TBSラジオ「ACTION」月~金曜日の15時30分から生放送。金曜パーソナリティは武田砂鉄さん。
8月2日(金)のゲストは詩集『恋人たちはせーので光る』を8月30日に出される詩人・最果タヒさん。武田砂鉄さんが、最果さんの詩人になるきっかけを聞いています。
武田:前にお話したとき、Twitterの「いいね!」ボタンが☆から♡になって。「いいね!」って別に本当に良いと思う気持ちの表明にはならないけど、♡って愛情を示す値だから、引っ掛かるという話をされてましたよね。
最果:そうですね、あと自分の書いた詩が「若者に共感されている」だとか、「皆の代弁者」とか言われると違和感があるんです。元々詩を書き始めたのが、中学校のクラスで友達に共感されるようにものを言わなきゃいけない感じの空気がすごく苦手で。
武田:最果さんはかなりブランキー・ジェット・シティというバンドから影響を受けたようで。
最果:すごく好きですね。中学の頃の共感とかがすごくしんどかったときに、ブランキーの歌詞を読んで、何を言いたいのかは分からなかったんですけど、でもかっこいいことは分かるみたいな。「考えるな、感じろ」の域だと思うんですが、そういうのを初めて体験して。
武田:ブランキーも最果さんの詩もそうだと思うのですが、一つひとつの言葉の意味は分かるけど、それが羅列することによって、言葉の躍動感が変わっていくというか。それを読んでいると、ざらつくこともあるけど違う体感として言葉が入ってくるというか。それって狙って出来るものでもなかなかないですよね。
最果:自分が誰かに分かってもらうまで言葉で説明しようとしたりするけど、意外と誰にも分からない部分にこそ自分が宿ってるのではないかと思っていて。
武田:今、あらゆる場面で「分かりやすくして下さい」みたいな要求が多かったりするから、それに物書きが「分かりやすくします」と応えると、最初はその人ならではの言葉があったのに、それを削って提出しちゃうこともありますよね。
最果:ありますね。私はあとで書いたメモをまとめるみたいな推敲をしようとすると、冷静で客観な自分で見ちゃうから丸くしちゃうんですよ。一番良く分からないものを、はじいちゃうんですよね。
武田:一日前の最果タヒが書いたものを見ると、「これ違うんじゃない?」と思うけど、実はそこが一番良かったりすると。
最果:「何でそれを書いたの?」と思う部分が一番良いので、一瞬で書かないといけないなと思いますね。
武田:色んな媒体で発表された詩を詩集にまとめるといった作業を繰り返す中で、久しぶりに見る詩もあるわけですよね。それはどう体感されるんですか?
最果:詩って1本ずつ完成させたものをまとめるので、「この詩集は何だ?」という観点があるんですね。詩集に詩を入れるのは、別の作品を作っているイメージになるんです。詩の並びによって見え方が違ってくるし、今度出す詩集にも15年前の詩を入れてるんです。
最果:詩への分からなさに対して素直にならないと詩集はまとめられないですね。「分からないけど、良い」って思わないと。15年前の詩なんて分かるわけないんですよ。当時何を考えていたかなんて。
武田:「分からなさ対して素直になる」って素敵な考え方ですよね。分からなさが出たとき、「どう理解してやろうか」と考えちゃうのが人間なので。その「分からなさ」を残すことで、最後パッケージ化したときに、一つの作品として立ち上がる。現在の最果タヒさんが説明出来てしまう詩だけだとむしろ作品にはならなくて、「これは分からないけど、この箇所が定住地っぽい」というのが分かったときに作品として成り立つんですね。面白い考え方ですよね。
この後、最果さんの顔を出さない理由や武田さんへの逆インタビュー!?へと続きました。
◆8月2日放送分より 番組名:「ACTION」
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