TBSラジオ『蓮見孝之 まとめて!土曜日』毎週土曜日内で8時20分頃から放送している「人権TODAY」。(2月19日(土)放送分)

今回のテーマは「アルコール依存症当事者の『断酒会』。

コロナ禍の苦労と工夫」

アルコール依存症の当事者が集まり、飲酒の体験談を語り、また傾聴し、お酒をやめ続けることを目的とした集まり「断酒会」。今回は全国に先駆けておよそ70年前から活動しているNPO法人 東京断酒新生会を取材しました。こちらの団体は、都内に25の地域別断酒会があり、それぞれが毎月例会を開いていますが、新型コロナ感染拡大の影響で活動の縮小を余儀なくされています。

「まん延防止や緊急事態宣言で、我々断酒会は各地区の公共で経営している会議室を借りてますんで、半分以上の例会場が借りられなかったり、時短で昼間だけになったりしたんで、例会ができないという状態が少なくとも何ヶ月かはありました。例えば公園で電話して集まったりという会もありましたし、例会なしにしてた会もありますけど、我々は例会に出るのが習慣だったんでかなり苦しい思いをした人が多いと思います。」(NPO法人 東京断酒新生会事務局長 兼 目黒断酒会会長・保坂昇さん)

▼NPO法人 東京断酒新生会 ホームページより

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特におととし4月からの緊急事態宣言中は多くの会場が使えず、断酒会も休まざるを得なかったといいます。そんな中、保坂さんが代表を務める目黒断酒会では公園や民間のレンタルスペースなどを活用しながらなんとか会の継続を図ってきました。自身もアルコール依存症当事者である保坂さんは「断酒会は参加し続けることに意義がある。断酒会がなくなることでお酒をまた飲み始めてしまい入退院を繰り返すとなると命に関わる話だ」と仰っていました。

断酒継続のため「1年400回」の例会参加

断酒継続のため、中には毎日のようにいろんな断酒会に横断参加している方もいます。そんな当事者のお一人に、目黒断酒会の会場でお話を伺いました。

「自分は荒川の断酒会に所属してまして、ほぼ毎日どこかしらの会が開いてるんですよ。(手帳をめぐりながら)これ先月のスケジュールで、ほぼ毎日いろんなとこ行って参加してます。2年前に2ヶ月間ぐらい会が中止に、壊滅になった時ありまして、やっぱり何もしないでぼけっとしてる時間が長くなると不安でしょうがないというのが多々ありましたので、会が再開されたとなったときにやっぱり喜びましたね。

1年365日あるんですけれども、1年で400回回るというのを目標にしてます。」(断酒会参加者)

▼目黒断酒会 日程表

アルコール依存症当事者の『断酒会』。コロナ禍の苦労と工夫

この方は断酒会の予定がぎっしり書かれた手帳を見せてくれて、昼と夜で別の断酒会に参加する日もあるということです。なぜ1年400回かというと、25年間続けるとキリの良い1万回。それを目標にしているそうです。そう意気込む中で、新型コロナの感染拡大によって会自体が中止となった時期はとても不安だったといいます。

コロナ禍で参加者減少。多くの体験談を聞きたいのに…

今は会場の使用制限も緩和されて通常開催に戻りつつありますが、依然感染者が多い状況で、断酒会への参加者は減っています。目黒断酒会は月2回開催でこれまでは延べ20人から30人が参加していましたが、取材日の参加者は6人。この現状について、目黒断酒会に参加して5年目の男性はこのように仰っています。

「できればたくさんの人数で集まれて、自分の話もできるし、新たに参加してくれた方とか、普段お会いできて会わない方なんかのお話を聞けるとね。新たにあぁこういう酒の飲み方してたんだな。すごいなこの人って感心したりして、また家帰ってからその話を思い出しながら、でも自分も似たり寄ったりだったかな、みたいな感じで反省点にもなるし、データの蓄積にも自分なりにはなるんで」(断酒会参加者)

多くの体験談の蓄積が、飲酒欲求を抑えるためのヒントとなり、さらに「一生懸命断酒を続けているのは自分だけじゃない」と思うと気持ちが楽になる面もあったといいます。目黒断酒会には、東京以外から参加していた人も多く、そういった方は最近来られておらず、早くコロナが収束して元気な顔を見せてほしいと仰ってました。

コロナ禍でオンラインミーティングを導入、しかし課題も

東京断酒新生会では新型コロナの感染拡大を機に外出しなくても例会に参加できるようZoomを活用したオンラインミーティングも始めました。ですが課題もあるということです。

「断酒会は平均年齢60超えてたりするので、今スマホの世の中ですけど、スマホのツール使いこなせないって人が結構いて。スマホとネットツールの勉強会をやろうと思ってて、私が一応講師の1人になって、ぜひ聞いてもらいたいなと思ってます。」(NPO法人 東京断酒新生会事務局長 兼 目黒断酒会会長・保坂昇さん)

スマートフォンやパソコンを使い慣れていない高齢の参加者向けに研修会を実施。コロナ禍でも断酒会への参加を継続できるよう取り組みを強化しています。東京断酒新生会の活動に興味がある方は、公式ホームページ(https://www.tokyo-danshu.or.jp/)に活動内容が詳しくかかれています。ぜひご覧になってみてください。

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