TBSラジオで平日15時30分から放送中の「ACTION」。
7月15日(水)のゲストは、92年生まれの香港出身の研究者・銭俊華(チン・チュンワ)さん。
R-指定:この本にも書かれていますが、香港って日本人が思っている以上に日本のアニメが放送されているんですね。
銭:70年代から今に至るまでで、1つの放送局だけで600本以上のアニメを放送していますね。でも子供たちは日本のアニメを「日本の作品」という認識はあまりしていないですね。
R-指定:僕らも小さいころは『トムとジェリー』を見ても「アメリカのアニメだ!」って思ってなかったので、それと近いんでしょうね。あと、「2021年、実物大フリーダムガンダム立像を上海に設置することが発表された」というニュースがありますが、それは香港の皆さんはどう思っていますか?
銭:そこまでそのニュースは知られていないと思いますね。ただ日本アニメの受容性は面白いですよ。中国の上海にフリーダムガンダムの像が建てられることについて、「本当に大丈夫ですか?」と思う人もいますよ。「フリーダム=自由ですよ?反体制の象徴ですよ?」みたいな。もちろん冗談で言うんですけど、「本当に大丈夫ですか?」と(笑)
R-指定:アニメに込められたメッセージも含めて、「本当に置いちゃって大丈夫なの?」という人もいるわけですね。

銭:日本のアニメが人気なのは、子供たちにとっては顔や身体が同じ東アジア人だから似ています。
R-指定:日本のアニメが人気の理由のもう一つに、作品のイデオロギーと現実がつながる部分があるんですか?
銭:そうですね。たとえば『デジモンアドベンチャー』とかそうですが、正義と勇気みたいなものは今の香港の現実とつながっているんじゃないかなと思いますね。
R-指定:現実の社会問題とアニメの中の主人公たちが抱くような感情や主張とかが重なってくる部分があるんでしょうね。

R-指定:香港は、僕らは「昔はイギリスの植民地で、そのあとは中国に変換された場所」というざっくりとした認識だと思うんですが、香港で生まれて育った人にとって香港はどういう存在ですか?
銭:独立した国家ではないですが、「香港(国)」のような感覚が無意識的に共有されているのではないかなと思いますね。みんなは「国」とは言わずに、「故郷」とか「都市」みたいな言い方をしていますね。でもオリンピックやワールドカップで香港vs中国の場面になったら香港チームを応援すると思いますよ。
幸坂:この前記事で、「香港人は自分のことを中国人ではない、という若者が多い」というのを読みました。
銭:それはそう言わなきゃいけない状況になったということかもしれません。
R-指定:そういった状況になったのはなぜですか?

銭:そもそもの香港人のアイデンティティの形成というのは、もちろん気持ちの面もありますが、客観的な環境によってできた部分もあります。たとえば、70年代の義務教育や身分証明書の義務化、公営住宅の整備、地下鉄などのインフラ、あともっと重要なのは独立した行政・立法・司法制度、教育・社会・文化の独自の制度があって、国際社会からも認められているので、もちろん国じゃないんですけど、そういった国のようなものとして無意識的に共有されている感覚があって、その香港のアイデンティティは簡単には消えないのかなと思いますね。
引き続き、香港の現状を取り巻く事象について伺いました。
◆7月15日放送分より 番組名:「ACTION」
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