「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)「現場にアタック」で取材報告しました。9月には参議院の補選、そしてその先には総選挙が控えていますが、今、「政治に関心がない」と思われがちな若者たちが、「オンライン署名」という形で、声を上げ始めているようです。
何が起きているのか。まずは、オンライン署名サイト「Change.org Japan(チェンジ・ドット・オーグ・ジャパン)」を運営する加藤悠二さんに伺いました。

オンライン署名を立ち上げる若者が増えている

「2020年2月以降、前の年の倍以上、オンライン署名が立ち上がっている。その中には10代後半~20代前半の署名がすごく増えた。例えば、一度目の緊急事態宣言が出た頃には、兵庫県の高校生が、「県立高校の休校を延長してほしい」というオンライン署名を立ち上げた。更に大学生も沢山。「学費を減免してほしい」、「オンライン授業の整備をしてほしい」等。特にコロナ禍だと、経済的に打撃を受けたり、安心した学生生活を送れなくなったり、身近な変化が起きた。そうした中で、いま自分で動かないと自分の生活が守れない、と危機感を持った人が増えたんじゃないかなと、この1年実感しています。」(「Change.org Japan」 加藤悠二さん)「チェンジドットオーグ」は、アメリカで始まった署名サイト。政治や社会問題について「変えたい」と考えていることを、理由などと一緒に書き込むと、キャンペーンが立ち上がり、世界中に公開。共感した人は、名前やメールアドレスを入力し、「賛同する」をクリックすると1人分の署名となります。中でもコロナ禍で増えたのが、「若い世代」の呼びかけ。実際に、高校生や大学生が教育機関などにあてた署名が、去年だけで400件以上、立ち上がったそうです。
実際に行政を動かした事例も出てきています。例えば、都内在住のトランスジェンダーの高校生が、昨年、「区立中学校の制服を選択制にしてほしい」と、オンライン署名を立ち上げました。そして、集まった1万人以上の署名を、江戸川区長に提出。その結果、区内の2つの学校で、ネクタイかリボンか、ズボンかスカートか、選べるようになったそうです。

「英検の検定料引き下げ」を求める高校3年生

加藤さんは、コロナ禍で自分も「社会の一員」と実感したことが、若者の原動力になっているのでは、と仰っていましたが、今回、実際にオンライン署名を立ち上げた方に話を聞くことができました。高校3年生の上野 英恵(はなえ)さんのお話。「今回「英検の検定料の引き下げ」を求める署名キャンペーンを立ち上げた。2018年度と今年度を比較すると、級によっては、2倍以上、受験料が上がっている。高校に入ってから自分で受験料を払う子も多かったし、結構話題に上ってた。これを全国規模で見たときに、果たしてどれ位の学生がこの値上げに苦しんでいるのかなと考えるようになったのがきっかけ。ただ、これをどう解決できるのかわからなかったんですけど、ふとした時に、チェンジドットオーグのサイトを見て、ここでならアクション起こせるかもしれない、むしろ学生だからこそ率直な意見を伝えらえるかなと思って、色々動き出しました。」(高校3年生 上野 英恵さん)▼高校3年生の上野さん。署名を立ち上げたくてもノウハウがない…。そこで、上野さんは、チェンジドットオーグが主催した、若者向けの夏のオンライン合宿に参加し、戦略の立て方や仲間の見つけ方を学びました。
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日本英語検定協会が実施する「英検(実用英語技能検定)」は、実は毎年、検定料がじわじわ上がっていて、今年の2月にも、さらなる検引き上げが発表されました。上野さんはよく、「また高くなったね」と、クラスメイトと話していたそうですが、例えば、受ける人が最も多い3級は、この3年間で3800円から7900円へと2倍以上の値上げ。高校や大学受験でスコアの提出が求められることもあり、英検は学生のチャンスを広げる検定でもあります。そこで上野さんは、この問題をそのままにしたくないということで、先月、「教育格差を広げる #英検の値上げに抗議します」というタイトルで、オンライン署名を立ち上げました。▼上野さんが立ち上げた、Change.org「教育格差を広げる #英検の値上げに抗議します」の署名サイト
「社会を変えたい」声をあげる若者たち
現時点で868人の署名が集まっていて、年内に5000人を目標に、日本英語検定協会に提出する計画だということです。

「どうせ聴いてくれない」政治の外に置かれていた若者

「おかしい」、「変だな」と思うことに声をあげるのは、すごいことだなと思いますが、それならば、若者の投票率が低いのはなぜなのか。2019年の参議院選挙では、10代、20代の投票率は約3割。若者は政治や社会問題に関心がないのではないか。チェンジドットオーグの加藤さんに聞いてみました。「でもこれって若者世代に問題があるのではなく、若者世代が声を上げることを応援してこなかった、若者世代の声をきちんと聞いて反映させようとしてこなかった、これまでの日本社会のあり方の方に問題があるのでは。これからの社会を担っていく大切な世代にも関わらず、少子高齢化の影響で人口が少なく、代表性を獲得することも難しい。一方で、今の若者たちは、所謂「デジタルネイティブ」の世代。
自分と同じ問題意識を持つ同世代の仲間と出会うことが、インターネット上でできる。こうした若者世代の成功事例の蓄積が、若者世代全体に波及して、自分の声を上げよう、上げていいんだと、他の人を巻き込む力になってるんじゃないか。」(高校3年生 上野 英恵さん)大人の側が、若者の声に耳を傾けてこなかったと…。実はいま、署名活動だけでなく、若い世代の「寄付」の意識が高まっているというデータもあって、昨年の10万円の給付金を、「少額でも一部を寄付したい」と答えた20代が4割近くいて、これは、他の年代と比較して、最も多い結果だったと、あるアンケートで明らかになっています。
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