒板や机が活かされた教室、図工室にあったような四角い木製の椅子や、使い込まれた棚などの備品も置いてあり、とても懐かしい空間です。その一方で、オフィスに改装した教室もあったり、1階にはおしゃれなカフェなどの飲食店が並んでいたりと新旧がうまく混ざり合っていました。
校舎だけでなく、校庭や体育館も使いながら、より地域に開かれた形になり、いまは月におよそ8万人が訪れています。ただ、一般的な商業施設の来場者数とは違って、働く人や学びに来る人、近所を散歩する親子など、日常をこの場所で過ごす人たちを含めた数字だそうです。
職員室でビール?
ここで実際に店を出している方にもお話を聞きました。施設内にクラフトビールの醸造所を立ち上げた「アフタースクールブリュワリー」代表の菊池文武さんです。
「アフタースクールブリュワリー」代表 菊池文武さん
テーマとしては学校という場所と、アフタースクールブリュワリーという我々の名前の通り、大人の放課後活動をテーマにしてやっておりまして、温かい季節に夜テラスでお酒を飲むとか校庭を目の前にして、静かな中でお客さんたちが語らうっていうのはすごい気持ちいいっていう環境になってるんで、東京の中でも、東京っぽくない。静かな中で、皆さんそれぞれの過ごし方ができるっていう場所かなと思ってますね。池尻中学校は廃校になって20年ぐらいですけど、卒業生って、今大体30半ばぐらいでちょうどいい年齢なので、ぜひここで同窓会やっていただきたいなっていうのは思いますね。我々の醸造所って元職員室だったところで、ビールを作っているんですけどそこで作ったビールで、皆さんに同窓生の方に乾杯してほしいなと思いますね。
代表の菊池さんは、もともとこの近所に住んでいて、以前からこの場所の変化を見てきたひとりです。リノベーションの話を聞き、ビール醸造という形で手を挙げたそう。
オープン前は「学校でお酒?」という不安の声もあったといいますが、今は世代を超えて人が集まっているそう。廃校を活用したブリュワリーは全国で8か所ほど。東京ではここが初めて。学校にはもともと醸造用の設備はないため、段差を越えて大きな釜や重い機材を入れるのも一苦労だったといいます。それでも、できるだけ当時の面影を残したいと、職員室で使っていた黒板や備品も再利用していました。
懐かしさが人を呼ぶ
では、実際にこの場所を訪れている人は、どう感じているのでしょうか。利用者の声を聞きました。
●自分の子供がスポーツクラブのダブルダッチに通っているので、毎週水曜日に来ています。割と賑やかな印象ではあるんですけど、近所に住んでいてガヤガヤしているというよりかは、地域に根付いたイメージがあります。
●インスタで見つけて来てみました。廃校をリノベーションしたみたいなのを見てすごい楽しそうだなって思いました。こういうのあったよなみたいな。盛り上がるみたいな。
●初めて来たっていう感じです。子供たちが主体だった場所が、大人もまたそこに帰ってくるような場所だったり、大人と子供がいろんな地域を含んで繋がっていくっていうのがすごい素敵だなって思いました。
●僕は奈良県庁なんです。
廃校の活用を奈良県でもいろいろ考えてて、どういうふうに活用されてるのかなと思って。かっこ良く作ってはんなっていうのがあって。レストランもね、平日の夕方にも入っておられる方がいてはるんでね。
廃校というと、維持するためのコストだったり、「子どもが減った」「地域の衰退」というマイナスイメージがありますが、その空間を、働く場や商いの場に変えることで、地域の新しい経済に生まれ変わる可能性を秘めています。とはいえ、どの地域でも同じ形がそのまま当てはまるわけではなく、住宅街に囲まれ、人の流れがあるからこそ成り立つ側面もあります。人口減少が進む中で、どう持続可能な形をつくるか、地域ごとの条件にどう合わせるかが課題です。全国で今後どんな活用の仕方が広がるか注目したいですね。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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