東日本大震災から15年です。近年も能登半島地震など全国で大きな災害が起きる中、いま改めて考えたいのがペットを連れた避難です。

現在、環境省は災害時にペットと一緒に逃げる「同行避難」を基本としていますが、能登半島地震では受け入れを断る避難所もありました。そこで環境省は今月末をめどに、ペットの受け入れをより進める方向で、指針を見直す方針です。

「避難できるのか」 飼い主の本音

すっかり「家族の一員」となったペットですが、いざという時、本当に一緒に避難できるのでしょうか。まずは、墨田区で散歩中の飼い主のみなさんに、日頃の備えなどを聞きました。

●自分の防災用のリュックの中にわんこのもちょっと入れてます。ペットが好きな人もいれば、苦手な人もいるので、やっぱルールをお互い守るのが大事なのかなとは思ってます。やっぱり自宅か、車が一応あるから、車か。ていう感じかな。

●地震への備えできてないですね。大型犬なので本当は避難所入れないわけなんですよね。キャンピングカーを買って準備しとくっていうのを本当はやろうと思ってて多分近々買うんですけど、これ今起きちゃったら多分僕らしか避難できないコンディションで、家に残しとかなきゃいけないってことになっちゃうんすね。

●すごい多めにいつも買ってあります。ドックフードとかもプラス1ヶ月分は。

物資が届かなくなったときのためにです。基本家で避難をしようと思ってるんで、どっかに連れて行くときってあるじゃないですか、そういうことは逆に基本避けようとは思っています。

●できてない。もういいや。逃げても人がいっぱいでこういうのを連れていけないよ。

国は、自宅で安全が確保できる場合は「在宅避難」を勧めています。実際、自宅を前提に準備する家庭も少なくありません。一方で自宅が危険になった場合は避難所に行くしかありませんが、そこに大きな壁があります。ペットは連れて行けても、鳴き声や犬猫アレルギーの方への配慮から、避難所では「人とペットの生活空間を分ける」のが原則です。つまり、一緒に避難所に行けても寝る場所は別、というケースが多いんです。

さらに、中型・大型犬はそもそも受け入れが難しいケースも。その結果、車中泊を選んだり、危険でも自宅にとどまる人が出ています。

23区初 「同伴避難」

そんな行き場に悩む飼い主さんたちの新しい受け皿として、墨田区にある動物専門学校「日本動物21」が新たな取り組みを始めました。教務部 次長の早川 公善さんに聞きました。

日本動物21 教務部 次長 早川 公善さん

どうしてもペットと一緒に過ごさないといけない飼い主とペットたちのために、我々の学校は一緒に同じ部屋、同じ空間で過ごすことができる場所を提供するというところが今回大きな取り組みとなっておりまして。それ以外にも、フードとか、あとケージや医療器具の貸し出し等も行っております。一応本学で受け入れできる想定数としては約100組、飼い主様とペットたちを迎えることができます。2部屋ございまして、両方とも同じ面積ですが、約160平米ですね、屋外も同じ約160平米の運動場があるんですけども、避難生活以外でも、ペットたちのストレスを軽減するために開放して、ドッグランみたいな形で使うことも可能かと思います。ここには動物好きの方しか来ない形になるので、そこが一番気兼ねなく、一番メリットなんじゃないのかなと思います。

実は私も専門学校を見学させていただいたのですが、実習室のケージに大きな犬がいて、元気よく吠えていました。可愛かったのですが、もし動物が苦手な人が避難所で初めて会ったら、怖いと感じるだろうなと実感しました。だからこそ、動物好きしか来ないこの場所は、周りに気兼ねなく過ごせる、安心できる受け皿になるんです。

ペットと避難できるのか 墨田区”同伴避難"の挑戦の画像はこちら >>
ペットと避難できるのか 墨田区”同伴避難"の挑戦

同じ部屋で過ごすこの形は「同伴避難」と呼ばれ、日本動物21と墨田区が2024年に正式に協定を結び、23区で初めて実現しました。さらにこの学校は動物病院として登録されていて、医療器具や薬も揃っており、設備の面でも一歩進んだ体制となっています。ちなみに、受け入れる動物は犬や猫が中心で、ヘビなどの爬虫類は、現在受け入れを協議中だそうです。

支える人の力

そして、強みはこうした「設備」だけではありません。災害時、安全が確認できれば、動物のプロである教員や学生さんたちも、ボランティアに入ってくれる想定です。現場で学生たちを指導している、鶴川 拓生先生に聞きました。

日本動物21 現場で学生たちを指導している 鶴川 拓生先生

やはりいつもと違う場所ですので食欲不振になったりとか、あとは元気がなくなるとか、あとは逆に攻撃的になってしまうというような子が出たりとか、恐怖で震えてしまうっていうような状態の子も出てくるとは思います。 やはりその飼い主様の不安を取り除くためには、しっかりとお話を聞く、傾聴を心がけるということが大事だとは考えております。 例えば攻撃的になってしまってるワンちゃんだったら、「少し広めのスペースが取れる場所に移動しましょうか」など、そのワンちゃんと飼い主様がここに来て不安にならないような形の声掛けをしていきたいと考えております。

無理のない範囲ですが、安全が確保できれば10名から20名ほどの学生さんや先生がボランティアで駆けつける想定です。具体的には、避難してくる飼い主とペットの受付や誘導、ケージの設置、そして避難生活でトラブルになりやすい 糞尿の処理などの衛生管理。さらに、慣れない環境でストレスを感じている動物の様子を見ながらケアを行ったり、不安を抱える飼い主の話を聞くなど、専門的な視点から現場を支えます。

一方で先生は、いくら頼もしい体制があっても、普段から自由に過ごしているペットをいきなり狭い空間に入れるのは負担が大きいと指摘します。日頃から寝るときはケージに入れるなどの「クレートトレーニング」を行い、空間に慣れさせておくことが、飼い主ができる一番の備えだと話していました。

ペットと避難できるのか 墨田区”同伴避難"の挑戦

そしてこの取り組み、すでに練馬区や港区、埼玉県の所沢市など、ペット避難を課題に抱える他の自治体からも問い合わせが相次いでいるそうです。

全国のペット防災が変わる、大きな第一歩になりそうです。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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