TBSラジオ『プレイステーション presents ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ』

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■年二回は必ず小島監督に会って、その天才ぶりに触れるようにしている

「マイゲーム・マイライフ」のゲストに小説家の万城目学さんがやってきました。万城目さん、言葉を扱う職業なだけあって、端々での言葉選びが大変面白い回でした。


万城目さんはひとつのゲームにハマって掘り下げていくというよりも、雑多に手を出していくスタイル。それについて、独自の呼び方があるようです。
万城目学が語る『デス・ストランディング』出演時の裏話と、小島秀夫監督の天才性

宇多丸「ゲームは一本をずっとやり込まれるというよりは、わりとポンポン買っていく派ですか?」

万城目「ひとつのゲームを何年やる方もいると思うのですが、僕それを“農耕民族型”と(呼んでいて)」

宇多丸「定着してね」

万城目「定着してずっと掘って掘って。それに対して僕は、完全に次から次へと新しい獲物を追って領土を変えていく、“騎馬民族型”で」

宇多丸「ものは言いようですね(笑)」

万城目「やり終えると、またセットしてもう一度プレイするというのは少ないかも」

といいつつも万城目さん、「A列車で行こう」シリーズにはだだはまり。「万城目はA列車で街を作っている奴だ」と周囲に言われ、大阪から遊びに来た友達に対し、京都を案内するのではなく、「俺の街を車窓モードで見ろ」とひたすらA列車で作った街を見せていたのだそう。

ちなみに万城目さんは小島秀夫監督の「デス・ストランディング」にも出演されています。そのときの裏話も語ってくださいました。

万城目学が語る『デス・ストランディング』出演時の裏話と、小島秀夫監督の天才性

万城目「そもそもが、メタルギアが出たあたりから小島さんとときどき会っていて。最初は対談でお話したんですけれども。そのときに、この人ちょっとすごいな、と思いまして。自分の中で一年に二回小島さんに会って、話を聞き、その天才ぶりに触れるというのを自分のタスクにしていて」

宇多丸「小島さんのどこがこう……、もちろんゲームの世界的なクリエイターですけど、お話していてどういうところがこう(天才だ、と思われますか?)?」

万城目「あのですね、大きな絵を描く……明確に大きな絵を描ける人で、それを言葉で表現するんですよ。会っているときに、べらべら話してくれるんですけど、何を言っているのか全然わからないんですよ(笑)」

宇多丸「『デス・ストランディング』がこういうゲームになるであろう、みたいな?」

万城目「あ、そうそうそう。

そうです、そうです。前にいた会社を辞めるか辞めないかくらいのときに、居酒屋さんで、辞めた後にこういうゲームをやろうと思っている、みたいな、たぶんデスストのひな型を(教えてくれたんですけど)……何言っているか本当にわからなくて。あの、参ってるのかな、会社辞めるのつらくて参ってるのかな、くらいの(笑)。『アマゾンの配達人が繋げていくんですわー!』という感じのことを言ってて。(その時点では)ゲームになるとは思えないんですよ、それが」

宇多丸「『面白いんですか、それは?』という」

万城目「そうそう。そんなこと“世界の小島”に言えないから、『ほう~~~』って(頷いて)。(中略)で、コジプロ(小島プロダクション)が新たに発足しまして、スタジオができて、ちょこちょこ見学に行ったら、少しずつ出来上がっていくんですよ。まず荷物持ったらどうなるか、とかをみんなでやっていて。そのときに、写真撮っていく感じになりまして」

宇多丸「キャプチャーを」

万城目「別室で、カメラを一本の棒に5、6台つけたやつを、360度色々な角度からパシャパシャって撮って」

宇多丸「そんな感じでキャプチャーが済んじゃうんですね」

万城目学が語る『デス・ストランディング』出演時の裏話と、小島秀夫監督の天才性

万城目「怒ったり、笑ったり、眉を上げるとか、そういうのを組み合わせて作るんでしょうけど、それを一個一個やってください、とノーマン(サム)の喜怒哀楽の表情を例として見せられて」

宇多丸「この表情の感じ、とか」

万城目「そのときに初めてわかったんですけど、小説家ってまったく顔の表情を使わずに生きてるなって。ノーマンが動かしている顔の筋肉が、どうやっても動かないんですよね」

宇多丸「『この顔をやってください』って言われるけど、『どうやるんですか!?』って」

万城目「おそらくね、中国雑技団くらいの体の柔らかさが、俳優さんの顔にあるんですよ」

万城目学が語る『デス・ストランディング』出演時の裏話と、小島秀夫監督の天才性

宇多丸「ああ~、そうかもしれないですね、確かに。要は、こう見えるように、そういう感情を示すような顔を」

万城目「細かい筋肉の動きを何十年も訓練していて、それを一番できるハリウッド俳優の例を見せられて、こういう感じで眉とか頬を動かしてくれって言われて」

宇多丸「『足こっちに持ってきてください』、『できるかぁ!』みたいな」

万城目「そう、本当そういうことだと思うんですよ。やるんだけど、できないんですね。

でも、なんとかやって」

なるほど、確かに写真を撮られる際、笑っているつもりが仕上がった写真を見ると全然笑っていない、ということはよくあります。自分としては満面の笑みを作ったはずなのに……。顔の筋肉は自分が思っているほどうまく動かないものなんですよね。

なお、万城目さんが演じたキャラクターはプレイヤーからの評判がすこぶる悪く、検索するとキャラクターに対する怒りの声が続々と出てくるのだとか。後日、コジプロのプログラマーから謝罪されたそうですが、「(僕もそれ)わかるんですよ。本当嫌な奴で」と万城目さん本人も思ったというオチつきです。

万城目学が語る『デス・ストランディング』出演時の裏話と、小島秀夫監督の天才性

■今回のピックアップ・フレーズ

万城目「高三のときに(ゲームを)一年隠されて、つらかったですね……」

宇多丸「ああ、一年やれなかった。それはきついわ」

万城目「一年やれず、受験が終わって、最初にやったことが、なんか途中だったドラクエ4を引っ張ってきてレベル99にしたのが……渇きを癒すために(笑)」

宇多丸「もう、ゲームとして面白いかとかより、“ゲームをやっている俺”」

万城目「時を取り戻すかのように」

文/朝井麻由美(ライター、コラムニスト)

◆2月27日放送分より 番組名:「ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200227213000

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