TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。

2月2日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、業界初、世界初、「スーツに見える作業着」を開発・販売している株式会社オアシススタイルウェアの代表・中村有沙さんをお迎えしました。

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中村さんも久米さんもスーツでシックに決めているように見えますが、これが新しいスタイルの作業着「ワークウェアスーツ」なんです。

スーツのような作業着がすごい!

今までにない作業着を開発した中村さんはアパレル業界出身ではありません。小柄で華奢なお見かけからはちょっと想像しにくいのですが、元々は水道工事の会社の人。そして東京大学経済学部卒業! 学生時代は公認会計士を目指し、就職活動も初めは大手企業を回っていましたが、本当に自分がやりたいのはみんなで一緒になって何かに取り組むような仕事だと気づいたそうです(その思いがスーツに見える作業着の開発にもつながっていきます)。それから業種は問わずいろいろなベンチャー企業を訪問し、その中で出会ったのが、マンションなどの水回りの検査や工事・メンテナンスを行う会社「オアシスソリューション」でした。

スーツのような作業着がすごい!

「面接で社長と非常に気が合って、この会社でやっていきたいと思いました。やっていることは水道工事という堅くて古い業界で、安定した事業をやっているにもかかわらず、社風はどんどん新しいことをやっていこうというまさにITベンチャーのようで、そのギャップが面白いと思って選びました。そして安定した事業をやっているなら私自身もどんどん成長していけるんじゃないかなと思いました」(中村さん)

入社した当時はコミュニケーションが大の苦手で「ロボットみたいな子が入ってきたけど大丈夫?」と言われていましたが、営業先のお客さんや会社の人たちに鍛えられ、入社3年目には営業成績トップに。そして、会社組織をどうすればさらにより良いものにできるかということに関心が大きくなった中村さんは、当時会社になかった人事部を立ち上げました。

「採用や研修、評価の制度、福利厚生などを集中してやっていく部署があったほうがいいんじゃないかなと思うようになっていました。手が多い会社なんですけど、若者の採用に非常に苦戦していたんです。フレッシュな人材を採りづらいというのが、会社でも業界でもいちばん大きな課題でしたね」(中村さん)

こうした中で、会社創立10周年の記念事業として水道工事の作業着をリニューアルするプロジェクトが発足したのです。

「きつい、危険、汚い」という業界のイメージを変えて若い人に目を向けてもらうのと同時に、現場に出ている社員たちのモチベーションを上げるような作業着。そんな理想を具体的なの形にするのは簡単ではありませんでした。

スーツのような作業着がすごい!

「それまではどういう恰好で作業していたんですか?」(久米さん)

「一般的な作業着です。ネイビーのつなぎの上下を着ていました。水道工事では体を動かしますから。その一方で、お客様のおうちに上がらせてもらうので清潔感であるとか見た目の良さという第一印象も非常に大切です」(中村さん)

「それを変えようと思っていろいろなアイデアを出したそうですね。新しい作業着って難しいもんね」(久米さん)

「スーツというアイデアに至るまでに半年以上かかりました。例えば、ストリートファッションに近くて若者ウケするものであるとか、ハーフパンツはどうかとか。いろいろなアイデアが出たんですけど、出ては消え、出ては消えで、かなり苦戦しました」(中村さん)

「スーツというアイデアはあなたが出したの?」(久米さん)

「そうです。『スーツで作業できたらいいんじゃない?』とぽろっと出したひと言から進んでいきました。社内には営業スタッフと技術の現場スタッフがいるんですけど、若手の現場スタッフが『営業さんは仕事終わりにスーツのまま遊びに行けていいよね』とか『デートも行けるし、いいね』と話す声を聞いたことがありまして、そういうアイデアが出てきました」(中村さん)

スーツのような作業着という方向性が定まると、次はそれを実現するための悪戦苦闘が続きました。水道工事という仕事柄、水に強く、収納ポケットがたくさんあることが求められるのですが、スーツのようにスマートなデザインにすると作業着としての機能が失われてしまうのです。

反対に、機能性を重視するとスーツに見えない。この相反する条件を両立できたのは、高機能素材にめぐり逢ったからでした。

スーツのような作業着がすごい!

「いちばん苦戦したのが生地選びでした。全国から100種類以上、いろいろな生地を取り寄せました。どんな機能があれば自分たちの作りたいものができるのか、試作しては現場の人たちに着てもらってというのを何度も繰り返しました」(中村さん)

「ズボンはすごいらしいですね、顔を拭いたタオルがそのまま収められるようなポケットが付いていたり。上着の胸にはジッパーが付いてますけど、これは携帯電話を入れたりするんですか?」(久米さん)

「現場の人って胸ポケットにデジカメを入れて写真を撮りながら作業をするというのが一般的なんです」(中村さん)

「下を向くと落としちゃったりするからジッパーが付いてるんだ。あとは 水道工事ですから撥水性ですよね。水をものすごく弾く生地じゃないといけない。撥水性は生地によってそんな違いますか?」(久米さん)

「まず撥水の機能を備えている素材も非常に少ないですし、かつストレッチ性とか形状記憶、軽さ、速乾性、様々な要素を兼ね備えた素材というのは非常に少ないですね。毎日汗をかいても、この作業着は自宅の洗濯機で丸洗いできます。そしてアイロン要らずでしわが取れて、ピシッとスーツに見えます」(中村さん)

「それはどのへんで作っていた生地でした?」(久米さん)

「それは東海地方の小さい会社と一緒にコラボして開発していった生地です」(中村さん)

「前にこの番組に、今までになかったようなすごくおしゃれな白衣を作っている会社の方がいらっしゃったんです(クラシコ株式会社・大和新さん。2017年2月18日放送)。

背広みたいな白衣なんですけど、とても手間のかかる白衣で縫製工場を確保するのが大変なんです。だから、この作業着も作るのは大変だろうと思いました。東海地方で作っている生地ですか」(久米さん)

「ストレッチ性のあるような素材に非常に強い会社です」(中村さん)

「これすごく伸びるもんね! 今、中村さんが着てらっしゃる黒いスーツは新品ですか?」(久米さん)

「これは何度も洗って何度も着ているものです。洗濯機で10回以上洗ってます」(中村さん)

「新品みたい」(堀井さん)

「アイロンはかけてないんですか?」(久米さん)

「かけてないです」(中村さん)

「すごいでしょう?」(久米さん)

「ねえ! しっかり形が整ってますね」(堀井さん)

「部屋干しで2時間ぐらいで乾きます」(中村さん)

注文が殺到するのも納得のスーツ型作業着です。2017年に完成した当初は「スーツで現場作業ができるわけがない」「これを着て作業するのは恥ずかしい」「元の作業着に戻してほしい」と社内で大不評でしたが、1~2ヵ月で不満の声はなくなったそうです。さらに、その作業着を見た様々な会社から問い合わせが殺到。社員用の作業着として開発したものでしたが急遽、商品化を決定し、新会社を設立。「ワークウェアスーツ」として2018年3月から販売を開始しました。

スーツのような作業着を導入する会社が続々と増えています。建設、建築、清掃、ゴミ回収会社、配送、運輸など、いわゆる作業着をイメージしやすい業界はもちろんのこと、介護、保育園、コンサートやイベントの会場を設営する会社、ウェディング会場のレストラン、ミュージアムなども導入しています。現場で仕事をしている人たちは「打合せや接客のときに作業着だとちょっと…」ということで、そのつどスーツに着替えることもあるそうです。そういう人たちからは「ワークウェアスーツなら1着で現場も接客も対応できる」と好評です。

さらに、デスクワーク中心の人からの注文も増えています。

「出張が多いサラリーマンの方にも非常に良いいのは、まず長時間座っていてもシワにならないこと。それと出張のときには夜に会食があったりして、鍋や焼き肉のにおいがジャケットに付いてしまうと思うんですけど、ワークウェアスーツならホテルに帰って水洗いできますので、すっきりと次の日に着ていただけます。ワーキングマザーの方も、保育園の送り迎えのときに赤ちゃんのよだれやミルクが付いてしまってもすぐに洗えるというのでお求めいただいています」(中村さん)

中村さんは「ワークウェアスーツにしてからオアシス社員の心構えや態度が変わってきた」と言います。お客さんからも「言葉遣いも身だしなみもしっかりしていて、清潔で満足した」という声が聞こえるようになり、企業イメージアップにもつながりました。すると社員たちのモチベーションも上がってきます。それこそが中村さんが目指していたことなのです。

「ワークウェアスーツのコンセプトは『制服が変わると、意識が変わる。意識が変わると、行動が変わる。』です。社員の意識を向上させたいという悩みを抱えている業界では、日常的に着る作業着がスーツスタイルになることで自然と仕事への取り組み方も変わって、それが業界のイメージアップにつながるんじゃないかなと思うんです。ワークウェアスーツを採用してからオアシスソリューションの水道工事事業の新卒の応募は3倍に増えました。

若手の採用だけではありません。例えば、マンションの管理員は定年退職後のシニア男性が多いんですけど、作業着よりも、現役時代に着なれたスーツのほうがモチベーションが上がるらしくて、スーツ型作業着を導入したら応募者数が増えたようです。作業着を変えたら有望な人材の採用につながったというようなムーブメントを作れたらいいなと思っています」(中村さん)

中村さんが作業着をカッコいいスーツ型に変えた根底には、「働く人のモチベーションをあげて、組織や業界の向上させたい」という考えがあるのです。

中村有沙さんのご感想
スーツのような作業着がすごい!

久米さんとお話しできるということでかなり緊張していたんですけど、すごく気さくにいろいろな話題を振ってくださったので楽しくお話しできました。弊社の商品や会社のことも非常によく調べていただいて、光栄です。作業着を実際に着ていただいて着心地なども話してくださって、ありがとうございました。

◆2月2日放送分より 番組名:「久米宏 ラジオなんですけど」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190202130000

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