TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で中村友美ディレクターが取材報告しました。

きょう11月9日は「119番の日」。

消防への正しい理解と認識を深め、防災意識を高めることを目的とした記念日です。それにちなんで今回取り上げるのは、119番通報があった際、迅速に現場の状況を把握すべく、スマートフォンの映像を活用する「Live119」というシステムについて。

アプリは不要。URLにアクセスするだけ

「Live119」とはどんなシステムなのか。開発した株式会社ドーン・取締役営業部長の品川真尚さんのお話です。

「ロ119番をかけると、その電話番号に対してURLが入ったSMSを送ります。通報者はそのURLをタップするだけでスマホのカメラが起動して、現場映像を送ることができる。消防側、いわゆる緊急通報受理機関は今まで口頭で説明されていたこと以外に、映像が入ってくるので、的確な現場判断できると。アプリが不要という所がミソなんですね。119番通報ってそもそも一生に一度するかしないかの通報で、アプリを落としてくださいってなかなか難しい。URLを送るぐらいの手軽さでないとシステムとしては機能しないであろうという狙いがあって、それを国内で初めて僕らが実装して、思った以上の反響だった。」
(株式会社ドーン・取締役営業部長の品川真尚さん)

119番通報の現場をスマホ映像で送信「Live119」の画像はこちら >>

一生に一度するかしないかという119番通報。その通報者が火事の状況やけが人、 病人の呼吸の状態などを口頭で正確に説明するのは難しいことです。

そこで119番通報をした人のスマートフォンにショートメッセージでURLを送り、それを開いて現場のリアルタイムの映像を映してもらいます。すると消防職員は到着する前から現場の正確な状況を把握することができ、効果的に救助活動を行えます。

このLive119は現在、東京、大阪など大都市圏も含め全国25の消防本部で稼働しています。

救命措置のお手本動画を通報者に送信可能

実はLive119は通報者から現場の映像を受信するだけではなく、消防側から通報者に映像を送ることもできるんです。実際にこんな例があったと、東京消防庁・藤野祐三さんのお話です。

「1歳の女児が入浴中に溺れて意識を失ったという通報で、状況を確認するためLive119へ接続しました。総合指令室員が映像を見て、普段通りの呼吸がないことを確認して、心肺蘇生法の動画を送信しました。ご家族は動画に従って応急手当をしたことにより、救急隊が到着時には、自発的な呼吸ができる状態まで回復していました。応急手当のアドバイスを電話だけで伝えただけでは効果がわからなかったのですが、Live119の映像を見ることで、より効果が上がるよう、アドバイスをすることができました。」
(東京消防庁・藤野祐三さん)

人工呼吸をしてください、心臓マッサージをこうやってくださいなど、電話で説明するのはなかなか難しいです。そこで、消防側が通報者に救命措置の手順を動画で送り、それを見ながら実践することで、口頭での説明よりもはるかに理解しやすくなります。救急車が来るまでの間に、救命措置が適切に行われれば、救命率を上げることにつながります。

映像取得率を上げるためのポイントは…

東京消防庁では去年からLive119を導入していますが、全国に先駆けて2年前に導入したのが神戸市消防局。この2年間で映像の提供依頼を140件行い、このうち映像取得に成功したのは94件、成功率はおよそ7割です。

失敗の原因の大部分はスマホの操作に慣れていない人からの通報だったことが考えられ、そういう方にどう説明するかが今後の課題だということですが・・・

さらに成功率を挙げるためのポイントについて神戸市消防局司令課・江並拓哉さんはこう話しています。

「特に火災等で自分の家が燃えているという通報当事者からの通報ではやはりパニックになって焦っていることがあります。まず第一報の通報者にあっては、避難誘導や初期消火で忙しいことも多々ありますし、パニックになっている状態でスマートフォンの操作をしてもらうというのはなかなか難しいと思われますので、第2報、第3報で通報があった人に操作をしてもらって映像を送ってもらうという方が有効であると考えております」
(神戸市消防局司令課・江並拓哉さん)

神戸市消防局ではこれまでの蓄積から、必ずしも第一通報者にLive119のURLを送るのではなく、状況に応じて第2報、第3報の通報者に送るということをマニュアル化しているそうです。

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